
(9月14日 デラウェア州予備選に勝利したオドネル候補 “flickr”より By wojiuxihuan
http://www.flickr.com/photos/47865802@N03/4994079163/ )
【共和党大躍進の予測】
11月2日に投開票されるアメリカ中間選挙では下院の全435議席、上院の37議席が改選となるほか、30州以上で知事選が行われます。
ほぼすべてのメディアが報じているように、10%近い失業率と景気低迷が続く経済情勢、更に「変革」を掲げたオバマ大統領への若者の期待の反動もあって、民主党への厳しい評価が強まっており、共和党が大きく勝利するとみられています。
****米中間選挙では共和党優勢との見方、下院は過半数奪回も*****
11月2日の中間選挙を1週間後に控え、米共和党は、オバマ大統領の支持率低下を追い風に、下院では過半数奪回、上院でも大躍進が予想されている。
共和党が勝利すれば、オバマ政権が打撃を受けるのは必至で、ペロシ下院議長が議長職を失う可能性もある。
下院(435議席)では、民主党は90議席以上の維持が危ぶまれており、中立的なアナリストは、共和党が少なくとも下院の過半数奪回に必要な民主党の39議席を獲得すると予想している。
また共和党は上院(100議席)でも大きく議席を伸ばす見通し。ただ過半数を抑えるのに必要な民主党の10議席獲得は難しい状況で、共和党が上院で過半数議席を獲得するためには、激戦区をほぼすべて制する必要がある。ただ不可能ではないとみられている。(中略)
37州の知事選でも、共和党候補がかなりの州で勝利するとみられており、来年行われる10年ごとの選挙区の区割り見直し作業で、共和党が優位な立場に立つ可能性がある。
市場は選挙結果についてほぼ織り込み済みで、予想外の展開とならない限り、11月3日の株価が大きく動くことはないとみられている。【10月27日 ロイター】
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【「いくら頼んでも共和党は私を助けようとしない」】
こうした共和党躍進の情勢は以前から言われていることですが、今回選挙で特徴的な動きでもある、共和党内でベテラン議員を引き摺り下ろす形となった反オバマの急先鋒、保守系草の根運動「ティーパーティー」の勢いは、さすがにその“無茶な”主張から、かげりをみせているようです。
なお、「ティーパーティー」の特徴については、9月26日ブログ「アメリカ 保守系草の根運動「ティーパーティー」とサラ・ペイリン」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20100926)でも取り上げたところです。
“ティーパーティーの特徴は、そのアナーキーな性格だ。彼らはあらゆる権威に敵意を示し、いつもけんか腰の言動を取り、自分たちが非難する政策に対して建設的な代替案を示すことはない。”
“彼らは資本主義と憲法が絶対的だった時代を懐かしむ(言うまでもないが、そんな時代があったことはない)。そしてやたらと「名誉を回復する」とか「アメリカのルーツに立ち返る」とか「われわれの国を取り戻す」と叫ぶ。”
“過去へのノスタルジーを別にすれば、ティーパーティーに最も特徴的なのは怒りだ。
自分たちが苦労しているのは、自分たちよりも社会階層が上か下の誰かのせいだ。リベラルなメディアに職業政治家、それに「いわゆる専門家」やウォール街の金融機関などのエリート。彼らは中流納税者を犠牲にして、貧困者やマイノリティー、移民(または金持ち)の便宜を図っている・・・。” )【9月29日号 Newsweek日本版より】
****米中間選挙:失言連発の「魔女」勢いに陰り******
「私は魔女ではありません」。米中間選挙で米東部デラウェア州から上院議員を目指す共和党新人候補、クリスティン・オドネル氏(41)の選挙CMが全米で話題になっている。高校時代に魔術に凝ったことが話題になり、それを逆手に取った。保守系草の根運動「ティーパーティー」(茶会運動)の推薦を受けた上院選の共和党新人候補9人の中では注目度は抜群だ。しかし、普通の女性をアピールして既成政治への反発世論に乗った勢いは失速しつつある。【ウィルミントン(デラウェア州)で小松健一】
「いくら頼んでも共和党は私を助けようとしない。民主党候補と差が開くばかりじゃないの」。オドネル氏は17日、ABCテレビのインタビューで不満をぶつけた。
オドネル氏はテレビコメンテーターとして「進化論はでっち上げの神話」と主張して進化論を教える教育省解体を訴えたり、「神の声を聞いた」などの奇抜な発言が目立ち、これまで上院選に2回出馬したが、泡沫(ほうまつ)候補扱いだった。
今回の上院選はバイデン副大統領がホワイトハウス入りする前に36年間守った議席が対象。共和党執行部は元州知事のベテランの現職下院議員をくら替えさせた。だが9月の共和党予備選でオドネル氏にまさかの敗北を喫した。
「州外の茶会運動が多額の選挙資金を投入して『オドネル旋風』を巻き起こした。茶会運動が遠隔操作した無人攻撃機によって共和党の意中の候補が駆逐されたようなものだ」。デラウェア大政治コミュニケーションセンターのベグライター所長は指摘する。
しかも討論会を重ねるごとに失言が飛び出す。CNNテレビが全米中継した13日の討論会では、質問に答えられず「明日、ホームページに掲載する」と答え、18日には法律を学ぶ学生を前に「憲法は宗教と政府の分離を規定しているの?」と聞き返して、場内から失笑とため息が漏れた。
各種世論調査で、オドネル氏は民主党のクリス・クーンズ候補(47)に20ポイント近い差を付けられている。オドネル氏の支援集会に参加した女性のレイ・シュテイボーズさん(60)は「彼女が人工妊娠中絶反対だから支持している。それ以外の政策? 支持できるものはないかな。茶会運動の訴えも皮相的で好きじゃない。そんな保守層は結構いるわよ」と打ち明けた。【10月24日 毎日】
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****ニューヨーク州知事選 “茶会候補”もろさ露呈*****
■醜聞続出…共和党候補が大失速
米中間選挙まで1週間となり、与党民主党の劣勢が伝えられる中、ニューヨーク州知事の座をめぐる選挙戦が、ここに来て、民主党候補が共和党候補に大差をつける予想外の展開を見せている。理由は、民主党候補への評価というよりも、草の根の保守運動「ティーパーティー(茶会)」支援を受け共和党候補に選ばれたカール・パラディノ氏(64)の急激な失速だ。
パラディノ氏は、州北部バファロー生まれで、現在は同地を地盤に、不動産開発業などを営む富豪。財政改革や教育改革を叫ぶその主張に加え、州政界ではほとんど知られていなかったその存在が逆に、既成の政治家への不満を募らせていた有権者からの興味を呼び、茶会の支援に乗る形で9月の党予備選で意表をつく勝利を果たした。
だが、その勝利により全米の注目を集めたことで、以前からくすぶり続けながらも勢いにまぎれていたさまざまなスキャンダルが、本格的にパラディノ氏の足を引っ張ることになった。
同氏が友人たちに流していた電子メールの内容もそのひとつ。「オバマ氏の大統領就任式リハーサル」と題したアフリカの部族民の踊りのビデオや、「走れ、ニガー(黒人の蔑称(べっしょう))」とキャプションをつけた黒人の写真、さらには性行為のビデオなどの送信が暴露され、「人種主義者」「性差別者」などとの非難が殺到するはめになった。
思わぬ恩恵をこうむったのが民主党陣営。そもそも、2008年に当時のスピッツァー知事が買春スキャンダルで辞任し、後任のパターソン知事も再選を狙おうとしたものの、あまりの不人気にホワイトハウスから横やりが入り、出馬を断念するというドタバタ続きで、今回も苦戦が予想されていた。しかしパラディノ氏の失態に助けられたかのように、最新の世論調査では民主党のアンドリュー・クオモ候補が60%の支持を集め、37%にとどまったパラディノ氏を大差でリードしている。
パラディノ氏は、茶会候補の爆発力ともろさの両方をさらけ出したともいえ、ニューヨーク・ポスト紙は「多くの共和党幹部はパラディノ氏の登場が党のイメージ全体を傷つけたと苦々しく思っている」と伝えている。【10月26日 産経】
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どうやら、オドネル候補のような不思議な人物が当選する事態は避けられそうです。
もっとも、「ティーパーティー(茶会)」の広告塔、「ママ・グリズリー」ことサラ・ペイリン元アラスカ州知事は次期大統領選挙を視野に、いたって元気なようです。
****【2010米中間選挙】茶会候補支援呼びかけ ペイリン氏、全米行脚*****
2008年の米大統領選で共和党の副大統領候補となり、知名度抜群のサラ・ペイリン元アラスカ州知事が、中間選挙の候補者支援のため大陸横断の全米行脚に乗りだした。共和党の顔ともいえるペイリン氏だが、「旬は過ぎた」(米メディア)との批判的な見方もある。
「共和党有力議員らの腰が引けている。おどおどせずに、正々堂々、茶会候補を応援しようではありませんか」
ペイリン氏は15日間にわたる全米行脚初日にあたる18日、ネバタ州リノの集会でこう演説し、保守系草の根運動「ティーパーティー(茶会)」候補への支援をさらに強めていくよう呼びかけた。
茶会に対しては、「人種差別主義者の集まり」などの批判がくすぶり、民主党支持者だけでなく無党派層からも距離を置く動きが出ている。ペイリン氏の発言は、茶会との連携を表明したがらない共和党候補が少なくないことを念頭に置いた発言だ。
かくいうペイリン氏は茶会が最も好む共和党の象徴であり、台頭著しい保守系女性政治家として米メディアから「ママ・グリズリー」に例えられている。グリズリーは米国で「地上最強」とされる野生のハイイログマ。ペイリン氏がグリズリーが多く生息するアラスカ出身であることから、命名された。(中略)
一方、米CBSテレビの最近の世論調査だと、2012年の大統領選への立候補を示唆するペイリン氏に対し、民主党が強いカリフォルニア州では、58%が「嫌い」だと回答している。
こうした選挙区事情を考慮してか、共和党候補の中でも大手企業の元最高経営責任者(CEO)、フィオリーナ上院議員候補やウィットマン州知事候補はともに、日程上の都合を理由にペイリン氏が参加したカリフォルニア州での集会への出席を断っている。【10月25日 産経】
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アメリカの今後の行方を占ううえで、「ティーパーティー」やペイリン氏への支持がどこまで続くのか、アメリカ国民ならずとも関心が持たれます。