映画とライフデザイン

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映画「春に散る」 佐藤浩市&横浜流星

2023-08-27 15:13:04 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「春に散る」を映画館で観てきました。


映画「春に散る」は沢木耕太郎の原作を瀬々敬久監督が映画化したボクシングモノである。主役のボクサーに横浜流星で、トレーナー役が佐藤浩市だ。沢木耕太郎の本は割と好きな方で、ノンフィクションだけでなくある意味ギャンブル小説といえる「波の音が消えるまで」がおもしろかった。瀬々敬久監督が演出するとなると一定以上のレベルは期待できるので早速映画館に向かう。男臭い映画なのになぜか中年以降のおばさんが妙に多いのには驚いた。

元プロボクサーだった広岡(佐藤浩市)がアメリカから久しぶりに帰国して居酒屋で飲んでいる時に酔客に絡まれる。その時にたまたまいたボクサーの黒木(横浜流星)と出会う。そして、黒木のパンチをかわした広岡に弟子入りを志願する。そして、広岡と同じボクシングジムにいた佐瀬(片岡鶴太郎)とともに黒木を鍛えていく。


これはおもしろかった。迫力のあるボクシング映画である。
映画とボクシングの相性はいい。昨年キネマ旬報ベストテンで1位となった「ケイコ目を澄ませて」三浦友和の好演はあれど、自分にはよく見えなかった。あの貧弱なパンチでは相手を倒せないだろうというのがその理由だけど、「百円の恋」安藤さくらのようにボクシングファイトがリアルに迫らないと物足りない。そういった点では、横浜流星はもとよりライバルとなる窪田正孝もボクサーの役づくりに没頭して実に良かった。

沢木耕太郎の原作は未読だけど、典型的なボクシング映画のストーリーだ。落ちぶれた主人公に過去のあるトレーナーが付いて成長させていく。そこにライバルが登場して競い合うというのは、演歌の節回しのようにどれもこれも似たようなものだ。でも、大事なのはボクシングのファイト場面である。横浜流星はプロボクシングのC級ライセンスを取得したという。そこまでやらないと迫力がでない。礼儀知らずでクールなボクサーを演じた窪田正孝も今回はうまかった。


今回それに加えて良かったのが加藤航平のカメラワークだ。映画の大画面を意識した映像コンテがよくできている。これは当然瀬々敬久監督のセンスの良さもあるわけだが、何気なく映し出されるバックの風景もいい選択だった。ただ、最近の日本映画に多い傾向だけど、シングルマザーや食べ物にありつけない子どもを登場させたりする妙に格差社会を意識させる場面をつくってしまうのは余計な感じがした。

クリントイーストウッドの「ミリオンダラーベイビー」でいえば、トレーナーのイーストウッドに対応する佐藤浩市に加えて、モーガンフリーマンのようなサブのトレイナーとして片岡鶴太郎を登場させるのもそれぞれにバックストーリーを用意してストーリーに幅を持たせる。ボクサーへの短いアドバイスのセリフもいい。あしたのジョーの白木葉子のように山口智子をボクシングジムの会長として登場させるのも悪くない。あしたのジョーのようなクロスカウンターも含めて色んなボクシングモノの引用が感じられる気がするけど、いいんじゃないかな。


エンディングは説明少なく最小限にまとめる。これもうまいと感じた。

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