575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

春蘭               草女

2008年05月23日 | Weblog
 今年の海上の森は春蘭の当たり年である。今までになくたくさんの春蘭に出会えてとても嬉しかった。
 少し乾燥して、落ち葉がふかふかしているような雑木林に生えるラン科シュンラン属の多年草。観賞用として栽培されているお馴染みの植物であるが、自生している花には素朴な美しさがある。
 花茎根元から立ち、数枚の薄紫の膜のような鱗片に包まれている。花の色は黄色から緑色で真ん中の唇弁には赤紫色の斑点がある。この斑点故に別名をホクロと言い、江戸時代まではもっぱら「ホクロ」と呼ばれていたらしい。また、天井部の部屋の仕切りの「欄間」は、蘭の香りが隣の部屋まで届かせる仕組みと言う意味でそう呼ばれていたと言う。日本の春蘭にはそのような香りは無いが、別種の中国産の春蘭は強く香るそうである。
 今では数を減らしているシュンランであるが、昔の人々はシュンランの花を食用として活用した。天ぷらにしたり、塩漬けにして蘭茶として親しんだ。
 現代人にとっては何とも贅沢なことである。一度、蘭茶を飲んでみたいと切望しているが、森の花を摘む気にはなれない。
 花はやがて3から4cmくらいの楕円形の実になる。その中には1mmにも満たない種子が万単位で入っている。
 やがて、森のシュンランが何十倍にも増えたらその時は、少しお裾分けしてもらって「蘭茶」を作ってみたいと思っている。

   春蘭や山の音とは風の音       八染藍子
   春蘭や秩父の奥のどんづまり     江口千樹
   春蘭の花とりしつる雲の中      飯田蛇笏
コメント (1)
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