昔は唐時代の漢詩を学校で一生懸命教えていたものです。ですから高齢者の人々は漢詩の幾つかを憶えていて、折にふれ詠み返しています。そして現在でも漢詩は学校で教えています。ですから日本人の心の古里は唐時代の漢詩ではないでしょうか。
そこで今日は漢詩にまつわることを書いてみたいと思います。心の古里のような唐時代の漢詩にまつわることです。
さて中国は共産党独裁の国です。漢詩を教えているか心配になり調べてみました。そうしたら湖南省の邵阳市第一中学校で教えていました。
(http://www.sysyz.com.cn/wx/sh.aspx?id=280 )。
「元二の安西に使するを送る」と題した漢詩が挿絵入れで紹介してあったのです。その挿絵をここにお送りいたします。
1番目の写真は湖南省の邵阳市第一中学校のHPに出ていた写真です。
ここに出ている詩は以下の通りです。
「元二の安西に使するを送る」
渭城の朝雨 軽塵を潤し
客舎青青柳色新たなり
君に勧む更に盡くせ一杯の酒
西のかた陽關を出ずれば故人無からん
邵阳市は日本の漢字で書くと邵陽市になります。古典文学の教養として日本も中国も同じ漢詩を幾つも習っているのです。何故か安心し、また中国に親近感が持てました。
唐の都から西の陽関という関所を越えて西域の僻地に旅立つ親友との惜別の詩です。
もう二度と会えないかも知れない友へもう一杯の酒を飲んでくれと言いながら別れを惜しんでいます。
この詩のポイントは故人にあります。故人とは古くからの友人や親友の意味です。
そして 陽関は関所の名で、現在の甘粛省敦煌県の西南の玉門関の陽(みなみ)にあったのです。
それはさておき、数年前に仙台で65年以上前の旧友達に再会したのです。市立愛宕中学校の二期生の同期会でした。その中学校を卒業したのは1951年ですから久しぶりの再会です。
皆様のうちで地方から中央に出て活躍しようとした方々も多かったと思います。当時は青雲の志を持って上京したのです。
その時、旧友達は何度も送別会をしてくれました。そして漢詩の得意な人がこの詩を朗誦したものでした・・・・
そして競争の激しい中央の実社会で苦しい思いや悲しい思いをして停年です。恥ずかしいこともしました。それは一朝邯鄲の夢でした。
そうして久しぶりに郷里の旧友に会ったのです。不思議に昔の皆の顔が鮮明に蘇るのです。老人が少年、少女に見えるのです。彼等とは一別以来60年以上会っていません。
彼らの傍にいると中学校でのことや遊びまわった山や草原や広瀬川の川原を思い出すのです。
そして360人以上いた二期生も70人ほどが旅立ってしまったのです。「君に勧む更に盡くせ一杯の酒~~~」と私は心の中で朗誦していました。
下に仙台の広瀬川の写真と東一番丁の写真を示します。最後の写真は同期会の様子です。出席者の頭髪がみな白くなっています。
さて皆様は昔習った漢詩を覚えているでしょうか。生まれ育った場所の風景や同期生のことを覚えているでしょうか。懐かしいですね。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈りいたしす。後藤和弘(藤山杜人)
2番目の写真は仙台に流れる広瀬川です。
3番目の写真は仙台の繫華街の東一番丁です。
4番目の写真は60年以上ぶりの同期会の様子です。
≒====参考========================
Chiaki Aoyama、https://jp.quora.com/naze-gakkou-deha-kanbun-no-yomikata-nado-no-jitsuyou-teki-de-nai-kyouiku-ga-gyou-ware-te-iru-node-shou-ka
古文はまだしも、漢文を学校で学ばせる理由はなんですか?
日本人は漢文にすごく近いところにいて、習わなくても語句の意味が分かってしまうくらい情緒的に縁が深い文化だと思います。日常生活に使う日本語の中にはそのまま漢文が使われている事例がたくさんあります。私も古典は高校生の時に勉強しただけの素養しかありませんが、大好きな科目でした。
私が好きで暗誦している唐の詩に劉 希夷の代悲白頭翁という七言古詩があります。
洛陽城東桃李花 洛陽城東 桃李の花
飛來飛去落誰家 飛び來たり飛び去り 誰が家にか落ちん
洛陽女児惜顔色 洛陽の女児 顔色を惜しみ
行逢落花長歎息 行き逢う落花に長歎息す
今年花落顔色改 今年 花落ち顔色を改め
明年花開復誰在 明年 花開いて復た誰か在らん
已見松柏摧為薪 已に見る 松柏摧れて薪と為るを
更聞桑田変成海 更に聞く 桑田変じて海と成るを
古人無復洛城東 古人また洛城東に無く
今人還對落花風 今人また落花風に対す
年年歳歳花相似 年年歳歳 花は相似たり
歳歳年年人不同 歳歳年年 人は同じからず
寄言全盛紅顔子 言を寄す 全盛の紅顔子
應憐半死白頭翁 応に憐れむべし 半死の白頭翁
此翁白頭真可憐 此の翁の白頭 真に憐むべし
伊昔紅顔美少年 これ昔 紅顔の美少年
公子王孫芳樹下 公子王孫 芳樹の下
清歌妙舞落花前 清歌妙舞 落花の前
光禄池臺開錦繍 光禄池臺に錦繍を開き
将軍楼閣畫神仙 将軍楼閣に神仙を画く
一朝臥病無相識 一朝病に臥して相識るなく
三春行楽在誰邉 三春行楽 誰が辺(ほとり)にか在る
宛轉蛾眉能幾時 宛転たる蛾眉 能く幾時ぞ
須臾鶴髪亂如絲 須臾にして鶴髪は乱れ絲のごとし
但看古来歌舞地 ただ看る 古来歌舞の地
惟有黄昏鳥雀悲 ただ黄昏 鳥雀の悲しむ有るのみ