映画とライフデザイン

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映画「国境の夜想曲」

2022-02-13 17:12:30 | 映画(欧州映画含むアフリカ除くフランス )
映画「国境の夜想曲」を映画館で観てきました。


「国境の夜想曲」はイタリアとアメリカの国籍を持つ映画監督ジャンフランコ・ロージによるドキュメンタリー映画である。ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞した「海は燃えている」を見た記録が残っているが、感想は書いていない。インテリ系評論家の評価がよく、濱口竜介監督との対談の記事もあり、とりあえず映画館に行ってみる。


ジャンフランコ・ロージ監督イラク、シリア、レバノン、クルディスタンの国境エリアに滞在して、3年がかりで作った作品である。もちろん娯楽性はあまりなく、紛争で揺れ動きこれまでの生活を破壊された現地を徘徊する中で出会った人たちの姿を映し出す。

戦争で失った息子を想い哀悼歌を歌う母親たち、ISIS(イスラム国)の侵略により癒えることのない痛みを抱えた子供たち、政治風刺劇を演じる精神病院の患者たち、シリアに連れ去られた娘からの音声メッセージの声を何度も聞き続ける母親、夜も明けぬうちから家族の生活のため、草原に猟師をガイドする少年。


監督自らカメラを持ち、触れ合った人たちを映像にしていく。美的感覚にすぐれた監督だけに、広大な平原や海をバックに油田の炎が映る映像ショットなどは飛び切り美しい。夜半に水辺に浮かぶ舟の向こうで、遠くに銃声が聞こえながら戦火の赤い光が見えるシーンも映像の美的センスにすぐれている。空がこんなに広かったのかとうなる場面が多い。


ただ、美しい風景描写を見せる映画ではない。しかも、この上なく暗い悲惨な生活を戦闘シーンなしで描く映画だ。観るのに疲れて途中で退席する観客も目立った。正直、インテリ筋の評価ほど傑作という感じはしない。観に行こうとする人には覚悟がいるだろう。

⒈ISISの悲惨さ
印象に残ったのは、幼稚園から小学校低学年と思しき少年が、子どもたちがクレヨンで描いた絵を見せながらISISの行為の悲惨さをしゃべって伝えるシーンだ。子どもたちの集落はISISの襲撃を受けている。連中は頭を切り落としたりするらしい。われわれがTVニュースで聞くイスラム過激派の酷さを子どもたちが見ているのだ。本当に怖かったんだろう。昨年末観た「モスル あるSWAT部隊の戦い」の映画でもISISとのゲリラ交戦を描いていた。アラブの人たちから見ても敵なのだ。


⒉学校も行けず一家の生計を立てる14 歳の少年
14 歳の少年が一家の家計を成り立たせるために、働く話で、猟師のガイドを日雇いでしている。いつも客がいるわけではない。普通だったら学校に就学する年齢だけど、そんな余裕はない。レバノンの映画で「存在のない子供たち」という映画があった。同じような年齢で、妹は金目当てで嫁に行かされるし、自身にはIDカードはなく何もできず八方塞がりで自分を産んだ親を訴える。この少年は街のスラム街で育ち口八丁手八丁でウソばかりついていた。この映画の少年は田舎の子でそんな度量はない。


朝が来ない日はないと宣伝に書いているが、とても来るようにも見えない。かなしい。

コメント
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