日本男道記

ある日本男子の生き様

徒然草 第二十一段

2019年11月12日 | 徒然草を読む


【原文】
 万のことは、月見るにこそ、慰むものなれ。ある人の、「月ばかり面白きものはあらじ」と言ひしに、またひとり、「露こそなほあはれなれ」と争ひしこそ、をかしけれ。折にふれば、何かはあはれならざらん。

 月・花はさらなり、風のみこそ、人に心はつくめれ。岩に砕けて清く流るゝ水のけしきこそ、時をも分かずめでたけれ。「沅・湘、日夜、東に流れ去さる。愁人のために止まること少時しばらくもせず」といへる詩を見侍りしこそ、あはれなりしか。嵆康も、「山沢に遊びて、魚鳥を見れば、心楽しぶ」と言へり。人遠とほく、水草清きよき所にさまよひありきたるばかり、心慰さむことはあらじ。

【現代語訳】
 どんなに複雑な心境にあっても、月を見つめていれば心が落ち着く。ある人が「月みたいに感傷的なものはないよ」と言えば、別の人が「露のほうが、もっと味わい深い」と口論したのは興味深い。タイミングさえ合っていれば、どんなことだって素敵に変化していく。

 月や花は当然だけど、風みたいに人の心をくすぐるものは、他にないだろう。それから、岩にしみいる水の流れは、いつ見ても輝いている。「沅水や湘水が、ひねもす東のほうに流れ去っていく。都会の生活を恋しく思う私のために、ほんの少しでも流れを止めたりしないで」という詩を見たときは鳥肌が立った。嵆康も「山や沢でピクニックをして、鳥や魚を見ていると、気分が解放される」と言っていたが、澄み切った水と草が生い茂る秘境を意味もなく徘徊すれば、心癒されるのは当然である。

◆鎌倉末期の随筆。吉田兼好著。上下2巻,244段からなる。1317年(文保1)から1331年(元弘1)の間に成立したか。その間,幾つかのまとまった段が少しずつ執筆され,それが編集されて現在見るような形態になったと考えられる。それらを通じて一貫した筋はなく,連歌的ともいうべき配列方法がとられている。形式は《枕草子》を模倣しているが,内容は,作者の見聞談,感想,実用知識,有職の心得など多彩であり,仏教の厭世思想を根底にもち,人生論的色彩を濃くしている。


Daily Vocabulary(2019/11/12)

2019年11月12日 | Daily Vocabulary
24321.have/has come to like/love (〜が徐々に好きになる)
I've come to realize that the most important thing is to take action.
24322.grow on someone (だんだん気に入るようになる )
Once you live in a place, it grows on you. .
24323.acquire a taste(徐々に(食べ物/飲み物)が好きになる)
I have acquired a taste for black coffee. 
24324.I have mixed feelings. (複雑な心境です)  
 She has mixed feelings about her job. She gets along with her coworkers but the pay is not that good.
24325.It’s likely to rain today (今日は雨が降りそうですね )  
Do you think that company is likely to succeed?  

今日の英語ニュースを聞こう!NHK WORLD Daily News