芥川賞も直木賞も もともとは文芸春秋社の雑誌の販売促進ツールの一面があり、それに乗りたくないので 若い時から 発表される号を買ったり 出版される単行本を買うことはなかった。
しかし直近の芥川賞になった高瀬隼子さんの『おいしいごはんが食べられますように』の新聞記事で 作者の高瀬さんが愛媛県新居浜市の出身と知って俄然興味が湧いた。
自分が社会人になって会社勤めをスタートし、2年半を過ごした あの新居浜から芥川賞作家が出たのかと。
高瀬姓の人で知っている人がいるので、高瀬隼子さんはその人の係累かと知り合いの田中昭さんに問い合わせたら聞いてないとのことだった。
図書館のこの本の単行本の予約状況をwebで確認したら300人以上の待ちだった。止む無く 次に掲載された雑誌の予約状況を見たら数十人だったので
こちらから予約を入れて割合はやく順番が来て読むことが出来た。
初出の雑誌「群像 2022年一月号」と講談社発行の単行本(webから引用)
読んでみたら ものを食べる日常という観点から まさに今オフィスで働く 生の日本人を目の前に取り出し
ほぼ三人の主人公にそれぞれ感情移入させ ぐんぐん引き込む面白い読み物だった。自分が生きている今の日本の娑婆と人間の心のひだの奥までえぐり取って なるほどねと・・・。
この作家は全く知らなかったが 心理表現にたけた手練れのプロだ。
読み終わってしばらくして もしかして夏目漱石の「吾輩は猫である」が世に出て迎えられた時と同じじゃね?と思った。
高瀬隼子『おいしいごはんが食べられますように』書評