(ムガベ大統領夫妻 “”より By Pan-African News Wire File Photos
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【先行きが懸念される連立政権】
アフリカ南部ジンバブエではムガベ大統領による独裁政治が続き、無理な黒人化政策もあって経済が崩壊し歴史的なハイパーインフレーションに陥りました。
4月4日ブログ「ジンバブエ 歴史的ハイパーインフレは終息、今も続く政治的緊張・暴力への不安」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20100404)でも取り上げたように、インフレの方は終息しましたが、問題の根幹をなす政治状況の方は依然として問題含みです。
08年3月末の大統領選では、第1回投票で野党のツァンギライ議長がムガベ大統領を破ったものの、その結果が発表されないままムガベ大統領側からの再集計が指示され、過半数に達していなかったとして決選投票実施が強行されました。そして政権側の激しい暴力行為によって、ツァンギライ議長は決選投票辞退を余儀なくされ、ムガベ大統領が再選されるという、民主的選挙とはかけはなれたものでした。
その後の政治的混乱を経て、大統領選挙を争ったツァンギライ議長が率いる野党、「民主変革運動」(MDC)と、ムガベ大統領率いる与党「ジンバブエ・アフリカ民族同盟愛国戦線」との連立政が09年2月に樹立され、ツァンギライ議長が首相に就任してムガベ大統領との権力分担が行われることになりました。
しかし、ムガベ大統領(あるいは、彼の政治権力から利益を受けてきた支持層)による専横が止まないという報道を、相変わらず目にします。
****ムガベの専横と暴力で連立崩壊の危機****
やっと経済危機を乗り切ったと思ったら、独裁者がまた暴れ始めた
ジンバブエのツァンギライ首相は最近、ムガベ大統領を公然と非難。自ら率いる民主変革運動(MDC)は政府上層部の新人事を承認しないことを明らかにした。
ムガベが中央銀行総裁や最高裁判事などの重要な人事を何の相談もなく決定したことに、ツァンギライは反発した。連立政権にはとどまるものの、MDCは今回の人事を認めないと語っている。
既にぐらついているジンバブエの連立政権はツァンギライの決意表明によって、さらなる打撃を受けた。ムガベとその一派に対する欧米諸国の姿勢は一層、硬化するだろう。
昨年2月に連立政権が誕生して以来、ツァンギライはムガベとの協調を望み、衝突を避けてきた。だがその一方でムガベの強権的な姿勢には不満を募らせていた。人権団体によると、MDCの支持者が暴行を受けたり、無実なのに逮捕されたりする事件が続いている。
先月には、ムガベ派が新憲法の説明会を襲撃し、ツァンギライの支持者1人が殺害された。新憲法の起草はムガベ派の妨害で混乱に陥っている。
ジンバブエでは来年5月に議会選挙が実施される予定。ムガベがツァンギライ支持者に再び激しい弾圧を加えるのではないかとの懸念が強まっている。【10月21日 Newsweek】
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【選挙での敗北は認めない】
ジンバブエは今でも国際的に制裁を受けて改革を迫られていますが、ムガベ大統領とそのグループには、改革を行う意思はなさそうです。
****外交官にジンバブエ国営メディアの罠*****
■御用メディアの手玉に取られ、独裁者ムガベの片棒を担がされて地団駄を踏む欧米外交官たち
ジンバブエの国営メディアは、外国からの新任大使がロバート・ムガベ大統領に初めて挨拶をする時から罠を仕掛けて待ち構えている。式典が終わると、記者たちは「ジンバブエに対する制裁は解除されるべきか?」などと、新任大使がいちばん答えにくい質問で襲い掛かる。外交儀礼的に楽観的な答えをすると、国営メディアはムガベ政権に対する紛れもない支持だと煽る。
外交官たちは着任後最初の数週間、自分の発言の真意を「明らかに」するために奔走することになる。もちろん彼らは「制裁は解除されるべきだ」などとは言わないし、政権内の3党の合意が満たされれば「自然に制裁はなくなるはずだ」と言うだけだ。だが、国営メディアはそんな違いにかまけてくれない。(中略)
どこを見ても意味ある改革の証拠は乏しい。中立の人権委員会も、09年以前の出来事を調査することはできないことになっている。08年の大統領選挙時には役人自ら暴力行為を働いたので、彼らがいちばん胸をなでおろしている。ムガベ大統領に仕える諜報担当者は00年に裁判で、MDCに属する2人の活動家を焼き殺したと指摘されたが、今も自由の身だ。
■選挙はしても敗北は認めない
ジンバブエに来る多くの外交官はMDC指導者らに明るい印象を受けるが、後にその楽観的な見方を捨て去ることになる。反対にアメリカの特使たちはずっと懐疑的なままだ。
9月23日、訪米した超党派のジンバブエ代表団と会議を行った後、アフリカ担当の米国務次官補ジョニー・カーソンとアフリカ担当局長のミシェル・ギャビンは、草の根団体「ウィメン・オブ・ジンバブエ・アライズ」に対する最近の嫌がらせや、ムガベ支持者が憲法改正に関する討論集会を暴力で妨害したことを指摘して、「最近の政治的・人権的環境はまだ問題が多い」と語った。
制裁解除を求めるジンバブエの交渉担当者からの圧力対して、「私たちの制裁は定期的な見直し課程にある」と米高官は答えた。「ただ人権侵害や土地の強制収用、政治プロセスに参加する人々に対する脅迫が続く限り、制裁が解除される可能性はないだろう」
ジンバブエの代表団がワシントンに到着する1週間前、ムガベ政権で最も影響力のある閣僚の1人、ディディムス・ムタサは、与党のジンバブエ・アフリカ民族同盟愛国戦線はMDCのモーガン・ツァンギライ首相に国を統治させることは決してないと語った。「総選挙を行って彼がムガベに勝利するようなことがあっても、ジンバブエ・アフリカ民族同盟愛国戦線とジンバブエ国民はそれを受け入れない」と、ムタサは支持者に対して語った。
活動家たちは、こんな状態で楽観的になるのは難しいと指摘している。【10月27日 Newsweek】
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「総選挙を行って彼がムガベに勝利するようなことがあっても、(与党)ジンバブエ・アフリカ民族同盟愛国戦線とジンバブエ国民はそれを受け入れない」と公言されてしまうと、今後の展望も開けません。
【経済情勢を無視した浪費】
一方、こんな話題も。
****ジンバブエ大統領、リアリティー番組準優勝者に小切手30万ドル*****
アフリカのリアリティー番組「ビッグブラザー(Big Brother)」で準優勝したジンバブエ代表の男性が、大会賞金よりも多額の賞金を、ジンバブエのロバート・ムガベ大統領から受け取った。国営メディアが伝えた。
Munyaradzi Chidzongaさん(24)は、ナイジェリアからの参加者に敗れたものの準優勝となった。この番組の優勝賞金は、20万ドル(約1600万円)だった。
しかし、20日になって、今度はムガベ大統領から30万ドル(約2400万円)の小切手を受け取ったのだという。
この資金を集めたのは、ジンバブエ首都ハラレの実業家でムガベ大統領の親戚のPhillip Chiyangwa氏。番組の審査が不公平だと思い、資金集めに立ち上がったのだという。
ムガベ大統領が実際にこの番組を見ていたかどうかはわからないが、ムガベ氏は「参加者の中で最も若く見えたので、君が勝ち残るとは思ってもいなかったよ」とMunyaradziさんに述べ、小切手を手渡したという。
ムガベ氏は「ナイジェリア対ジンバブエの戦いだった。ナイジェリアはとても大きな国だから、君よりも優先された。でもわたしたちから見れば、君たち2人ともが優勝者だ」と語った。
しかし、教員の月給150ドル(約1万2000円)すら支払うのが大変なジンバブエの経済事情の中で、Munyaradziさんに大金を与えるのは優先順位がおかしいとの批判の声もあがっている。【10月24日 AFP】
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経済破綻状態のときも、ムガベ大統領の家族が外国で豪遊していたという批判もありました。
ムガベ大統領を支持する者も先の大統領選挙でも相当数いた訳ですので、日本・欧米的価値観から外部の限られた情報だけで断罪するのは軽率かもしれませんが、ムガベ大統領らがジンバブエをどこに導こうとしているのか、国の統治をどのように考えているのか、理解に苦しむところです。
ムガベ支持者にとっては、かつてアフリカを植民地として収奪し、今なお自分たちの価値観からアフリカを蔑視する欧米に抵抗する英雄・・・ということなのでしょうか。