映画とライフデザイン

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映画「續 大番 風雲編」加東大介&淡島千景

2022-01-27 18:58:18 | 映画(日本 昭和34年以前)
映画「續 大番 風雲編」を名画座で観てきました。


續大番 風雲編 は1958年(昭和33年)の大番シリーズの第2作目である。前回同様に名画座の「淡島千景特集」で観た。加東大介演じるギューちゃんこと赤羽丑之助が相場で失敗して故郷に帰った後に、再度高い志をもって東京兜町に戻り、証券市場で立ち回る話である。第1作と同じで、儲かるときもあれば、すってんてんで逃げ回るシーンと両方用意されている。簡潔にまとまっており、スピード感もあって2時間飽きさせない映画だ。

持ち金をすべて突っ込んだ鐘ヶ淵紡績新株が五一五事件の影響で暴落して、いったん故郷に帰ったギューちゃん(加東大介)が、故郷には悪い事情は何も伝わらず大歓迎をうける。母校の小学校にも銅像を寄付していて、実家は満鉄株で儲けたお金で建て増しをしていた。スッカラかんに近い状態で戻ったが、実家では建築費の残りの760円という多額のお金を郵便局に預けていた。それが元手で周囲の寄付要請を受けたり、芸者をあげて飲めや歌えよの大騒ぎだ。あこがれの可奈子お嬢様(原節子)の森家からも町の英雄と晩餐の招待を受けた。

半年ほどいると町の資産運用の指南役になっていた。すると東京にいる元仲間の新どん(仲代達矢)からそろそろ戻ってもいいのではと便りが来て再度兜町に帰還する。東京では情が通じたおまきさん(淡島千景)が待っていた。再び鞘をとる仕事(サイトリ)を始める。金を借りた証券界の人たちには少しづつ返していき、信用を取り戻していた。そのころのインフレ基調の市況には金鉱株を買った方がいいのではとお世話になった富士証券の木谷(河津清三郎)に相談すると意見の一致をみて、日本産業株を買い進む。結局利食いもうまくいき13 万儲ける。


儲けた金を資金に店を持った方が良いのではと、証券取引所で働いていた新どんへ一緒にやろうと誘う。おまきさんと仲直りするなら良いよと言われる。しかし、ギューちゃんを追いかけて、四国の故郷から芸者が来てしまい、おまきさんに愛想を尽かされていた。でも仲直りして、兜町に自分の店をもつのだ。

その後は、再度鐘ヶ淵紡績に目をつける。木谷さんも大量に購入しているので提灯をつけるのだ。気がつくと、ドンドン上昇していくのであるが。。。

⒈加東大介
ギューちゃん役って加東大介にとっては天性の適役ではないかと思う。ギューちゃんは田舎者の小僧あがりでカッコはつけない。周囲には腰が低く、好かれる。そして気前がいい。こんな無防備で大丈夫なのかと思ってしまうキャラクターである。加東大介は当時40才超えているのに10代から30 にかけての役を演じるのは図々しい気もする。でもギューちゃんは歳よりも上に見える設定だから、いいんじゃないかな。


加東大介の実姉の沢村貞子が田舎の母親役で出ているのがご愛嬌だ。沢村貞子は長生きしたが、加東大介は64で死んだ。酒を飲まない人に限ってそういう早死にするのが不思議だ。

⒉芸者遊びと宴会芸
もともと四谷の待合でおまきさんと知り合って情が通じている仲であるが、結婚はしない。四国の田舎に帰ったあと、気に入った若い芸者に水揚げしてあげるよと約束する。

結局芸者が上京してくるのであるが、ギューちゃんの下宿に知人の妹と偽って引き取る。でもおまきさんにすぐバレる。しかも、築地芸者もかわいがり、湯河原の旅館をもたせてあげるわけだ。まあ、昔の金持ちの方がやることは派手だ。それに今だったら、SNSにしろ文春砲も怖くてできないかも。

この時代、高級料亭で芸者を呼んでドンチャン騒ぎするのがいちばんカッコいい訳だ。当時会社物の映画では、芸者遊びが付き物だった。それは見ていて楽しい。
東宝の毎度おなじみ宴会部長の三木のり平が笑える芸を繰り広げる。ここでは故郷でギューちゃんに色ごとを教えた先輩役だ。三木のり平は脇にまわってアホやると天下一品だ。加東大介もお世話になった木谷さんと大勢の芸者の前で宴会芸を披露する。いいノリだ。


1968年(昭和43年)に祖父が雅叙園で金婚式をやった。酒が入って宴たけなわになると、宴会芸を披露する区議会議員や会社社長がいた。あのときの構図が目に浮かぶ。そのノリが続いたのも昭和50年代くらいまでなのかな?今や宴会はコロナで禁止。辛いねえ。

⒊原節子
一作目では特別出演となっていたが、ここでは違う。しかも、セリフもある。地元の素封家のお嬢様で今は伯爵夫人である可奈子(原節子)をギューちゃん(加東大介)が田舎の青海苔の土産をもって目黒のお屋敷に訪ねるシーンがある。可奈子の言葉使いはいかにもひと時代前の東京の上流階級のご婦人が話している言葉遣いだ。原節子の話し方はこの時代のいかなる女優よりも上品だ。

学生時代に友人の母上にも上品な話し方の人はいたが、社会人になって顧客の上流の奥様と接した時にTV漫画で見る「ざーますおばさん」って本当にいるんだと感じた。昭和の頃はまだその手の人は東京にいた。今や上流東京弁を話す女性はかなり少なくなった。この時期の原節子の言葉遣いが教科書になる。ある意味さみしい。当時37歳、この数年後に映画界を引退するにはもったいない。


⒋富士証券木谷社長の自殺
河津清三郎が演じる上部証券会社の社長木谷さんにはギューちゃんはたいへんお世話になっている。もともとギューちゃんの名前を見て、丑之助というのは株取引にはいい名前だと言った方だ。丑は英語で言うと「bull」で強気の買いというギューちゃんの信条に合っていて、木谷さんの鐘紡買いに提灯をつける。

でも、戦争中は突発的な何があってもおかしくない。上がりきった鐘紡株の買いのせで売り方の踏み上げを狙った攻めた両者に災難が訪れる。木谷社長は自殺した山一証券の元社長太田収をモデルにしている。山一証券というのは戦前も戦後も懲りないというところなのか?
コメント
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