阿智胡地亭のShot日乗

日乗は日記。日々の生活と世間の事象記録や写真や書き物などなんでも。
  1942年生まれが東京都江戸川区から。

昭和50年代の海外あちこち記   その13     いつかもう一度行きたい中国の街、天津と上海

2023年02月22日 | 昭和50年代の海外あちこち記

1983年(昭和58年)7月頃の体験です。


1)見られる

天津新港の郊外の港湾局の分局に行きました。

打ち合せが終わって、同行の人が図面などを片づけているので先に門の外に一人で出ました。丁度5時ごろだったのでしょう。

通勤帰りの人達の道一杯に広がった自転車の群れが、夕陽の中を長い影を引いて、大河のように一方向に向かって流れて行きます。

その人達が全員向こうの方から一点を、見つめながらペダルを漕ぎます。通りすぎても首を後ろに向けて、全員が見続けます。

はっと気がつくと、その対象はボクでした。見ているはずが、見られる対象になりほんの5、6分ですが、7、8百人の人が無言で

自分を見つめる経験は生まれてはじめてで、その後もありません。今日は珍しいものを見た?背広姿が珍しい?外国人だから?

どれも当たりのような気がします。他の国でもこんな経験はありません。あの無遠慮な視線はやはり中国人のものでしょう。

 2) お役所の接待所の宴会で。 
「鉄飯碗」とは

もう何処の街か忘れましたが地方都市で、一行が夜、お役所の接待所の宴会に招かれました。次から次へと珍しい料理が出てきます。

メインテーブルは一人置きに招宴側の人が座り、料理を取り分けてくれます。これはおいしい自分でも取ろうと思った時は、

その大きな皿はもうボーイが下げていきます。何十皿と出て、次から次へと新しい大きな皿が来て殆どの料理がちょっと手を

つけただけの状態で、どんどんどん下げられていきました。人数ではとても食べきれない量が出ました。この時の料理がまた、

中国で食べた食事では初めてのメニューが多く、一番おいしく、もっと食べたいと思ううちに終わりました。

途中手洗いに立った時、たまたま隣の部屋のドアーが開き、80人くらいの宴会をやっているのが見えました。

その部屋に我々の部屋からボーイが皿を次々持ち込んでいました。後で商社の人に聞くと、役所全員の人間が集まり、

日本から客人が来たのでその接待ということで費用を落とし、OBも呼んでみんなで飲み食いしているとのこと。

我々は体のいい名目に使われているんだと。その後、こういう事を中国語で「
鉄飯碗」といい、どれだけ食べても尽きない意味だと知りました。

日本語の「親方日の丸」と同じ意味で、まあ言えば最近の外務省のプール金での仲間内の飲み食いと同じ事でした。

中国には民間会社はなく、全員が言ってみれば役所の職員ですから、いくら北京の中央政府が綱紀粛正を叫んでも馬耳東風で、

こういう事が全土に日夜蔓延していたようです。それにしてもあの宴会の規模の盛大さは凄かった。やはりスケールが違う。

3) 上海の西洋レストラン。

上海に行った時それまで、2ヶ月も中国をうろうろしていたので中華めしにも飽きて、上海には戦前からの西洋レストランがあると

聞いたので行きました。確か「赤煉瓦亭」とかいう名前だったと思う。古い洋館でした。清潔でしたが、内装は塗装が剥げ、

カーテンも時代物でした。客はほんの数組でした。フルコースを頼みました。期待に胸を弾ませて。

最初のスープで皆こらあかんと目が言いました。第2次世界大戦が終わって、西洋人が出て行き37、8年経っており、

調味料の輸入も途絶え何とか形は西洋料理でしたが、味付けが中華風と言うか何と言うか得体の知れない食べ物でした。

最後のアイスクリームだけは抜群で皆ほっとして店を出ました。当時ほそぼそと戦前からの一族が店を続けていると聞いた

ように思いますが、今近代都市に大発展をした上海であの店がどうなったか、もう一度訪ねてみたい気がします。

ところで当時から「上海牌」上海ブランドは、中国各地製の電気品や衣服より高級イメージが、出来上がっており、

他の都市と違う扱いでした。また、今の朱首相など中央政府の幹部は、上海出身者が固めており北京という行政都市をも上海閥が牛耳っているようです。

(本稿は2000年初め頃作成)

画像は全てネットで1980年代の天津・上海として検索したもので阿智胡地亭が出張当時撮影した写真ではありません

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福田和代著「オーディンの鴉」を読みました。

2023年02月22日 | 乱読は楽しい
2010年12月06日(月)「阿智胡地亭の非日乗」掲載

内容(「BOOK」データベースより)

「私は恐ろしい」。不可解な遺書を残し、閣僚入り間近の国会議員・矢島誠一は、東京地検による家宅捜索を前に謎の自殺を遂げた。

真相を追う特捜部の湯浅と安見は、ネット上に溢れる矢島を誹謗する写真や動画、そして、決して他人が知り得るはずのない、彼の詳細な行動の記録を目にする。

匿名の人間たちによる底知れぬ悪意に戦慄を覚える二人だが、ついに彼らにも差出人不明の封筒が届きはじめる…。

スケールの大きなクライシスノベルを得意とする作者が挑んだインターネット社会の“闇”。

♪知らないうちにネット上に自分や自宅や家族の写真が流され、住所も電話番号も全部ネット上で知られる。

キャシュカードの購買記録も、自動販売機の上の防犯カメラで撮られた自分の動画もすべて流れる。

その対象になった国会議員の自殺からストーリーが始まる。

東京地検の特捜検事が主役で、YouTube、Twitter、2チャンネルなど現在のネットツールを道具に使ったこの情報犯罪小説は、

読み進むにつれなんとはない恐怖で背筋が寒くなってくる。

情報を制する者は社会を制するというフレーズが、何度も胸の中で反芻する。

これはフィクションなのだが、もしかするともう実際に個人は丸裸になっているのかも知れないと思ってしまった。

面白かった。久しぶりに読んでる小説がまだまだ終わって欲しくないと思える筆力の作家に出会った。

最終段階でのネット技術を駆使した逆転どんでん返しは胸がすく。またところどころに切れ味のいい短剣のような文章も挟まっていてドキッとする。

昨年から今年の初めに雑誌に連載されたこの小説は、海上保安官のYouTube動画流出事件や最近のWikiLeaksの情報流出を予告していたような内容だ。

また一人すぐれもののエンターテイメント作家が誕生したことを喜ぼう。

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