
由来は、枝いっぱいに花を咲かせるので「満作」、また「まず咲く」がなまったとす
る等の説がある。花は2cmほどの線形の花弁が4個、捻じれて暗紫色の萼についている。
派手な花ではないが、これが咲くと「春が来る」と実感する。最近はロウバイがまず
咲いて春は近いことを人々に知らせるが山の中ではマンサクが春を告げる。だから私は
「まず咲く」からマンサクになったと思っている。
町に住んでいる私達は、マンサクを春の案内人としてしか価値を認めていないが、
雪深い地方では大切は材である。かんじきはマンサクの若木で作られるし、合掌造り
の屋根の骨組みを結ぶのに用いられる。この結束材を「ねそ」または「ねっそ」等と言
いマンサクの地方名にもなっている。が、マンサクは他を抜きんでて粘りがあった
り、強靱であるとういうのではない。そこらの事を「日本の世界遺産 秘められた知恵と力」(日本放送出版協会)では次のように説明している。
「合掌造りの屋根の骨組みは木材を縄やネソ(マンサクの若木)で結んであるだけ
である。ネソは木材の交わる箇所に斜めに巻き付けて縛る(注:十文字に縛らないと
いうこと)が、その際、ネソをかける向きを互い違いになるようにしている。これに
よって妻側のどちら向きの風を受けても穏やかに動き、屋根が壊れるのを防いでい
る。こうした柔軟構造は屋根の骨組みの結び方に秘密があるといえる。」
結び方に長年の知恵が生かされていることは分かった。それはマンサクの若木、ネ
ソでなくてはいけないのもか? かならずしもマンサクでなくても、他のものでもそ
の力を発揮できるそうだ。しかし伝統的技術の保全ということに重点を置き、いまなお
ネソに拘っているそうだ。そういえば、東山植物園の合掌造りの屋根を葺き替えたと
き、つかわれていたネソが暫く展示されていた。新しい屋根には新しいネソが使われた
そうだ。
それぞれの植物の特性を知り、それを生活に役立た昔の人々には本当に頭が下が
る。