3日の憲法フェスティバルで、香山リカさんの講演を聞きました。
バブル崩壊後の日本を精神分析した話でした。
かなり私風の誤解を恐れずに紹介します。
発病の発端は、1990年後半のバブル崩壊。
右肩上がりの成長は止って、人間でいえば、中年にさしかかった。
そして、いわゆる中年の危機がやってきた。
そのひとつが改憲症候群。
この症候群、今は潜伏しているが、また発症する可能性も。
人は、他人の不幸は「かわいそうに」とは思っても、ひとごと。
そう思って心の安定を得、毎日を過ごしている。これは健康な証拠。
しかし、バブル崩壊後、阪神大震災、オウム事件と、
どうも他人事ではすまされないことが続き、不安になる。
この不安が、中年の危機の発症の始まり。
そこに追い討ちをかけるように、長い不況からリストラの嵐。
我が身を守ることに、心が集中、他人のことを思いやる余裕をなくす。
不安はますます強まる。症状の悪化。
正しい処方箋は、不安の原因をシッカリとみつめて対処すること。
しかし不安にかられると、そんな心の余裕はなくなる。
まして個人にはあっても、国民全体の精神科医はいない。
人々は、心の安定のために、不安はないことにしようとする。
あるいは、不安の原因を他人に押し付けて安心しようとする。
また、危機に陥った時、人は思い切ったことをして、生活を変えようと考える。
個人の場合、転職や離婚を考える。
政治は二流でも経済は一流といわれた日本。
しかし中国などの追い上げによって、経済大国日本は過去の夢に。
国内の不況対策も、既得権益を守ろうとする勢力の抵抗など、
国の指導者はさまざまな手を打ったが、うまく行かない。
打つ手がなくなって、登場したのが転職ならぬ、改憲。
これさえ実行すれば、すべては上手く行くのでは?
改憲は以前から自民党の基本政策。
しかし、バブル崩壊後に、国民の多くが改憲に心惹かれたのは、
じつは不安からの一時的な逃避ではなかったのか?
(改憲したら、不安の原因は解消されるのだろうか?冷静に考えれば
そこには、なんの因果関係もない。)
では護憲の方は不安の正体を正しく見ていたのか?
同じ様に不安から逃れるために護憲の旗をあげたのではないか?
(これは、かなり急所をついた痛い指摘だと思いました。)
現在、改憲症候群は、一時、弱まっている。
中年の危機に陥った人が転職を考えるようになった時、
精神科医は、時間稼ぎをする。
ある程度、時間がたつと、なぜ転職など考えたのか?と冷静に。
今は、激しい症状が一時的に治まっただけ。
またぶり返す可能性も高い。
改憲、護憲を問わず、いま、本当に必要なことは
不安の正体をまっすぐに見ること。
右肩あがりの経済成長は終り、少子高齢化社会へ。
日本は、中年から初老への変化の時期の真っ只中。
未体験の老年期に入ろうとしているようです。
隣国に愛される老人になりたいもの。