映画とライフデザイン

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映画「夜」 ミケランジェロ・アントニオーニ

2012-06-24 06:22:37 | 映画(欧州映画含むアフリカ除くフランス )
映画「夜」は1960年のミケランジェロ・アントニオーニ監督の作品だ。

ジャンヌモローとマルチェロ・マストロヤンニの当代きってのスターの競演にアントニオーニ監督前作「情事」で強烈な存在感を示したモニカ・ヴィッティが加わる。
スタイリッシュな映画だという印象と主演3人の姿は頭にこびりついていたが、今回久々にみて、細かいところはすっかり忘れていたことに気づく。ここでは笑わないジャンヌモローが特に渋い。

舞台はイタリアミラノだ。最初に映るシーンは、主人公夫婦(ジャンヌモローとマルチェロ・マストロヤンニ)が友人の見舞いに行くところである。夫は売れっ子作家だ。アルファロメオで乗り付けた2人が病室に入る前に、精神病の若い女性にからまれる。振り切るように友人の病室に入ったら、手術がしようがないのでもう先はないと落胆している。妻は一人病室を出て涙する。
その足で、2人は夫の出版パーティに向かう。でも気持ちが落ち着かない妻は一人でその場を離れてタクシーに乗っていく。行った先で一人さまよう。精神的に不安定なようだ
夜になった。黒の新調のパーティドレスを着て、妻はどこか行きたいという。夫は富豪の家でパーティがあるから行かないかというが、2人だけで過ごしたいといってナイトクラブに向かう。
ナイトクラブでは黒人のストリップショーが繰り広げられていた。そこでも何かみたされない妻は夫に富豪宅でのパーティに向かうように言う。
大豪邸でのパーティーには大勢の来客が集まっていた。妻は相変わらず落ち着かない。ホストにあいさつをした後で、2人は別行動をとる。インテリたちの集まりで、夫は来客たちに話しかけられる。そんな中一人でゲームに親しんでいる富豪の娘(モニカ・ヴィッティ)に夫は話しかけるのであるが。。。。。


(大豪邸)
前回見た時も舞台となる大豪邸に圧倒させられた。どうやらイタリアというのはかなり貧富の差が激しいらしい。1960年という時代背景やイタリアも日本と同じ戦敗国だということを考えると、大豪邸と美女たちが妙に浮いた存在に見えた。邸宅はガラス面が多く、かなり開放的なデザインだ。それぞれの部屋が大きい。庭も広い。プールもある。夜が似合う邸宅だ。その庭でジャズのアンサンブルが奏でられる。そして遊び人の男女たちによる狂乱の夜のパーティが繰り広げられている。

(音楽)
はじまってからずっと音楽がない。静かだ。この当時のアメリカ映画だとうるさいくらい高らかに音楽が奏でられる。対照的だ。そして2人がナイトクラブに入ると、パンティみたいな白いパンツだけはいた裸の黒人男性と白いガードルに身を包んだ黒人女性が妙なストリップショーをやっている。そこで音楽が流れる。映像に映るバンドが演奏する以外はほとんど音楽がない。それだけにこのバンドのエキゾチックな演奏が耳に響く。大邸宅へ行ってもジャズのバンドがモダンジャズを奏でる。アップテンポの曲で来客たちがジルバを踊り始める。音楽はその演奏だけだ。監督はこのやり方なのであろう。


(ジャンヌモロー)
この映画ではジャンヌモローの存在感が一番強い。表情が冷たく、ほとんど笑わない。クールな感じだ。この生意気そうな表情が大好きだという男性も多いだろう。黒いパーティドレスが似合う。当時32歳、ただ今で言うと雰囲気は40代前半という感じだ。50年前の映画を見ると、人間は進化しているのを実感する。モニカ・ヴィッティとは大して年が違わないが、やけにジャンヌが老けて見える。
そこにマルチェロ・マストロヤンニが加わる。彼もこういうパーティのシーンが似合う俳優だ。8・1/2と比べると若さを感じる。

(ミケランジェロ・アントニオーニ)
この映画は監督自身の離婚経験がベースにあるといわれる。すでに醒めている夫婦がいる。その状態で、突如妻がもともと好きだった男があと先短いというのがわかる設定だ。気持ちがなおのこと醒めていく。横では夫が若い女性にちょっかいを出している。醒めた夫婦の世界だ。
監督の映画は愛の不条理を表わすなんてことが取り上げられる。それ以上に彼が時代を見る目は鋭いと感じる。しかもスタイリッシュだ。こののち公開される「欲望」ではなんとジェフべックとジミーペイジが共演しているという歴史的映像も映しだす。時代の先端を行っていたともっと後世に評価されてもおかしくない。

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