
(中国・新疆ウイグル自治区のレアアース鉱山 こうした露天掘りと海底資源ではコスト的には比較にならないでしょう。“flickr”より By opalpeterliu http://www.flickr.com/photos/peteropaliu/5053727771/)
ただ、中国でも違法な零細採掘業者の乱開発による環境破壊が深刻化しているため、環境保護のため閉鎖する鉱山も多いとか。ただし、それは表向きの理由で、共産党系企業による鉱山の利益確保が目的とも(「馬上行動 山田冬樹の部屋」http://d.hatena.ne.jp/yamada-home/20100804/1280917203 より)
【「中国は国際規範にのっとった措置をとる」】
先の尖閣諸島沖中国漁船衝突事件では、大部分を中国輸入に依存するレアアース輸出禁止(中国は公式には認めていませんが)が、事件の進展を方向づけるカギとして注目を集めました。
すでに事件以前の4月にも、中国側はレアアース出荷の4割削減を日本へ通告しており、早急な対策が必要な問題ではありました。
****レアアース輸出制限「環境保護が目的」 中国、禁輸否定****
中国商務省の姚堅報道官は15日の定例会見で、レアアース(希土類)の日本への輸出が滞っている問題について「中国は(どの国にも)禁輸しない。世界貿易機関(WTO)などの国際規範にのっとった措置をとる」と述べた。輸出制限の目的については「環境保護が最大の目的だ。中国は管理や加工技術の水準が低く、環境問題が起きている。日本とも協力できる」と説明した。【10月15日 朝日】
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環境保護以外に、密輸対策としての通関厳格化という主張もあるようです。
****「レアアースの密輸が横行」 中国で報道****
中国でレアアース(希土類)の密輸が横行している――。厳格な通関検査は「密輸対策」ともとれる記事を中国メディアが相次いで伝えている。尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件以降、日本への輸出が滞っている問題で、日本は通関手続きの改善を求めている。
「毎年2万トン以上が密輸されている」。雑誌『瞭望』(10月11日号)が政府や企業関係者の話として報じた。
9日付中国経営報電子版によると、2009年は正常な輸出枠が5万トンで、密輸は2万トンだったという。レアアースの国際価格が上昇するなかで、中国政府は環境保護などを理由に輸出を制限。輸出枠を減らされた企業が密輸に走っている、と指摘した。
また、第一財経日報電子版も9月末、「米国への密輸が最も多い」とする企業関係者の話を伝えた。
尖閣事件後に発生した日本へのレアアースの「禁輸」問題については、「中国が資源を外交のかけひきに使った」として欧米でも批判が出た。相次ぐ「密輸報道」は、国際社会の疑念や日本が問題視する通関の厳格化に対する「反論」ともとれそうだ。【10月12日 朝日】
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具体的な密輸方法としては、鉄などとの合金にして輸出し、輸入国で分離する方法があるとか。
****<レアアース>急増する密輸出=合金に加工して政府規制を回避―中国*****
2010年10月9日、中国経営報は記事「中国のレアアース、密輸出は正規ルートの40%に相当か=迂回輸出規制へ」を掲載した。以下はその抄訳。
2009年、正規ルートで輸出されたレアアースは5万トン。一方で密輸出もその40%にあたる2万トン以上に達したとあるレアアース業界関係者は語った。世界のレアアース産出量の90%以上は中国が占めている。中国政府は国際的な発言権をさらに高めるため、2006年以来輸出規制を実施、正規ルートでの輸出量に制限をかけてきた。
中国には「上に政策あれば、下に対策あり」という言葉もあるが、まさにその言葉通り。密輸という形で規制が突破されている。輸出時に内容物の申請をごまかす、レンガや大理石として輸出するという形式もあるが、このほかにレアアース合金として輸出するケースもある。
レアアース輸出規制は原料にのみ課されるもので、レアアースを利用した製品の輸出には一切の規制がない。鉄との合金という形式で輸出し、海外で再び分離することによって実質的な原料輸出が行われている。すでに中国政府はこうした密輸出について注目しており、新たな規制が検討されているという。【10月10日 Record China】
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【中国以外での生産も 海中ロボットも一役?】
レアアースという言葉、以前は馴染みがなかったのですが、元素周期表の「希土類元素」のことだったのですね。
「希土類元素」なら、学生時代に周期表で目にした覚えはあります。(中身は当時も今もよくわかりませんが)
【ウィキペディア】によれば、ハイブリッドカーや電気自動車用の高出力モーターの磁石など、工業的には蓄電池や発光ダイオード、磁石などのエレクトロニクス製品の性能向上に必要不可欠な材料ということで、中国が世界の産出量の97%以上を占めています。
ということは、中国依存は日本だけの問題ではないことになります。
埋蔵自体は、地域的偏りはあるものの中国に限定されている訳ではないようで、現在の中国依存解消もあってか、11年にはカザフスタン、12年にはベトナム、オーストラリア、南アフリカ、アメリカ、14年にはカナダ、グリーンランド、オーストラリアなどで生産が開始される予定です。【ウィキペディアより】
ここ数年で供給状況は大きく変化するのではないでしょうか。
日本国内のマンガン鉱床や、火力発電所等の集塵機で回収される石炭や石油の灰にも含まれているとのことですので、その気になれば(そしてコスト的に見合うなら)、いろいろ調達方法はあるようです。
海底資源も着目されています。
****海底のレアアース探査、ロボ開発加速へ 中止から一転*****
海底に眠るレアアース(希土類)やレアメタル(希少金属)などの資源を探る海中ロボットの開発に、文部科学省が再着手する。高木義明文科相は「こういう機会にスピードをあげたい」としており、今国会の補正予算案に開発費を盛り込む考えを示した。昨年の政権交代以降の予算見直しで開発が中止されていたが、中国からの事実上の輸入規制でレアアースが注目され、一転、加速される見通しだ。
開発するのは海中を自動的に潜航、海底地形のデータを手がかりにして海底下の構造を調べるロボットで、10億円の開発費が見込まれている。来年度の概算要求で、船から遠隔操作する別のタイプのロボットと合わせ、3機分の予算を「元気な日本復活特別枠」として盛り込んだが、その一部を前倒しする。2013年度の調査開始を目指している。
伊豆・小笠原諸島や沖縄周辺の海域には、ニッケルや白金、コバルトといったレアメタルを含んだ海底鉱床が多数あるとみられ、レアアースが含まれる鉱床の存在が期待されている。【10月15日 朝日】
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ただ、海底資源となると、現実問題としてはコスト的にどうでしょうか?
いささか、今回の問題に便乗して予算獲得した・・・という感もありますが、レアアースに限らず海底資源探索、あるいは先端海洋技術開発という面では意義あることでしょう。もちろん予算との兼ね合いはありますが。