■ 『戦後と災後の間 溶融するメディアと社会』吉見俊哉/集英社新書を昨日から読んでいる。北海道新聞などに連載された社会時評をまとめて書籍化したもの。
読了していないが、社会で起きた様々な出来事を例えば政治的側面から捉えた評論と括っておく。現政権に対しても手厳しい。
『オリンピックと万博』暮沢剛巳でも取り上げていた東京オリンピックについて本書でも取り上げている。「愉しく、靭やかに、末永く」と題した論考でオリンピックのエンブレム問題について意志決定主体の不明確さを指摘し、**そもそも東京五輪を誰のため、何のために開催するのかという理念が見えないことである。**(115頁) **だからエンブレムにしても、本来表現すべきなのは、単なる「日本らしさ」ではなく、五輪で日本が世界に何を示そうとするのかという明解なメッセージである。(中略)かつて亀倉も、国立代々木競技場を設計した丹下健三も、単純で明快な強さを表現することで世界を圧倒した。**(116頁)と述べている。
著者の暮沢氏は21世紀の五輪に本当に必要なのは、1960年代とは異なる価値だとし、**成長への夢ではなく持続可能性への信頼である。大量生産と消費の社会からリサイクルの社会への転換を通じ、私たちが愉しく、靭やかに、末永く文化や生活を維持していくこと。そのためにスポーツが大きな役割を果たせることを東京五輪は示すべきなのである。**(116頁)と指摘しているが、素直に頷ける。
収録されている評論はすべて3頁のボリュームで隙間時間読書向き。
帯に載っている本書の目次
それ程関心のあるカテゴリーではないが、何でも読んでやろう!ということで買い求めた。