映画とライフデザイン

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映画「アイミタガイ」 黒木華&草笛光子

2024-11-05 20:33:19 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「アイミタガイ」を映画館で観てきました。


映画「アイミタガイ」は三重県在住の作家中條けいの短編の原作を黒木華主演で映画化した作品だ。もともと「半落ち」佐々部清監督が企画したが2020年に亡くなり若手の草野翔吾がメガホンを持つ。脇役には草笛光子、風吹ジュンをはじめとして豪華配役陣が揃えている。アイミタガイ「相身互い」のことで「誰かを想ってしたことは、巡り巡って見知らぬ誰かをも救う。」ということだ。映画で言えば「ペイフォワード」的な要素を持つ。

三重県桑名、ウェディングプランナーの梓(黒木華)は親友でカメラマンの叶海(藤間爽子)と中学時代からの悩みを打ち明けあう仲だった。ところが、叶海が突如交通事故で亡くなり途方に暮れる。交際相手の澄人(中村蒼)との結婚に踏み出せず、亡くなった叶海のスマホにメッセージを送り続ける。叶海の両親の朋子(西田尚美)と優作(田口トモロヲ)は、遺品のスマホに溜まっていた梓のメッセージに気づく。


一方、梓はヘルパーである叔母(安藤光恵)が派遣された先の90を過ぎている老婦人こみち(草笛光子)が以前ピアノをしていたことを知り、金婚式での演奏を頼みに行く。中学時代、その家から流れるピアノの音色を叶海と二人で聴いていたのだ。

最後に向けての人のつながりの収束がお見事である。
最後に関係が1つに収束する「ラブアクチュアリー」のようなオムニバス映画のように、途中経過から最後に向けての転換が上手かった。まったく関係のない人同士が次々とつながるのは観ていて気分がいい。原作は短編集なので脚本の市井昌秀が巧みに映画脚本にまとめたと言える。とはいえ、途中までは女性目線のセリフが多い。好きな俳優だけど、亡くなった親友の母親役である西田尚美が嫌な女だなあと思っていた。地方都市を舞台にして末梢神経を刺激するようなむごい場面もなく平穏な心で観れる。

主人公の恋人、写真家だった友人、恋人が結婚指輪を購入しようと行く宝石屋、恋人が毎日通勤電車で出くわすおじさん、93歳のピアニスト、ヘルパーの主人公の叔母、児童福祉設備のある町のタクシー運転手、いずれもアイミタガイで繋がっていく。


⒈桑名と滋賀
三重でのロケ地MAPが作品情報にもupされている。力が入っている。いきなり上空から近鉄電車が川を渡るシーンを見てワクワクする。自分の母が若き日に三重で仕事をしていたことがあり、その同窓会もあって四日市から津のエリアに小学生の頃はよく行った。今より公害がひどく、四日市の工業地帯を通ると途端に気分悪くなった記憶がある。化学コンビナートの美しい夜景が映画でも出てくるが、あの気持ち悪い匂いが身体中を駆け巡る。でも三重の人はみんな良い人たちばかりだった。

桑名しぐれ蛤茶漬で有名だ。柿安という肉の料理屋があり、名古屋居住の大学の同級生一家に学生時代連れられて行った。その時食べた牛肉の網焼きのおいしさは人生で食べた食べ物のベスト3に入る。

梓(黒木華)が祖母(風吹ジュン)を訪ねて滋賀に向かうシーンがある。趣ある滋賀の日本家屋が連なる。近江八幡のようだ。祖母お手製のお寿司をおいしそうに食べる。地域開発の一方でこういった古い日本家屋を残すのも大事だと思う。


⒉黒木華の主題歌
桑名上空から三重を俯瞰する夜の映像とともに黒木華の歌声が流れる。これが良い感じだ。正直言って、今回の黒木華の演技に特筆すべきところはない。無難にウェディングプランナーの役をこなしたという感じだ。エンディングロールで荒木一郎「夜明けのマイウェイ」だということがわかる。思いのほか胸に沁みる

この主人公梓が中学の時の回想シーンがある。その時の親友叶海(白鳥玉季)の振る舞いが実にカッコいい。大人になってからの藤間爽子も出番は少ないがさすが藤間紫と思わせる。


⒊草笛光子に敬意
91歳の草笛光子が登場する。まだまだ頑張るなあ。安藤光恵がヘルパーとして派遣される家の93歳のご婦人役で家にはクラッシックなピアノが置いてある。上流と思しき振る舞いを見せて、若き日からフランス人にピアノを習っていた役柄だ。草笛光子はまさに貫禄十分である。


「90歳何がめでたい」は迷ったけど観ていない。不義理で良いのかと思いながら上映期間が過ぎた。いずれ確認したい。1960年前後の映画が好きで東宝社長シリーズあたりで新珠三千代や白川由美などとスクリーンに映る姿もいいけど現在も品を失わない。伝説の「光子の窓」は見たことがない。

会社に入って間もない頃、上品なご婦人がアシスタントでいてお世話になっていた。自分の父と同じ歳で草笛光子の一つ上だ。息子がお世話になっているということで、母が三越劇場の草笛光子のミュージカルのチケットを年末にそのご婦人にプレゼントした。すると、草笛光子のファンだと大喜びされた。若かった自分は一瞬なんでと思った。草笛は自分には単なるオバサンにしか思っていなかった。

そのご婦人から達筆で丁重なお手紙をいただき旧蠟のミュージカルが良かったと御礼され母も恐縮していた。旧蠟なんて言葉は初めて見た。草笛光子がミュージカルスターだということがわかった。日本経済新聞私の履歴書草笛光子が書いた時にミュージカルへの思い入れを知り、改めてそのご婦人を思い出した。

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