イギリスのEU離脱に関して日本のマスコミはイギリスが経済的に苦境におちいるという悲観的な記事が数多く報道されています。
そしてイギリスへ進出している日本の企業が1000社もあるので、日本の経済も大打撃を受けるというような記事だけが掲載されています。
しかし視野を広げて観察すると、イギリスのEU離脱を大歓迎している国もあるのです。それは中國です。
ロシアは経済的にはEUと深い関係があるので微妙な立場です。しかしヨーロッパの結束が弱まれば軍事的にはロシアの負担が減ります。ロシアにとっては西側のNATO軍事同盟が不愉快なのです。ですからロシアは経済的な懸念を持ちながらも軍事的緊張が緩和されるのは歓迎です。プーチン大統領はひそかにニンマリしていると言われています。
一方中国はヨーロッパから遠方にあるのでNATO軍事同盟はあまり気にしないと考えられます。
ですからイギリスのEU離脱は中国の国際的な経済活動をより自由にさせ、中国の世界経済支配をより有利にさせる効果があるのです。
この傾向は日本の国際的地位を低める効果につながります。日本はもっと広い視野でイギリスのEU離脱を考えるべきではないでしょうか?
今日はNewsweekの「イギリスEU離脱と中国の計算」(6月26日)を簡略にし、分かりやくして、お送りしたいと思います。詳細は、http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/06/eu-27.php にあります。
中国は以前から、イギリスのEU離脱に備え、いくつもの手を打っていたのです。
ドイツのメルケル首相やロシアのプーチン大統領の訪中だけでなく、中国が主宰するアジアインフラ投資銀行(AIIB)への規参加国を24カ国も増やしているのです。
イギリスがEUから離脱したがっている傾向は、早くから中国は知っていて、それを利用して来たのです。
まず金融センターの中心をアメリカのウォール街からイギリスのシティに移しました。つぎにチャールズ皇太子やキャメロン首相らによるダライ・ラマとの蜜月を非難して、困惑するイギリスの痛いところを突いたのです。
キャメロン首相が折れたところで、「それならば」とばかりにAIIBへイギリスが一番乗りで加盟させたのです。
これは驚きです。先進7カ国(G7)に中でイギリスだけが中国の主宰するAIIBへ加盟してしまったのです。
そしてイギリスのEU離脱の日に備えて、イギリスとは別にEUとの連携を強化し、EUで最大の力を持っているドイツをターゲットにし友好関係を推進したのです。日本とドイツとの戦後対応を比較してドイツを持ち上げ、習近平国家主席や李克強首相によるたび重なるドイツ訪問やメルケル首相の訪中を何度も成功させ、備えてきました。もちろんEU本部が置かれているベルギー訪問も怠っていません。
ドイツのメルケル首相による訪中は、今年6月13日で9回目を迎え、尋常ではありません。安倍総理は何回、中国を訪問したでしょうか?
中国がドイツをひいきにする理由は、第二次世界大戦に対する戦後処理に関して日本と比較して日本非難を行なうのに好都合だという理由だけではないようです。
改革開放後、中国が自家用車の製造に関して技術提供を世界に求めたとき、日本が中国を見向きもしなかったのに対して、ドイツはフォルクスワーゲンの技術提供を申し出ました。フォルクスワーゲンの意味は「国民の車」。まさに中国の自家用車開発の理念にピッタリで、中国はフォルクスワーゲンを「大衆」と訳して自家用車「大衆」を大量生産していったという過去があります。
一方、イギリスがEUから離脱すれば、イギリスはますます中国への経済依存度を高めるねばなりません。
中国はイギリスを自分の経済圏に取り込むのがより容易になるのです。
そして中国とEUとの関係をメルケル首相を通して強化していれば、中国はEUとイギリスの両方を手に入れ、「漁夫の利」を得ることになるのです。。
日本のマスコミはあまり報じませんが、中国主宰のアジアインフラ投資銀行(AIIB)の発展こそ日本経済の脅威です。
AIIBは、これまで57カ国が創設メンバーとなっていましたが、6月25日に北京で開催されたAIIB第1回年次総会において、新たに24カ国の代表が総会に参加しているのです。
この24カ国は、一朝一夕に「突然」加盟意向を表明したわけではありません。中国政府の根気良い外交努力の結果なのです。
つまり中国はイギリスがEUから離脱する日に備えて、ドイツのメルケル首相との関係を緊密化してきただけでなく、AIIBの強化をも、もくろんできたのです。来年には加盟国が80ヶ国を越え、日本が中心となっているアジア開発銀行(ADB)(現在、67ヶ国)を抜くことになる勢いです。
そして中国の目は、西欧から中央アジアあるいは東欧との連携にも向けられているのです。
英国の国民投票当日と2日後、プーチン大統領と中国・習近平国家主席がウズベキスタンと北京で会談しています。話し合では、パキスタン、アジア、ヨーロッパ、南シナ海、地球、五輪、などの広い話題が出たそうです。
以上のような中国の外交の展開から、中国はイギリスのEU離脱を大歓迎していると結論しても大きな間違いは無いと私は信じています。
日本のマスコミは北京で沖縄独立のシンポジュウムが開かれたというような感情的な報道はすぐにしますが、中国の用意周到な外交努力の積み重ねのような地味ながら非常に重要な記事の掲載が少な過ぎます。日本の外交が中国の外交に負けているように感じられるのは私だけでしょうか? 嗚呼。
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今日の挿し絵代わりの写真は江戸時代から続く仙台の七夕祭りの写真です。上の記事内容とは一切関係ありません。毎年、旧暦の七夕に近い8月6日、7日、8日に開催されます。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)
そしてイギリスへ進出している日本の企業が1000社もあるので、日本の経済も大打撃を受けるというような記事だけが掲載されています。
しかし視野を広げて観察すると、イギリスのEU離脱を大歓迎している国もあるのです。それは中國です。
ロシアは経済的にはEUと深い関係があるので微妙な立場です。しかしヨーロッパの結束が弱まれば軍事的にはロシアの負担が減ります。ロシアにとっては西側のNATO軍事同盟が不愉快なのです。ですからロシアは経済的な懸念を持ちながらも軍事的緊張が緩和されるのは歓迎です。プーチン大統領はひそかにニンマリしていると言われています。
一方中国はヨーロッパから遠方にあるのでNATO軍事同盟はあまり気にしないと考えられます。
ですからイギリスのEU離脱は中国の国際的な経済活動をより自由にさせ、中国の世界経済支配をより有利にさせる効果があるのです。
この傾向は日本の国際的地位を低める効果につながります。日本はもっと広い視野でイギリスのEU離脱を考えるべきではないでしょうか?
今日はNewsweekの「イギリスEU離脱と中国の計算」(6月26日)を簡略にし、分かりやくして、お送りしたいと思います。詳細は、http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/06/eu-27.php にあります。
中国は以前から、イギリスのEU離脱に備え、いくつもの手を打っていたのです。
ドイツのメルケル首相やロシアのプーチン大統領の訪中だけでなく、中国が主宰するアジアインフラ投資銀行(AIIB)への規参加国を24カ国も増やしているのです。
イギリスがEUから離脱したがっている傾向は、早くから中国は知っていて、それを利用して来たのです。
まず金融センターの中心をアメリカのウォール街からイギリスのシティに移しました。つぎにチャールズ皇太子やキャメロン首相らによるダライ・ラマとの蜜月を非難して、困惑するイギリスの痛いところを突いたのです。
キャメロン首相が折れたところで、「それならば」とばかりにAIIBへイギリスが一番乗りで加盟させたのです。
これは驚きです。先進7カ国(G7)に中でイギリスだけが中国の主宰するAIIBへ加盟してしまったのです。
そしてイギリスのEU離脱の日に備えて、イギリスとは別にEUとの連携を強化し、EUで最大の力を持っているドイツをターゲットにし友好関係を推進したのです。日本とドイツとの戦後対応を比較してドイツを持ち上げ、習近平国家主席や李克強首相によるたび重なるドイツ訪問やメルケル首相の訪中を何度も成功させ、備えてきました。もちろんEU本部が置かれているベルギー訪問も怠っていません。
ドイツのメルケル首相による訪中は、今年6月13日で9回目を迎え、尋常ではありません。安倍総理は何回、中国を訪問したでしょうか?
中国がドイツをひいきにする理由は、第二次世界大戦に対する戦後処理に関して日本と比較して日本非難を行なうのに好都合だという理由だけではないようです。
改革開放後、中国が自家用車の製造に関して技術提供を世界に求めたとき、日本が中国を見向きもしなかったのに対して、ドイツはフォルクスワーゲンの技術提供を申し出ました。フォルクスワーゲンの意味は「国民の車」。まさに中国の自家用車開発の理念にピッタリで、中国はフォルクスワーゲンを「大衆」と訳して自家用車「大衆」を大量生産していったという過去があります。
一方、イギリスがEUから離脱すれば、イギリスはますます中国への経済依存度を高めるねばなりません。
中国はイギリスを自分の経済圏に取り込むのがより容易になるのです。
そして中国とEUとの関係をメルケル首相を通して強化していれば、中国はEUとイギリスの両方を手に入れ、「漁夫の利」を得ることになるのです。。
日本のマスコミはあまり報じませんが、中国主宰のアジアインフラ投資銀行(AIIB)の発展こそ日本経済の脅威です。
AIIBは、これまで57カ国が創設メンバーとなっていましたが、6月25日に北京で開催されたAIIB第1回年次総会において、新たに24カ国の代表が総会に参加しているのです。
この24カ国は、一朝一夕に「突然」加盟意向を表明したわけではありません。中国政府の根気良い外交努力の結果なのです。
つまり中国はイギリスがEUから離脱する日に備えて、ドイツのメルケル首相との関係を緊密化してきただけでなく、AIIBの強化をも、もくろんできたのです。来年には加盟国が80ヶ国を越え、日本が中心となっているアジア開発銀行(ADB)(現在、67ヶ国)を抜くことになる勢いです。
そして中国の目は、西欧から中央アジアあるいは東欧との連携にも向けられているのです。
英国の国民投票当日と2日後、プーチン大統領と中国・習近平国家主席がウズベキスタンと北京で会談しています。話し合では、パキスタン、アジア、ヨーロッパ、南シナ海、地球、五輪、などの広い話題が出たそうです。
以上のような中国の外交の展開から、中国はイギリスのEU離脱を大歓迎していると結論しても大きな間違いは無いと私は信じています。
日本のマスコミは北京で沖縄独立のシンポジュウムが開かれたというような感情的な報道はすぐにしますが、中国の用意周到な外交努力の積み重ねのような地味ながら非常に重要な記事の掲載が少な過ぎます。日本の外交が中国の外交に負けているように感じられるのは私だけでしょうか? 嗚呼。
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今日の挿し絵代わりの写真は江戸時代から続く仙台の七夕祭りの写真です。上の記事内容とは一切関係ありません。毎年、旧暦の七夕に近い8月6日、7日、8日に開催されます。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)