河野龍太郎 BNPパリバ証券 経済調査本部長
一部引用・・・
そもそも中国は2000年代に飛躍的に軍事力、経済力を高め、日本だけでなく東南アジア諸国との間でも領土に関し緊張が高まることが増えていた。
背景には、リーマンショック後の世界同時不況からいち早く脱したという自負もあろう。
また、国内では、高成長の継続によって生活水準の向上した人々の間で民主主義意識が高まると同時に、ナショナリズムも目覚めた。
当局の統制が及びにくいネット民主主義も広がっている。一方、成長から取り残された人々の間では格差拡大に対する不満が高まっている。
これらはいずれも中国共産党の権力基盤を弱める要因だが、領土問題で弱腰と受け止められる対応は、軍や保守派だけでなく、
一般国民からもより強い批判を受ける恐れがある。
さらに、より長い目で見ると、鄧小平氏の死後、共産党革命世代が不在となり、以前ほどトップの政治的威光が通用しなくなったことも影響している。
胡錦濤氏は革命世代の鄧小平氏が選んだという意味ではまだ正当性を保っているが、習近平氏にはそうした正当性もないため、
これまで以上に民意や軍のコントロールを含め共産党支配は難しくなっている。
振り返って見ると、明治憲法下の日本でも、政治・軍事両面を掌握していた維新の元勲らが死去した後、民主主義が深化する中で、
内閣は法的に分立する軍部をコントロールできなくなっていった。戦争に突き進んだ1920―30年代の日本と現代の中国との間に不穏な共通点が見られる。
一方、日本政府も外交上のミスを犯している。そもそも民主党政権誕生後、普天間問題を巡って軍事同盟国である米国との関係に揺らぎが生じ、
中国のみならず、韓国、ロシアとの間でも領土を巡って関係が悪化する傾向が見られる。
また、今回の尖閣諸島問題の対応もまずかった。今年は、中国では10年ぶりに政治指導者が交代する大事な分岐点だ。
薄煕来問題を見ても分かるように、政治的に非常に不安定な状態に陥っており、外交には細心の注意を要する時期である。
政治的な空白を衝いたとも受け止められかねないタイミングで、しかも81年前に満州事変の発端となった
柳条湖事件(9月18日)直前の9月11日に国有化を決めれば、中国指導部の神経を逆撫ですることは火を見るよりも明らかだったはずだ。
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