575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

風がさはったといふほどの風鈴の音です   魚眠洞

2013年07月15日 | Weblog
山頭火が愛知県の刈谷を訪れた時に訪ねたのが池原魚眠洞。
魚眠洞は明治26年、鳥取県の生れ。
東京高等師範を卒業後、愛知県の教育界へ。
山頭火がやってきた時は刈谷中学の校長でした。

  横町へ夏の雨あがってゐるポスト

  高射砲がずっと仰角をとってきて夏雲

いずれも季語のある句です。
高射砲の句は戦争を身近に感じさせます。

魚眠洞の師・荻原井泉水は、子規の俳句革新運動を引継いだ人。
改革をさらに進め、575の定型・季題を否定。
感動のリズムにしたがって詠む「自由律」を提唱しました。

自由律俳句、一時は隆盛を極めましたが、やがて行き詰まります。
そこで、魚眠洞は、昭和43年新しく「視界」を創刊。
新しい詩法として「現代詩としての一行詩」を、理念に掲げます。

  月の明るさは音のない海が動いている

  にぎりめしの新聞にある記事のにぎりめし

この「視界」も昭和60年に終刊。魚眠洞は、翌々年に亡くなっています。
この他に私が好きな句。

  昼を過ぎると風呂の暖簾が出て秋風の蝶々

  海が噛みつくように狂う音の二階へ急な階段

  いちにちうちにいて冬の日が部屋の中移ってゆく

  笑つてわらつて涙が出るほど笑つたあとの、みかん

  髪から手拭をはずし嫁にきている

最後の句は、奥さんのことなのか?息子のお嫁さんなのか?
ちょっとした仕種を掬いとった良い句だと思います。


コメント
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