575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

荻原俳句教室より   遅足

2009年11月16日 | Weblog
先日の教室での先生のお話です。
句はいずれも講座に出席された方のももです。


  みさご舞ふ紀伊の松島冬に入る

先生のコメント
紀伊の松島、という場所が、読者にあまり身近ではなく共感を呼びにくい。
そこで紀伊の風景にココロ打たれたことを素直に書く方法もある。
普通は使わない大げさな「うつくしい」という形容詞を使って

  みさご舞ふ紀伊うつくしや冬に入る

景色+地名+うつくし+季語
この方程式を覚えておくと良いのでは。

    

  マンションに蕾ふくらむ冬椿

先生のコメント
蕾には「ふくらむ」ということが、すでに含まれていると
考えたほうが良い。
普通は禁じ手の「たのしむ」を使う方法もある。

  マンションに蕾たのしむ冬椿

    
 

  小春日や矢印の指す峠道

先生のコメント
ちょっと遊びココロで、矢、飛ぶ、という連想から

  小春日や矢印の飛ぶ峠道

なろほど!
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冬田今新建材の家迫る   朱露

2009年11月16日 | Weblog

    標高二百メートルもない山脈が囲う。
    豊橋市東端の穀倉地帯その名も多米。
    収穫が終って烏の遊び場になる田圃。
    そのギリギリまで家とアスファルト。

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老いと俳句 ②         福山至遊(しゆう)さんのHPから 愚足

2009年11月16日 | Weblog
 大寒や転びて諸手つく悲しさ     西東三鬼

 足腰が弱って来ると転び易くなる。誰に当たることも出来ないことなので「悲しさ」と内に秘めるしかない。そこがまた悲しい。この悲しさの複雑さがこの句を救っているのかも知れない。形の上では鬼城の最初の句同様、言い過ぎだからである。

   此石に秋の光陰矢の如し       川端茅舎

 茅舎は四十歳でこの世を去っている。だから「老い」の句には当たらないかも知れない。前にも紹介したと思うが、この人は殆んどを病床で過ごした人である。多分常に死と隣り合わせに居る気分だったと思う。「光陰矢の如し」は大燈国師遺誡の中に見える言葉だが、出典はともかく、もう諺の域に達するほど人口に膾炙されている。それを俳句に使うのだから凄い。日の過ぎるのを早く感じるのは「老い」の自覚である、と勝手に解釈している。「うつろいやすいもの」としての時と、石の対比がいい。

   憩うとし枯野の石で尾骨打つ    佐野まもる

 西東三鬼の句と似ている。体の端々まで神経が行き届かなくなると同時に、反射神経も衰えて急な対応が出来ず、したたかに尾骨を打ったようである。笑って誤魔化す必要もなく、多分周囲には誰も居ない。それだけに自分が情けなくなるのである。

   日短し五慾のうちの四慾枯れ     飯田龍太

 何の慾が残っているかは言っていないが、五慾とは財、色、飲食、名誉、睡眠のことだという。多分食欲くらいは残っているのであろう。これは残りが枯れた状態を、ある意味で楽しんでいるとも取れる。いわゆる煩悩の数が減って来たので気楽なのである。「日短し」は冬の季語であり、単に日照時間が短いだけでなく、上の茅舎の「光陰矢の如し」とも相通ずるものがある。

   枯るる中われはゆっくり枯れんかな   林 翔

 これは、自分はまだ枯れていないと言っている。だけど確実に枯れかかっている。枯れ始めた人の強がりでもあるし、希求でもある。ゆっくり枯れる老い方は自分でも理想としているので、一緒に頑張りましょうと言いたくなる。

   朴落つる音の歳月過ぐる音       斎藤玄

 「朴」と聞くと前に出した茅舎が頭に浮かぶ。病床から句を詠む茅舎にとって、朴の木は最大の句材の提供者だったという。「朴の花」は落ちないでしぼむという。従ってこの音は朴の落葉の音である。これも老境とは一言も言っていない。しかも一瞬、何処で切るか迷う句である。直接嘆きの言葉はないが、朴の葉の落ちる音を何年も聞いて来たことで、作者もそれなりの年齢になっていることを想像させる。もしかすると癌の奥さんの看病の頃の作か。

 私は精神的な老いが一番怖い。肉体的には致し方ないが、精神的な若さで多少なりとそれを補うと同時に、できたら死の直前まで脳だけは瑞々しさを保っていたい。もし精神的に老いたら

   老いるには一夜で足りる公孫樹かな  福山至遊

ということになり兼ねない。その意味で俳句をやって良かったと心底思っている。

コメント (1)
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