透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

帯の柄

2014-02-09 | A あれこれ

  **いまでも、はっきり、覚えている。後姿の、帯の模様がいつもと逆になっていた。左に余分を残して、右寄りりに柄が来るように締める奥様の帯の、独鈷の筋が左寄りになっていたのだ。そんなことはないと、人は言うだろうか。いつも着なれている帯を結ぶのに、左右や天地が逆になるようなことはないと、思うだろうか。それを人は、若かったわたしの、妄想だと言うだろうか。**(192頁)

『小さいおうち』中島京子/文春文庫のこのくだり、先月はなんとなく読んでいた、具体的にイメージもしないで・・・。  

   

この状況を紙でつくってみた。左ののように結んでいた帯だがその日、外出して帰って来た時には右ののようになっていたというのだ。これでタキさんは奥様の不倫に気が付くというわけ。でも、こんなことって本当にあり得るのだろうか・・・。





このようなことが起きるためには、 から巻き始めている帯をその時は■から巻き始めたということになるのでは・・・。普段とは逆、つまり手先ではなく垂から巻き始めてしまったと。

もうひとつの可能性は帯の裏表同じということだが、そういう帯ってあるのかな? それに帯には折り目がついてしまうから、どういうのか、折り紙でいえば、谷折りになってしているところを山折りすることになるはずだけど・・・。だから気がつくと思うけどな。

こういうことってあり得ないんじゃないかな・・・。それとも慌てふためいて、結び方がおかしくなって偶々できたのかな・・・。

いや、タキさんの妄想か? でも**それから二度、奥様は板倉さんのアパートに出かけた。二度とも洋装で、(後略) **(193頁) とあるからな・・・。この部分を映画ではどのように表現しているのだろう。観て確かめなくては。もし、からのようになっていたら、できるということなんだな~ぁ。

(このイラストはさが美のホームページより転載させていただきました。)


 


梅にうぐいす

2014-02-08 | F 建築に棲む生き物たち




棲息地:朝日村のそば店「ふじもり」の障子の額 撮影日140208

 この国から消えていくものは様々ありますが、住宅の和室もそのひとつでしょう。まだ絶滅危惧空間ではないかもしれませんが・・・。従って和室を構成する要素の床の間、たたみ、襖、障子なども消えつつあるということなのでしょう。こんな状況ですから、普段この写真のような額付障子を目にする機会はあまりないでしょうね。このような額付障子は戦後あまり使わなくなった、という事情もありますから尚更でしょう。

朝日村にあるそば屋さん『ふじもり』まで出かけてきました。店内にこの障子がありました。『ふじもり』は古民家を改修した店ですから、このような障子をわざわざ使ったのでしょう。梅にうぐいすという春の図がすりガラスに描かれています。

寒さ厳しい日々、春が待ち遠しいです。梅が咲き、うぐいすが啼く春が早く来ますように・・・。


  


スクラップ

2014-02-08 | D 新聞を読んで

    

 建築史家の鈴木博之さんの逝去を7日の朝刊で知った。手元に1972年7月28日の毎日新聞に掲載された鈴木さんの論文のスクラップがある。「都市の未来と都市の中の「過去」」と題するこの論文に興味を覚え、スクラップしておいた。40年以上も前のことだから、そのときのことははっきとは覚えていない。あの頃は興味を引く記事をスクラップしていた。都市や建築、生物に関する記事が多い。

**歴史的地区だからといって、建物全体を保存することは、むずかしい。建物の内部には、都市活動の営みがあり、建物は営みに制約を与えるからである。都市の営みに対応しながら歴史的な面影を消滅させない方法を考えなければならない。**とこの論文中にある。そしてその方法論について論じている。

*****

7日の信濃毎日新聞の記事には鈴木さんの略歴に加え**JR東京駅の赤れんが駅舎復元や愛媛県八幡浜市の日土小学校の修復保存など、各地の近代建築の保存活動で大きな役割を果たした。**と業績が紹介されている。



私は鈴木さんの著書の熱心な読者ではない。が、例えば「日本の近代」全16巻の『都市へ』中央公論新社(発行1999年)などは再読し、日本の都市の近代化に関する知識としたい。


謹んで哀悼の意を表します。


Less is more

2014-02-05 | A あれこれ



■ 『地球家族 世界30か国のふつうの暮らし』 という本があります。初版発行が1994年のTOTO出版の本です。「申し訳ありませんが、家の中の物を全部、家の前に出して写真を撮らせて下さい。」と世界30か国でお願いして撮った写真を載せています。

本の表紙(上の写真)はアフリカのマリの家族と家の中の持ち物のほとんど全てを写したものですが、物が驚くほど少ないですね。日本も取材対象の国のひとつで、取材を受けたのは平均的なサラリーマン家庭でしょうか、写真を見ると家の前に物が溢れています。

多くの物に埋もれて暮らすというライフスタイル(?)が物の大量生産、大量消費をベースにした右肩上がりの経済成長を支えてきた、ということなんでしょうか。それともその逆、「大量生産、大量消費、そして大量廃棄」という経済システムがそのような暮らしを強いたということでしょうか・・・。

30か国の家族の持ち物の写真を見比べ、暮らしぶりのレポートを読むと、豊かな暮らしというのは家の中に物が溢れているということとはあまり関係ないのではないか、と思えてきます。

いつ捨てても惜しくないような大量の物ではなくて、本当にかけがえのないもの、そう、例えばおばあさんが嫁入り道具で持ってきた箪笥、おじいさんが使っていた旅行鞄を大切に使う。壊れたら修理して使うというようなライフスタイルの方がずっと豊かではないかな、と思います。

建築家のミースは建築デザインについて Less is more という言葉を残しました。これはライフスタイルにも当て嵌まる美学かも知れません。


 


どんな本が残るのだろう・・・

2014-02-03 | A 読書日記

■ 自宅にある数千冊の本を少しずつ減らしていこうと思い始めています。

今後5年で2,000冊くらいまでにすることができればいいなと。ただ、これからも読みたい本は買い求めるつもりですし、ブックオフに持ち込むつもりも今のところありませんから、どうなるか分かりませんが・・・。いや、別に「終活」などということを考え始めたわけではありません。まだそんな歳でもありませんし。でも、まあ、少しはあるかもしれません・・・。

2,000冊を減らして1,000冊、更に500冊にした時、一体どんな本が残るのか・・・。実行してみないと分かりません。もう一度いつか読みたいと思うような本が残りそうな気がしますが、どうなるのか・・・。

これはある意味自分探しです。200冊、いや100冊になったとき、そうか、こういう人だったのかと自分のことが分かるのかも・・・。まあ、こんな楽しみもあっていいでしょう。

その時までもしブログを書いていたら、その100冊をアップしてもいいかもって、今回はなんだか寂しい記事になりました。


 


ブックレビュー 1401

2014-02-02 | A ブックレビュー

 

 ここ何ヶ月読書時間が減って、いまや隙間時間でしか本を読まなくなってしまった。で、1月の読了本はこの3冊のみ。

『空海の風景 上』 司馬遼太郎/中公文庫 

昨年末に再読を始めた上巻を読み終えた。

上巻のカバー裏面の本書紹介文に**平安の巨人空海の思想と生涯、その時代風景を照射して、日本が生んだ最初の人類普遍の天才の実像に迫る。**とある。遣唐使船で目的地より遥か南方に流れ着き、そこから長安に上る経緯は空海が天才を思わせるに十分な活躍で感動的だった。

司馬遼太郎が**空海という、ほんの一年か二年前までは山野を放浪する私度僧にすぎなかった者が、幕を跳ねあげるようにして歴史的空間という舞台に出てくるのは、この瞬間からである。**(264頁)と書いている箇所があるくらいだ。

帰国後の最澄と空海との生きざまの違い(再読でふたりの生きざまの比較に随分紙幅を割いていることに気が付いた)にも空海の天才ぶりが表れている。

今年11月、高野山に出かけることになっている。それまでに『般若心経講義』も読んでおきたい。

『成長から成熟へ』 天野祐吉/集英社新書

NHKラジオの早朝番組で天野さんの「隠居大学」を聴いていた。昨年の秋に亡くなった天野さんが日本人に遺したメッセージ。書名がこの国のこれからのありようを示している。右肩上がりの経済成長を前提とする社会なんてもうあり得ない・・・。

『小さいおうち』 中島京子/文春文庫

隙間時間ではなく、休日まとまった時間を割いて一気読みした。描かれている日常から「昭和」を感じる作品。山田監督がこの作品をどのような映画にしたのか観てみたい。



 


457 朝日村の古い火の見櫓

2014-02-02 | A 火の見櫓っておもしろい

 
457 「大正14年ガソリンポンプ購入放水披露」

 朝日村の開村100年を記念する冊子を入手した。明治22年に開村した朝日村の100年間の歩みをまとめた20年以上も前の冊子だ。掲載されている何枚かの写真の中にこの写真があった。丸太を組んだ火の見櫓が写っている。大正14年というと今から89年前になる。当時の村の様子を記憶している人は年齢的にごく少数だろう。

火の見櫓はてっぺんまでは写ってはいないが、様子から高さは16、7メートル程度か。丸太梯子に支えの丸太柱を組んだ簡素なつくりだ。横架材で3本の丸太柱を繋いでいることが分かる。

この火の見櫓はいつ建てられ、いつ解体されたのだろう・・・。

写真には妻面を向けた蔵とその両側に杮(こけら)葺き石置き屋根が写っている。当時の村役場の屋根も同じ構法だったことが冊子の別の写真で分かる。

この火の見櫓は役場の近くに立っていたのかもしれない。蔵が今でも残っていれば場所が特定できるのだが・・・。


 


「空」とは

2014-02-01 | A 読書日記



 『般若心経講義』高神覚昇/角川ソフィア文庫 

本書の初版発行は昭和27年9月。長年読み継がれてきた本だ。この事実をもって名著としてもいかもしれない。「時」というフィルターは名著だけを残す(なんちゃって)。

**仏教の根本思想を一言でいえば「空」だといい、それはまた仏教の一種の謎だとする著者が、空を説いた『般若心経』を丹念に読み解いていく―。 (中略) 仏教思想ばかりでなく、日本人の精神文化へと、読者を誘ってくれる。味わい深い般若心経の入門として名高い書**  カバー裏面の紹介文より

じっくり読もう・・・。




類書も買い求めた。