575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

幻想の「 カサブランカ 」 ⑵  竹中敬一

2019年03月30日 | Weblog

 

戦後  、堰を切ったようように入ってきたアメリカ映画。

私のようにあまり映画を見ない者でも「 カサブランカ 」や 「 哀愁  」

は観ています。

「 カサブランカ 」は敗戦の翌年の昭和21年に、「 哀愁 」の方は

昭和24年にそれぞれ、日本で公開されています。

「 哀愁 」 の原題は「 Waterloo  Bridge  」( ウォータール橋 )。

ウイキペディア調べでは、昭和28年に日本で公開された「 君の名は 」

は、このウォータール橋を数寄屋橋に置き換えた作品とか ( 内容は

異なります。また、勿論、今、人気のアニメ映画ではありません 。 )

いずれの映画も戦時下での男女の出会いと別れが描かれています。

その頃、つまり、私が中学か高校の頃 、出会いや別れを歌った日本

の歌謡曲の中に、例えば  「 高原の駅よ さようなら 」

( 昭和 26年)があります。

小畑実の甘い声を今でも思い出します。

  しばし別れの 夜汽車の窓よ

  言わず語らずに  心と心

  またの逢う日を 目と目で 誓い

  涙 見せずに  さようなら

何も言わなくても、心と心、目と目で誓い合い、涙も見せずに ……。

それに比べて「 カサブランカ 」、「 哀愁  」では 、人前で堂々と

抱き合い、キスをしたり、別れの時にはポロポロと涙を流すシーン

を見て、軍国少年だった私たちはショツクを受けました。

アメリカって何て自由なんだろう。

リンカーンの 「人民の、人民による 、人民のための政治 」が行われて

いるパラダイスだと思ったものです。

昭和50年代、私と同じテレビ局の同僚5人と研修旅行でアメリカの

CBSなどテレビ局を訪れて感じたのは、矢張り、アメリカは一歩も二歩も

進んでいるということでした。

また、テレビ局で出会った人たちは誰もが開放的で明るく 、親切で 、

アメリカという国にとても良い印象を受けました。

ところが、その翌年 、アメリカに住む日系一世の方々の生き方を追う

テレビドキュメンタリーの取材でシアトルへ行った時、

ジャップと罵られるなど白人から差別 を受けたこと、

戦時中 に強制収用所に入れられたことなどを嫌というほど聞かされ、

パラダイスは幻想に過ぎなかったことを実感しました。

何事にも感じやすい年頃を軍国少年として育った私たちは戦後、

一気に解放されて、今まで敵国だったアメリカの良いところばかりを

見てあこがれていたように思います。

確かに、今 もアメリカは魅力的であることに変わりはありませんが、

トランプ政権の諸々の発言は、もう一つのアメリカの本当の姿を

あらわしているのではないでしょうか。 

             

天白川沿いの土手が私のいつもの散歩道 。黄色いチョウが遅い足どりの私を促すように前に来てくれて、

いつの間にやら野方神明社へ 。 毎春、神さびた神社の小さな森の前に咲く枝垂れ桜を楽しみにしています 。

 今年は例年より少し早くもう散りかけていました 。(3月29日 撮影)

 

 

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