俳句といっても、実にさまざま。
全体像の俯瞰できる本はあまりないようです。
俳人の夏石番矢氏は「早わかり・現代俳句マニュアル」のなかで、
正岡子規の俳句革新のあと、20世紀に入って、
俳句の発展を、5つの方向に分類していましたので紹介します。
① 心理主義的発展
個人の自由な感性と心理を俳句の中心とするもの。
自由律の句が出発点になったとして、次のような句をあげています。
うすものを着てそなたの他人らしいこと 中塚一碧楼
たった一人になって夕立 尾崎放哉
恋ふたつレモンはうまく切れません 松本恭子
② 社会批評的発展
プロレタリア俳句の登場。
君よそうや元日から税金がまだ払えない話は 橋本夢道
浮浪児昼寝す「なんでもいいやい知らねえやい」 中村草田男
では、後から前から三菱銀行あそび 江里昭彦
③ 自然諷詠的発展
19世紀からの伝統に立った高浜虚子を中心とした流れ。主流。
流れ行く大根の葉の速さかな 高浜虚子
天心の小さき月の錐を揉む 川端茅舎
ふるさとの雪に我ある大炉かな 飯田蛇笏
(写真は梅花藻です。滋賀県の醒ヶ井で撮影したものです。)
遅足