透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

軽井沢の山荘

2008-02-18 | A あれこれ






■ 先日菊竹さんの「スカイハウス」について書きました。今回は吉村順三さんの「軽井沢の山荘」です。スカイハウスもこの軽井沢の山荘も偶然にも1辺が4間の正方形のプランです。空中に浮かべているところも同じです。

鳥の巣のような家をつくりたかったのだという指摘をどこかで読んだような気がします。確かに『小さな森の家 軽井沢山荘物語』建築資料研究社のまえがきに吉村さんは**この樹の上で、鳥になったような暮らしのできる家をつくろうと思いついた。**と書いています。

吉村さんは大学のような規模の大きな建築も設計していますが、やはり住宅作家、住宅の設計では右に出る人はいないといってもいいでしょう。今現在住宅作家として活躍している人達にも明らかに吉村さんの影響を受けていると思われる作品が少なくありません。

藤森さんは「建築は素材だ」とどこかに書いていましたが、吉村さんなら「建築はプロポーションだよ」、間違いなくそう書いたでしょう。天井や壁に安価なラワン合板を使っても絶妙の寸法比によって心地良い空間を創出してしまう・・・。

この山荘の外壁に吉村さんは杉板を張っていますが、防湿のために亜鉛鉄板を捨て張りしたり、床下の断熱のために浅間砂利を敷き詰めたりと基本的な性能向上のためにいろいろな試みもしています。今回『小さな森の家 軽井沢山荘物語』を読み返して気がつきましたが、浅間砂利は遮音のためにトイレと隣室の間仕切り壁にも詰められています。

そもそも空間を空中に浮かべたのも鳥の巣をただ単につくることだけでなく防湿のため、防犯のためという実利的な意図があってのことなのですね。

軽井沢の山荘はスカイハウスと共にベスト3に入る名作、私はそのように評価しています。

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