孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ロシア  進む“メドベージェフ独自路線”???

2010-10-05 17:52:31 | 国際情勢

(2年前の写真 手をつなぐのはむこうの風習なのでしょう “”より By mima11vladimir
http://www.flickr.com/photos/mima_vladimi_dev/2877424690/ )

【モスクワ市長解任にプーチン激怒?】
北朝鮮のような国だけでなく、どんな国でも権力内部の争いは外部の者にはなかなかわからないものです。
ロシアの双頭体制、メドベージェフ大統領とプーチン首相の関係も、いろんな“噂”が飛び交いますが、真相は・・・?

先日、メドベージェフ大統領は地方首長の大物であるモスクワ市長を解任しました。
****露大統領がモスクワ市長解任 在任18年 政局波乱含み*****
ロシアのメドベージェフ大統領は、首都モスクワの市長を18年間務めたルシコフ氏(74)を更迭する大統領令に署名した。大統領府が28日、発表した。在任期間が長い地方首長の中でも“重量級”のルシコフ氏の更迭で、2012年の大統領選を前に政権が進めてきた地方政界の再編は山場を越えた形だ。半面、中傷合戦の末の解任劇は政争の火種としてくすぶる可能性もあり、政局は当面、波乱含みの情勢が続きそうだ。(中略)
・・・・そのルシコフ氏への逆風が強まったのは今年8月。森林・泥炭火災が深刻化するなか、海外で休暇を取った同氏について、大統領府当局者が「早く帰国しなかったのは残念だ」と批判したのが発端だった。
9月には政府系、国営の3大テレビ局が夫人の蓄財問題やモスクワの交通渋滞などを挙げ、こぞってルシコフ市長を攻撃する番組を流した。大統領府の意向を反映した動きとの観測が強く、市長は名誉棄損罪で各局を提訴、全面対決する姿勢を示していた。メドベージェフ大統領にすれば解任に踏み切ったことで、権力の失墜を免れた形となる。

来年夏の任期切れを待たずにルシコフ氏を解任した背景として、週刊誌ロシア版ニューズウィークは「権力側が集票組織を作り直すのなら、いま市長を交代させないと大統領選に間に合わない」などとする政界関係者の談話を掲載した。
ロシアの選挙戦では、メディアへの候補者の露出度や組織票固めなどで、各地の行政府の意向が色濃く反映される傾向がある。政権が今年、1990年代から居座る地方首長を相次いで退任させているのも、“選挙の季節”の到来に備えて中央の意向に忠実な首長を据え直す狙いからだとされる。

プーチン首相は28日夕、ルシコフ氏の功績を評価しつつも、「大統領の市長解任は、権限の範囲内で法に従った行動だ」と述べて、大統領を支持する意向を示唆した。政治評論家のペトロフ氏は「ルシコフ氏は選挙での集票力を盾に政権を脅しにかかっていた。現政権全体に悪影響を及ぼす恐れがあった」との見方を示した。【9月29日 産経】
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上記記事では、プーチン首相はメドベージェフ大統領のルシコフ氏解任を支持したとありますが、【10月6日号 Newsweek日本版】は、「プーチンはルシコフと親しいわけでもないのに、メドベージェフの独断的な攻撃に激怒しているという。ロシア国内では、そんな反応をプーチンが見せるのは、12年の大統領選でメドベージェフが権力の座を明け渡さず、自ら再選を目指して立候補しようとしているからではないかとみる向きも多い。」と“プーチンとメドベージェフがついに敵対?”という見出し(?付きですが)で報じています。

【WTO加盟とNATO接近】
一方、ロシアは念願のWTO加盟についてアメリカの了解を取り付け、また、NATOとの協調路線も打ち出しています。

****ロシアが来年にもWTO加盟へ 米との交渉が決着****
ロシアのメドベージェフ大統領とオバマ米大統領が1日、電話で協議し、ロシアの世界貿易機関(WTO)加盟についての二国間交渉が終了したことを確認した。ロシアはWTO加盟国との交渉を17年続けてきたが、これを受け、来年にも加盟が実現する見通しとなった。
ロシア大統領府のチマコワ報道官が明らかにした。WTO加盟には、加盟作業部会に参加したすべての国との間で二国間の合意を得る必要がある。ロシアの場合、米国との交渉が最も難航していた。(中略)
オバマ政権発足後、両国は関係の「リセット」を進めており、6月にワシントンで会談した際に9月末までの交渉完了を目指すことで合意していた。
また、ロシア大統領府によると、米ロ首脳はプラハで4月に署名した新戦略兵器削減条約(新START)の同時批准についても協議した。【10月2日 朝日】
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****ロシア:NATOに接近 軍近代化狙い*****
08年のグルジア紛争で欧米諸国と対立したロシアが最近、北大西洋条約機構(NATO)との関係拡大に転じようとしている。自国製兵器や軍装備の技術的な立ち遅れが著しいため、西側の技術を取り入れて軍の近代化を図ろうというものだ。しかし、自国の軍需産業への配慮からシリアへの武器輸出などは続けており、欧米諸国からの批判も呼んでいる。
グルシュコ露国防次官は30日、リスボンで11月に開かれるNATO首脳会議について「(NATOとの)関係は発展しており、出席を妨げる大きな障害はない」と述べ、メドベージェフ大統領が出席することを示唆した。
ロシアとNATOは9月22日に開いた外相会合でもアフガニスタン情勢、麻薬やテロ対策を協議した。NATOはロシアに、統一したミサイル防衛(MD)システムの創設計画を提案しており、両者の接近が鮮明になっている。

ロシアは米国との軍事分野の関係改善も進める。15日の米露国防相会談では、軍事交流の実施に関する合意文書が署名され、国防相会談を毎年開催することが合意された。米露両軍がそれぞれ自国内で進める軍と国防省の人員削減計画を促進することも確認した。(中略)
メドベージェフ大統領は9月22日、イラン向けの対空ミサイルシステム「S300」の売却を禁止する法案に署名した。国連安保理の対イラン制裁に従ったものだが、軍事面での欧米諸国との関係改善に資するという側面もありそうだ。(後略) 【9月30日 毎日】
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ロシアがNATO・アメリカとの関係強化に踏み出すのは、グルジア紛争でロシア軍の兵器や装備の後進性が露呈されたためとのことです。

【ロシア改革のメドベージェフ構想】
こうしたWTO加盟重視、NATOへの接近は、前述のモスクワ市長解任と合わせて、“メドベージェフ路線”と見る向きもあります。
****もうプーチンの言いなりにはならない!*****
12年の大統領選に向け独自の政党や政策を動かし始めたメドベージェフ。プーチン派だった政治家の多くも支持に回り始めた

先週、有力政治家のユーリ・ルシコフをモスクワ市長から解任する大統領令を発令したロシアのメドベージェフ大統領。この出来事はプーチン首相からのメドベージェフの独り立ちと、12年の大統領選の実質的なスタートを象徴するものと考えていい。
大統領を「決める」権限は国民にはない。大統領候補を決定するような重要な話し合いを進めるのは、クレムリンの奥にいるプーチンの側近たち。メドベージェフはこの中ではまだ下っ端だ。
だがプーチンの庇護を受けている若いメドベージェフが力を付け始めた兆候がある。何しろ、かつてプーチンを支持していた有力者たちがメドベージェフの再選支持に回りつつあるのだ。

エリート層がメドベージェフを支持するようになった兆しが見られたのは昨年のこと。メドベージェフがロシアの近代化について画期的な演説を行った後、「前進、ロシア!」という政党が結成されたときだった。(中略)
「前進、ロシア!」が政策の下敷きにしているのはメドベージェフの構想だ。経済成長の原動力として石油とガス以外の産業を発展させ、インフラや技術革新、投資を推進すべきというものだ。
「改革を進めなければ、ロシアは10年後、今の国境を維持できていないかもしれない」と、同党のニキータ・クリチェフスキー副議長は言う。

旧ソ連3カ国の関税同盟よりWTO加盟を重視
・・・・プーチンを支持していた人々が先を争ってメドベージェフ支持に回り始めるなか、ロシアの政治家やマスコミ関係者の間でメドベージェフ人気に火が付く可能性もありそうだ。
メドベージェフは独自の政策を立案しているが、そのいくつかはプーチンの公式見解とは異なっている。例えばロシアとベラルーシ、カザフスタンの3カ国の関税同盟を拡大させるというプーチンの計画に、メドベージェフは反対しているようだ。むしろWTO(世界貿易機関)加盟を重視すべきだと考えている。
その一方でメドベージェフはアメリカやNATOとの緊張緩和を主導し、プーチン大統領時代の方針を覆してイランへの地対空ミサイル売却を凍結。プーチンが支持していたモスクワ北部のハイウエー建設も世論に従って中止した。
モスクワのルシコフ市長を自らの意思で解任したのは、エリート層の有力者が政府に刃向かうなら対決も辞さないというメドベージェフの態度表明でもある。

メドベージェフは、今もロシアの双頭体制の「弱いほう」だ。しかし多くの政治家がメドベージェフ支持に回っていることを考えれば、名実共にプーチンの後継者になるというメドベージェフの望みが実現する可能性も出てきた。【10月4日 Newsweek】
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【2人は「あなたの健康に」と言ってミルクで乾杯】
両者の関係は・・・よくわかりません。
表向きには双頭体制を誇示するため、この二人、しばしば“気持ち悪い”ぐらいに親密なツーショット写真・映像を公開しています。

1日にもTVで、メドベージェフ統領とプーチン首相がビジネスランチでミルクを手に乾杯する姿が放映されています。
****ロシア2トップ、新鮮なミルク片手に乾杯!****
映像では、プーチン首相がモスクワ郊外ゴルキの大統領別邸で、メドベージェフ大統領に巨大なライ麦パン、それにミルクとケフィア(ヨーグルトに似た伝統食品)を勧めている。
首相が「思いっきり食べよう」と言うと、メドベージェフ大統領は「(首相が)手ぶらで来なかったとは素晴らしい」と返答し、息のあったようすを見せた。そして2人は「あなたの健康に」と言ってミルクで乾杯した。
プーチン首相はこの日の午前中、モスクワの農業関連産業の展示会を訪れていた。【10月3日 AFP】
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“ミルクとケフィア”というのは、ロシアで社会問題となっているアルコール依存症対策のメッセージもあるようです。

次期大統領選挙はプーチン再登板というのが通説ですが、番狂わせもあるのでしょうか?

コメント
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