■ 今日は立冬。『みずうみ』川端康成/新潮文庫を読んで過ごす。七十近い老人の有田。有田は水木宮子という若い女のところに通ってくる。有田の家には家政婦という名目の美人がいる。名前は梅子。
作品の表層の奥にあるものは何か。川端康成がこの小説で描こうとしたものは何か。
川端康成はあっさりと種明かしをする。**老人が宮子にも梅子にも渇望しているのは母性だということは、第一に明らかだった。有田の生みの母は二つの時に離縁されて、まま母が来た。**
**七十近い老人はこの若い二人に手枕されて、首を抱いてもらって、乳を含むと、お母さんという気持ちになる。この世の恐怖を忘れさせてくれるものは、老人にとっても母のほかにはない。**
川端康成は数え年二歳のときに父を失い、三歳のとき母と死別した。数え年八歳のときに祖母が死に、以後十年、祖父との二人暮らしであった(*1)。
川端康成の作品では「母」を若くて美しい女性に求める男が描かれる。『千羽鶴』の菊治も女性に求めたのもやはり「母」のやすらぎ、救いではなかったか。『山の音』の信吾も息子の嫁に「母」を求めていたのかもしれない。『雪国』も『伊豆の踊子』もこのモチーフ。
川端康成が生涯求め続けたのは「母」と「美」だった・・・。
メモ)
*1 『日も月も』川端康成/角川文庫の解説による。
今夜(7日)の「龍馬伝」で描かれたのは龍馬の姉の乙女からお龍への「母」の委譲だった。
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