映画「処刑の部屋」は昭和31年(1956年)の大映映画

石原慎太郎の原作を映画化した。「太陽の季節」で芥川賞をとってまもない時期に、川口浩と若尾文子共演で市川崑監督がメガホンをとった映画だ。原作は未読。評論家筋からの評判もよく、三島由紀夫も絶賛している。「太陽の季節」同様に遊び人学生にスポットを当てている。若大将シリーズは1960年代を映しだすのに対し、1950年代の大学生の実像が果たしてこの通りだったかどうかを別としても貴重な映像が盛りだくさんだ。内容には??となる部分は多い。価値観が違うのかもしれない。
タイトルバックには大学野球の熱烈な応援風景が映る。
一転東京の田園地帯にある工場が映される。1人の銀行員島田(宮口精二)が融資勧誘している。彼が銀行の支店に戻ると、息子島田克己(川口浩)と友人伊藤が待っていた。金持ちの息子である息子の友人が180万円の手形を出し、この手形を割ってほしいという。いきなりなので戸惑う島田はとっさにポケットマネーで3万円を出して渡す。これを元手にダンスパーティをしようとする魂胆だ。授業に久々にでると、他大学とのディベートの最中だ。そこにはK大学の女子学生青地顕子(若尾文子)もきていた。克己も参加しようとするが、教授の都合ですぐ終了してしまう。

その後元金を使ってダンスパーティを開催して、克己と仲間は大儲けしたが、ケンカ早い克己は他大学の学生竹島(川崎敬三)たちとケンカを始める。
大学野球では島田が通うU大学(優駿大学と書いてある)はリーグ優勝した。その夜新宿で大騒ぎをしている時に、以前ディベートで出会った女子学生顕子たちもいた。酒の勢いで小料理屋へいき一緒に飲み明かす。その時、克己は悪知恵が働き、睡眠薬の入ったビールを彼女たちに飲ませ、寝た隙に犯してしまおうと考える。作戦はまんまとはまり、女子学生は眠ってしまう。克己たちは仲間の高級アパートにタクシーで連れ込み、克己は犯してしまった。泣き崩れる2人は警察に言ってやるといいながら、怒りにむせぶ。タクシーに乗せて送る途中克己と仲間は逃げてしまう。

顕子から手紙が送られてきた。会いたいという顕子との待ち合わせ場所へ行くと、どうして私を選んだの?と話しかけてくる。自分に気があるなと克己は感じる。「好きって意味がわからない」と克己はその場を抜け出す。その後も顕子は近づいてきたが、そっけないそぶりをした。
克己たちは仲間と再度ダンスパーティを開く。他大学の学生も大勢来て大盛況だ。このパーティには前にケンカしたことのある竹島もきていた。主催仲間からはこの席ではケンカするなよと、ケンカ早い克己はくぎを刺されていが、竹島をみると外に引っ張り出す。克己は共同主催の仲間たちがなんかうっとうしく思えていた。そこでパーティの売上金を持ち運ぶ車を教え、売上金を竹島たちに強奪させ、分け前を3割もらうという提案をする。竹島たちは克己に言われたとおりに売上金を持ち運ぶ車を襲うのであるが。。。
「処刑の部屋」と言われる題名の主旨が出てくるのはこの後である。そのシーンには不可解なことも多く、今の学生たちから見ると到底想像もつかないようなことかもしれない。何でこんなことするの?と自分は思うだけである。
この映画ではロケ地映像で当時の世相を楽しみたい。
1.大学野球の観客席の光景
いきなり大歓声の大学野球の観客席が映し出される。誰がどうみても早慶戦だろう。凄まじい熱気である。自分のころでもそれなりに活気があったが、むしろ昔の方が観客の騒ぎ方が凄かったのかもしれない。フクちゃん、ミッキーマウスの両大学の看板はまだ出ていない。その実際の早慶戦を映した実写と観客席に俳優たちを集めて応援姿を映すものと両方ある。
2.新宿の祝勝会の風景
早慶戦のアフターは、昔から慶應は銀座、早稲田は新宿と決まっている。ここでは主人公はU大学となっているが、早稲田同様に新宿でアフター祝勝会をやっている。一部は早稲田側のリアル映像と思しきものも混じっている。新宿駅が昔の駅の風貌だ。その前を騒乱の学生が肩を組みながら大勢で大騒ぎしている映像だ。今の東口駅ビルは自分が小学生の時にできた。今もある「武蔵野館」という文字も目立つ。小料理屋の2階の映像がいかにも昭和40年代以前を連想させる。いい感じだ。
3.ダンスパーティ
人数が多すぎて入りきれないといったパーティである。お互いに踊っているが、なんかぎこちない。ジルバを踊っているが、この間隔じゃ踊れないでしょう。男性はそれなりに男前だが、女性がみんな不細工だ。現代と比較するとまったく男女正反対である。大学生の時、仲間と一緒にディスコでパーティを開いたことがある。それをきっかけに人脈を広げたいという気持ちが自分は強かったが、友人の一部は違った。金儲けというと一瞬引いたが、自分も金を手にするとなんか嬉しくなったものだ。
4.若尾文子の風貌
ふっくらとしている。女学生風洋装で出演して、ディベートでは理屈っぽい。当時23歳で女性として一番きれいなころだ。同じ昭和31年には溝口健二監督「赤線地帯」で娼婦役を演じている。でも、彼女に関しては美のピークを迎えるのが、数々の映画を見ている限りこの2,3年先のような気がする。

5.不可解な川口浩演じる主人公
いきなり他校とのディベートで観念的な言葉をしゃべりまくる。何が何だかわからない。当時自分でも何を言っているかわからないような変な学生が多かったのであろう。それなのに軟派である。しかも、何でこんなにケンカ早いの?硬軟入り乱れてまったく不可解。
6.薬を飲ませての強姦
強姦か?合意の上のエッチか?映画「さよなら渓谷」の主人公2人は大学生の集団強姦事件に絡んで、加害者と被害者だ。「処刑の部屋」の2人も同じで、「さよなら渓谷」の2人の営みを連想した。男って基本的に悪意じゃないけど、飲ませてエッチの発想を持っている奴は多い。いかにも合意のように持っていきたいのだ。最近では柔道金メダルの内柴による強姦裁判の判決があり、合意によるエッチを主張した内柴被告は実刑となった。相手に飲ませて犯すという悪さはより一層減るだろう。
7.当時の銀行
主人公の父親宮口精二が演じるのは、どこにでもいそうな実直な銀行員だ。息子たちにせびられ、自分のへそくりからお金を払う。預金通帳を事務員に与え、現金引き出している姿が滑稽だ。銀行の名前は架空の「共和銀行」となっている。今のりそな銀行の前身で都銀の「協和銀行」でロケさせてもらったのであろう。でも若干ドジなのは映像の中で本当の「協和銀行」の文字が映ってしまっている。今だったらCGで消せそうなものだが、そのまま映るところが笑える。

石原慎太郎の原作を映画化した。「太陽の季節」で芥川賞をとってまもない時期に、川口浩と若尾文子共演で市川崑監督がメガホンをとった映画だ。原作は未読。評論家筋からの評判もよく、三島由紀夫も絶賛している。「太陽の季節」同様に遊び人学生にスポットを当てている。若大将シリーズは1960年代を映しだすのに対し、1950年代の大学生の実像が果たしてこの通りだったかどうかを別としても貴重な映像が盛りだくさんだ。内容には??となる部分は多い。価値観が違うのかもしれない。
タイトルバックには大学野球の熱烈な応援風景が映る。
一転東京の田園地帯にある工場が映される。1人の銀行員島田(宮口精二)が融資勧誘している。彼が銀行の支店に戻ると、息子島田克己(川口浩)と友人伊藤が待っていた。金持ちの息子である息子の友人が180万円の手形を出し、この手形を割ってほしいという。いきなりなので戸惑う島田はとっさにポケットマネーで3万円を出して渡す。これを元手にダンスパーティをしようとする魂胆だ。授業に久々にでると、他大学とのディベートの最中だ。そこにはK大学の女子学生青地顕子(若尾文子)もきていた。克己も参加しようとするが、教授の都合ですぐ終了してしまう。

その後元金を使ってダンスパーティを開催して、克己と仲間は大儲けしたが、ケンカ早い克己は他大学の学生竹島(川崎敬三)たちとケンカを始める。
大学野球では島田が通うU大学(優駿大学と書いてある)はリーグ優勝した。その夜新宿で大騒ぎをしている時に、以前ディベートで出会った女子学生顕子たちもいた。酒の勢いで小料理屋へいき一緒に飲み明かす。その時、克己は悪知恵が働き、睡眠薬の入ったビールを彼女たちに飲ませ、寝た隙に犯してしまおうと考える。作戦はまんまとはまり、女子学生は眠ってしまう。克己たちは仲間の高級アパートにタクシーで連れ込み、克己は犯してしまった。泣き崩れる2人は警察に言ってやるといいながら、怒りにむせぶ。タクシーに乗せて送る途中克己と仲間は逃げてしまう。

顕子から手紙が送られてきた。会いたいという顕子との待ち合わせ場所へ行くと、どうして私を選んだの?と話しかけてくる。自分に気があるなと克己は感じる。「好きって意味がわからない」と克己はその場を抜け出す。その後も顕子は近づいてきたが、そっけないそぶりをした。
克己たちは仲間と再度ダンスパーティを開く。他大学の学生も大勢来て大盛況だ。このパーティには前にケンカしたことのある竹島もきていた。主催仲間からはこの席ではケンカするなよと、ケンカ早い克己はくぎを刺されていが、竹島をみると外に引っ張り出す。克己は共同主催の仲間たちがなんかうっとうしく思えていた。そこでパーティの売上金を持ち運ぶ車を教え、売上金を竹島たちに強奪させ、分け前を3割もらうという提案をする。竹島たちは克己に言われたとおりに売上金を持ち運ぶ車を襲うのであるが。。。
「処刑の部屋」と言われる題名の主旨が出てくるのはこの後である。そのシーンには不可解なことも多く、今の学生たちから見ると到底想像もつかないようなことかもしれない。何でこんなことするの?と自分は思うだけである。
この映画ではロケ地映像で当時の世相を楽しみたい。
1.大学野球の観客席の光景
いきなり大歓声の大学野球の観客席が映し出される。誰がどうみても早慶戦だろう。凄まじい熱気である。自分のころでもそれなりに活気があったが、むしろ昔の方が観客の騒ぎ方が凄かったのかもしれない。フクちゃん、ミッキーマウスの両大学の看板はまだ出ていない。その実際の早慶戦を映した実写と観客席に俳優たちを集めて応援姿を映すものと両方ある。
2.新宿の祝勝会の風景
早慶戦のアフターは、昔から慶應は銀座、早稲田は新宿と決まっている。ここでは主人公はU大学となっているが、早稲田同様に新宿でアフター祝勝会をやっている。一部は早稲田側のリアル映像と思しきものも混じっている。新宿駅が昔の駅の風貌だ。その前を騒乱の学生が肩を組みながら大勢で大騒ぎしている映像だ。今の東口駅ビルは自分が小学生の時にできた。今もある「武蔵野館」という文字も目立つ。小料理屋の2階の映像がいかにも昭和40年代以前を連想させる。いい感じだ。
3.ダンスパーティ
人数が多すぎて入りきれないといったパーティである。お互いに踊っているが、なんかぎこちない。ジルバを踊っているが、この間隔じゃ踊れないでしょう。男性はそれなりに男前だが、女性がみんな不細工だ。現代と比較するとまったく男女正反対である。大学生の時、仲間と一緒にディスコでパーティを開いたことがある。それをきっかけに人脈を広げたいという気持ちが自分は強かったが、友人の一部は違った。金儲けというと一瞬引いたが、自分も金を手にするとなんか嬉しくなったものだ。
4.若尾文子の風貌
ふっくらとしている。女学生風洋装で出演して、ディベートでは理屈っぽい。当時23歳で女性として一番きれいなころだ。同じ昭和31年には溝口健二監督「赤線地帯」で娼婦役を演じている。でも、彼女に関しては美のピークを迎えるのが、数々の映画を見ている限りこの2,3年先のような気がする。

5.不可解な川口浩演じる主人公
いきなり他校とのディベートで観念的な言葉をしゃべりまくる。何が何だかわからない。当時自分でも何を言っているかわからないような変な学生が多かったのであろう。それなのに軟派である。しかも、何でこんなにケンカ早いの?硬軟入り乱れてまったく不可解。
6.薬を飲ませての強姦
強姦か?合意の上のエッチか?映画「さよなら渓谷」の主人公2人は大学生の集団強姦事件に絡んで、加害者と被害者だ。「処刑の部屋」の2人も同じで、「さよなら渓谷」の2人の営みを連想した。男って基本的に悪意じゃないけど、飲ませてエッチの発想を持っている奴は多い。いかにも合意のように持っていきたいのだ。最近では柔道金メダルの内柴による強姦裁判の判決があり、合意によるエッチを主張した内柴被告は実刑となった。相手に飲ませて犯すという悪さはより一層減るだろう。
7.当時の銀行
主人公の父親宮口精二が演じるのは、どこにでもいそうな実直な銀行員だ。息子たちにせびられ、自分のへそくりからお金を払う。預金通帳を事務員に与え、現金引き出している姿が滑稽だ。銀行の名前は架空の「共和銀行」となっている。今のりそな銀行の前身で都銀の「協和銀行」でロケさせてもらったのであろう。でも若干ドジなのは映像の中で本当の「協和銀行」の文字が映ってしまっている。今だったらCGで消せそうなものだが、そのまま映るところが笑える。