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■ 『箱男』(新潮文庫)を読み終えて、『壁』(新潮文庫)を自室の書棚から取り出した。これも安部公房の作品で1975年に読んでいる。その後この作品を読んだという記憶も記録もないから、45年ぶりに再び読む、ということになる。
用紙の周囲が変色している。このような状態の文庫本を手にするときの気持ちは・・・、温泉宿でちょうど好い湯加減の湯ぶねに身を沈め、「あ~」(*1)と思わず発してしまうような気持ちとでも喩えたらよいだろうか。
このように変色した用紙の細かな活字を読むときのこのような心地よさは、電子本では味わうことができない。本好きはやはり紙の本が好きなのだと思う。
*1 「う~」と「あ~」の中間くらいで濁点付きのような声、かな。