後藤和弘のブログ

写真付きで趣味の話や国際関係や日本の社会時評を毎日書いています。
中央が甲斐駒岳で山麓に私の小屋があります。

「春の瀬戸内海のイカナゴの釘煮の思い出と文学作品」

2025年01月27日 | 日記・エッセイ・コラム
イカナゴ漁は早春の瀬戸内海の風物詩です。そのイカナゴの釘煮を数年前に何度かよく頂きました。春になるとイカナゴの釘煮を懐かしく思い出します。
旧友の鈴木 裕さんの母上が精魂込めて煮たものを何度か送って下さいました。
山椒入りのものとショウガ入りのものと2種類がハランの葉で分けてパックに丁寧に詰めてありました。漁の解禁早々のまだ幼魚の高級なイカナゴのクギ煮でした。懐かしく思い出します。
これを食べると、「ああ、今年も春が来た」という温かい気持ちになり、春の陽に輝く瀬戸内の海の風景が眼前に広がったものです。早春の季節の風物詩で
した。
瀬戸内海でしかとれない美味しいイカナゴという小魚を大量に丁寧に仕上げて、遠方に住む家族、親類、知人、友人へ送る風習は日本の美しいローカル文化です。瀬戸内海地方の伝統的な輝かしい『地方文化』です。

今日は美味しいイカナゴのあれやこれやを書いてみたと思います。
イカナゴは日本各地の沿岸で漁獲される魚です。しかし瀬戸内海のイカナゴは特別に美味しいのです。生育中に食べている餌が違うのです。
毎年、瀬戸内海でのイカナゴの解禁日は年によって違いますが、大体2月下旬に解禁になります。
稚魚を瀬戸内沿岸部ではイカナゴ(玉筋魚)、関東ではコウナゴ(小女子)、大阪ではシンコまたはカナギと呼ばれています。
イカナゴは暑さに弱く、6月から晩秋過ぎまで砂に潜って夏眠する珍しい魚です。
関東ではコウナゴの佃煮と同じものが瀬戸内海沿岸ではイカナゴのクギ煮と呼ばれています。

イカナゴのクギ煮と同じものを東京ではコウナゴの佃煮と言います。味がどのように違うのか食べ比べてみると歴然と違いが分かります。
同じ魚ですが全く味が違うのです。
瀬戸内海沿岸の須磨のイカナゴのクギ煮はかすかにフォアグラのような肝臓の風味がするのです。そして骨を感じさせない柔らかい小魚の食感です。魚の肝臓ではアンコウの肝やカワハギの肝が美味ですが、それらと一脈通じる味がかすかにするのです。これこそイカナゴのクギ煮が絶賛される原因なのです。
東京で売っているコウナゴの佃煮とイカナゴの釘煮を食べ比べてみると明快に分かるのです。コウナゴは身が固すぎます。魚としての旨さは充分ありますが固すぎるのです。
この違いは餌の違いなのでしょう。
イカナゴの釘煮こそ瀬戸内海地方の『地方文化』なのです。

イカナゴの釘煮がローカル文化であることは、それにまつわる和歌や俳句や随筆をみるとよく分かります。
毎年、いかなごくぎ煮振興協会が主催してイカナゴの釘煮にまつわる和歌や俳句や随筆を募集しています。
そして優秀な作品へ『いかなごのくぎ煮文学賞』を与えているのです。(http://kugini.jp/contest/index_b2016.html )
第5回目を迎えた文学賞では、過去最多の1410作品が全国43都道府県から寄せられました。
その中から主な作品をご紹介いたします。
第五回 いかなごのくぎ煮文学賞 グランプリ作品

≪ 短歌 ≫
「春暁(しゅんぎょう)の 海に漁火 煌(きら)めきて 茅渟(ちぬ)の浦曲(うらわ)に ●子(いかなご)のくる」 ( ●は魚へんに白)    
                大濱義弘 さん  72歳 (神戸市垂水区)

三田 完 先生 講評
さながら万葉の一首のような風格を持つ作品です。「茅渟」は大阪府南部の古称で、黒鯛のことを「チヌ」と呼ぶのも、この地名にちなんだものととか。「浦曲」は入江のこと。こうした古語をすんなりと用いた技量に感服しました。

≪短歌≫  くぎ煮炊く 母との会話 味わって 顔知らぬ祖母へ 想いをはせる              川野沙綺 さん  高1 ( 神戸市垂水区)

三田 完 先生 講評
くぎ煮を炊く香りを鼻孔で味わいながら、作者はくぎ煮を炊くお母さんとの会話も耳で味わっています。会話の内容は、くぎ煮の炊き方を教えてくれたお祖母ちゃんのこと。この会話のおかげで、炊き上がったくぎ煮の味がふっくらと豊かになります。味がそれぞれの家庭で受け継がれていく-そのことについて書いた投稿は毎年たくさんあります。この短歌もそうした一篇なのですが、未知の祖母に寄せる孫の思いが、くぎ煮の味わいを数段引き立ててくれました。

≪ 俳句 ≫ 「 いかなごを ふくふく育てる 春の波 」     
              マコッチャン さん  58歳 (神戸市西区)
三田 完 先生 講評
「ふくふく育てる」が、瀬戸内の海の豊かさをみごとに伝えてくれます。春風駘蕩の海原を詠んだ句なのに、口の中にはくぎ煮の味が沸きあがる-まさしくくぎ煮文芸の神髄といえるでしょう。

≪ 俳句特選 ≫ 「 春を告ぐ ほのかに香る いかなごよ 」   
                  りい さん  高2 (神戸市長田区)
三田 完 先生 講評
温かいご飯の上にくぎ煮を載せたとき、ほのかに香りがたちのぼる。その淡い香りに春を実感する…。これこそ、まさに俳句-日々の暮しのなにげない一瞬に季節を感じ取ることです。

この他にイカナゴに関する随筆もありますが、長くなるので割愛いたします。
瀬戸内海でしかとれない美味しいイカナゴを大量に丁寧に仕上げて、遠方に住む家族、親類、知人、友人へ送る風習は日本の美しいローカル文化ではないでしょうか?瀬戸内海地方の『地方文化』です。

イカナゴ漁の関連の写真をお送り致します。

今日は春の瀬戸内海のイカナゴの釘煮をご紹介致しました。そしてイカナゴの釘煮にまつわる文学作品もご紹介致しました。

それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)
1番目の写真はイカナゴ漁をしている漁船の写真です。
2番目の写真は目の細かい網にイカナゴがビッシリ獲れて、それを船の上に引き上げようとしている光景です。
3番目の写真はとれたイカナゴです。イカナゴは人間の指の半分くらいしかない小さな魚です。
4番目の写真は大量にとれたイカナゴの写真です。
5番目の写真はイカナゴを丁寧に煮て作った釘煮の写真です。

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