575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

鳴かぬなら鳴かせてみよう亀句会   麗

2019年03月21日 | Weblog
一気に春の陽気になった昨日。鳴くはずもない亀も思わず鳴き出してしまいそうな良いお天気でした。兼題は「亀鳴く」か「草餅」でした。
15句のうち難しい季語「亀鳴く」にチャレンジした方が多くどんな時に亀が鳴くのか想像力をふくらませてのチャレンジ句会となりました。

では一言講評です。

題詠「亀鳴く」「草餅」

①亀たにし鳴けど帰らぬ拉致の人

亀もタニシも鳴き声を聞いたことはありません。そんな亀やたにしが鳴いたのに、いまだ拉致された方々が帰国できず。拉致されている方やそのご家族に思いをはせました。

②よもぎ餅練りこむ鉢の青臭さ

情緒におぼれず、冷静に観察し「青臭さ」と表現したところが新鮮でした。

③亀いつ鳴く日差し和らぐ神の池

亀はいつ鳴くのでしょうか?神の池にいる亀なら、鳴くはずもない亀も鳴きそうです。

④亀鳴くや父から母へのラブレター

オスの亀がメスを慕って呼ぶような説もあるとか?施設に入所している母への父からの慰めの手紙。父の精一杯の愛情表現でした。

⑤気の利いた言葉は消えて亀の鳴く

気の利いた言葉なら言わない方がよかったと後悔することもあります。言葉より思い亀の鳴き声。

⑥亀鳴くや再建匂ふ中金堂

半年前に興福寺の中金堂が新しくなりました。鮮やかな丹塗りの赤色に鳴沢池の亀も思わず鳴いてしまったかも?


⑦汚染土はそのままだねと亀鳴きぬ

福島の汚染土は未だ手つかず。コントロールはされていません。真実を亀の鳴き声に託しました。

⑧石庭に心乱れて亀鳴きぬ

禅の公案。石庭を前に座禅を組んでも、目を閉じても心は乱れます。亀が答えをくれたような??


⑨亀鳴くや手足伸ばして首伸ばす

ぽかぽか陽気に甲羅干し。そう、こんな日に亀は心身を解放して鳴くのかも知れません。


⑩亀鳴くやひとが地獄をつくりし日

こんな衝撃的な句ができあがるとは!!作者の本領発揮です。原爆、原発事故。ひとが作った地獄です。地獄はあの世にではなく、この世にこそあるのです。そんな日に亀が鳴きました。

⑪ふるさとの土手で摘み取る蓬かな

素直な一句。懐かしい故郷の景色が浮かびます。

⑫水底に黄泉(よみ)の入口亀鳴けり

黄泉の入り口は水底にあるのかも知れません。童話的でもあり亀がここが黄泉への入り口と教えてくれるのかも?そんなこともあるかも知れないと思わせる、これまた渾身の一句。


⑬亀啼けば酒を呑ませて堀に返す

亀を生け捕りにしたらお酒を飲ませて帰してあげるといいという言い伝えがあるそうです。作者は名古屋城のお堀に亀を帰してあげた思い出があるそうです。下五の字余りが残念!

⑭老健に少女訪なひ母子餅

「老健」とは介護老人福祉保険施設の略称です。「年をとっても健康なこと」という意味でとられた方もいました(笑)少女を連れて行けば草餅作りもにぎわいます。ちなみにうちの母も老健でお世話になっています。

⑮亀鳴くよ傘寿むかへて句をはじむ

ほのぼのとした一句。俳句はいつからでも始められますね!亀もびっくり?応援しています。

いかがでしたでしょうか?亜子さんが先月の句会で、一度、鳴くはずのない「亀鳴く」という季語を使ってみたい。みなさんがどんな俳句を作られるのか楽しみ!とおっしゃいました。
皆頭をフル回転させてがんばりました!

句会を終えて亜子さん曰く。「大変満足です!!ありそうでなさそう、なさそうでありそうな場面が詠まれこの季語を選んでよかった」とのこと。

本当に難しい季語でしたがいろんな亀の鳴くシチュエーションを想像して鳴くはずのない亀を鳴かしてみせました。
できることなら地獄ではなくうららかな日に鳴いて欲しいですね。

さて、来月は新元号も発表になっていますので、新元号を詠み込んで一句。あるいは「落花」という季語でもOKです。

次回は4月17日(水)午後1時20分。愛知芸文センター12階。
皆様のご参加をお待ちしています。新元号、どんなかな~?麗子  


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