
「A氏からの手紙」
クリスチャンのA氏。彼から届いた手紙をご紹介
いたします。
近頃、コロナ禍とキリスト教の予定説について考
えています。教会でオルガンを弾いていた、あな
たなら熟知されていると思いますが、神が人の運
命を決めるという。あの予定説です。
例えば、善人と悪人が乗っている船が沈んだとし
ます。神は誰を助けるのでしょうか。普通、女子
供、年寄り、善人となるでしょう。悪人など助け
なくてよいという考えもあるかもしれません。し
かし神は悪人を助けるかも知れません。予定説は
誤解され冷酷にも受け取られるため、教会で話題
にすることを避けています。
キリスト教は神と人との契約であり、日本の神と
人との関係とは大きく異なります。勘違いされる
と困るのですが、私は、ここで宗教の優位を述べ
ているわけではありません。
さて、コロナ禍は神の御心を表す予定説なのでし
ょうか。あなたはどう思いますか。
A氏の予定説とは、16世紀のフランス改革派教会
の神学者。ジャン・カルヴァンにより教理として
確立されました。
ここからはA氏に宛てた私の手紙より引用します。
「弥陀の誓ひぞ頼もしき、十悪五逆の人なれど、
一度御名を称ふれば、来迎引接疑はず」これは、
親鸞の「悪人正機説」です。浄土真宗では「南
無阿弥陀仏」と唱えるだけで阿弥陀が極悪人であ
っても浄土へ招き入れるとされています。悪人も
仏に生かされているという悪人正機説。カルヴァ
ンの予定説とは真逆のようですが、私は、真意は
同じではないかと考えています。
とまれ、世界にはさまざまな宗教があります。コ
ロナ禍で傷ついた魂に安らぎを与えること。信じ
る神は違っても願いはひとつでしょう。
画像「ジャン・カルヴァン」
文と構成 <殿>