(スーダンの少年兵 政府軍なのか反政府軍なのかはわかりません “flickr”より By nguoikhaipha202
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【人権を封印して原子炉・エアバス売り込み】
中国の胡錦濤国家主席は4日からフランスを訪問、サルコジ大統領と会談を行いますが、今回フランス側はノーベル平和賞受賞が決まった劉暁波氏の処遇などの人権問題は取り上げないとのことで、仏の人権団体が反発しています。
****胡・中国主席:訪仏で人権議題ならず 経済問題中心*****
中国の胡錦濤国家主席は4日からフランスを訪問する。両国関係は、サルコジ仏大統領が2年前にチベット問題で中国を批判して険悪化したが、その後改善しており、今回の訪仏では、仏の原子炉輸出などの経済関係が中心議題になる。ノーベル平和賞受賞が決まった劉暁波氏の処遇などの人権問題は取り上げられない見込みで、仏人権団体は仏政府を強く非難している。
両首脳は4日にパリ、5日には仏南部・ニースで夕食などを交えた会談を行う。
仏外務省高官によると、仏は今回の首脳会談を機に、中国に新型の原子炉2基や関連燃料、エアバス社製航空機などの売り込みを進めたい考え。仏と中国金融機関の提携も考えており、国際通貨システムの改革に向けた協力も中国側に求める見込みだ。
今回の訪仏について仏外務省高官は「劉氏の処遇など人権問題は取り上げられないと思う」と発言。共同記者会見も予定されておらず、仏の人権団体は一斉に「中国の人権問題を公の場で議論しないのは大きな誤りだ」などと強く批判した。
サルコジ大統領は08年末にチベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ14世と会談。チベット独立問題で「中国は静かに対応すべきだ」と発言し、両国関係は険悪化した。【11月4日 毎日】
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チベットの暴動を武力鎮圧した中国に対し、08年12月、サルコジ大統領はEU議長国の元首として、中国の反対を押し切ってチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世とポーランドのグダニスクで会談しました。
「仏外交は中国の意のままにさせぬ」との強気の姿勢を演出したものとされ、サルコジ大統領は中国側の反発を予想し、「物事を大げさにしない方がよい」と平静を保つよう呼びかけていました。
これにより、中国の温家宝首相が09年2月に欧州5カ国を歴訪した際にフランスを素通りするなど、両国関係は予想通りこじれました。
しかし、フランスのラファラン元首相が北京を訪問して温首相と会談するなど協議を重ねるなどして、09年4月には、フランス政府が「チベットは中国の一部であり、いかなる形の独立活動も支持しない」「チベット問題は重要かつ敏感な問題であることを十分理解しており、内政干渉はしない」と確約する形で関係修復を図っています。
今回は人権問題には触れず、原子炉・エアバスの売り込みという国益に専念するようです。
一方的コメント発表ならともかく、サルコジ大統領ならずとも、現在の経済情勢で中国首脳に直接人権問題で注文をつけられる指導者はまれでしょうから、別にこの問題でサルコジ大統領をとやかく言うつもりもありません。(共和党の影響力が強まったアメリカで、オバマ大統領が今後どういう対中国外交を展開するのかはわかりませんが)
【少年兵を使っている国と協力したほうが無視するよりも問題の解決につながる】
人権問題と国益の関係を考えさせる記事をもうひとつ。
アメリカ・オバマ大統領が「国益」を理由に、チャド、コンゴ(旧ザイール)、スーダン、イエメンの4カ国に対して、少年兵使用防止法を適用しないことを決定したというものです。
****アフリカ少年兵をオバマが容認****
少年兵を使うスーダンなど4カ国との軍事協力を解禁したのは、外交政策の由々しき転換ではないか
アメリカのオバマ政権は10月25日、アフリカで少年兵を動員している国に対する制裁の撤回を表明した。少年兵を使い人権上問題があったとしても、そうした国々と新たな軍事協力を結ぶための措置だという。
「チャド、コンゴ(旧ザイール)、スーダン、イエメンの4カ国に対して(少年兵使用防止法を)適用しないことを、アメリカの国益のもとに決定した」と、バラク・オバマ大統領はヒラリー・クリントン国務長官への覚書に記した。
少年兵使用防止法は、08年に当時のジョージ・W・ブッシュ大統領が署名した。18歳未満の少年兵を積極的に動員している国に対し、米軍による訓練や財政援助といった軍事関連支援を禁止する法律だ。米国務省が毎年発行する人身売買に関する報告書で、少年兵を動員していると特定された国に適用される。これで、この法律が適用される国は、ビルマ(ミャンマー)とソマリアだけになった。
オバマが今回こうした決定に踏み切った理由は、覚書では「国益」としか記されていない。P・J・クラウリー米国務次官補(広報担当)は、少年兵を使っている国と協力したほうが無視するよりも問題の解決につながると、オバマ政権が判断したと語っている。
「アメリカはこれらの国で、地元政府と協力して少年兵の動員をやめさせたり、少年兵を除隊させるよう働きかけている」と、クラウリーは説明する。「こうした国々は正しい政策を掲げてはいるのだが、実行に移すのは難しいようだ。(少年兵使用防止法)の適用を撤回したことにより、アメリカは訓練プログラムを継続して、地元軍を国際基準にまで高めることができる」
アルカイダ対策にイエメンは不可欠
残虐で非人道的な独裁体制と軍事協力を深めることが、彼らを改革する最善の策だというのか? 外交政策上、あまりに大きな方針転換と思われる。4カ国に対して、実際どのような軍事支援を提供し、それをどのように少年兵保護の取り組みに活用していくのか、まだ不透明なままだ。
「われわれは、これらの国々の政府と協力して少年兵の動員を減らす努力を続ける」と、ホワイトハウスのトミー・ビエトー副報道官は声明文で記した。「われわれは同時に、少年兵を使っている外国の軍隊がアメリカの対外援助の恩恵を受けないよう努めることも忘れない」
他方、現在進行中の軍事支援が中断されることで生じる負の影響については、国務省の内部文書によって少しは詳細がみえてきた。例えばチャドでは「将来の国軍指導部を育成する上で極めて重要な」訓練プログラムが、法律を適用することによって中断されるという。
同様に、コンゴとの軍事協力を中止すれば、反政府勢力と戦う「コンゴ国軍をアメリカが強化する機会を失うだろう」としている。スーダンについては、南部政府のスーダン人民解放軍(SPLA)に対する軍事訓練が中断され、来年1月の南部独立を問う住民投票を前に、SPLAの成長を妨げてしまうという。
さらにイエメンとの協力関係が必要なのは、イエメン政府がアルカイダとの戦いを続ける上で重要なパートナーだからだとしている。「援助を中止すれば、イエメンが対テロ作戦を実行していく能力は著しく損なわれ、同国と中東地域の不安定化につながる」
とはいえ、少年兵を「黙認」するとは、戦争犯罪に加担することになりはしないか。【10月29日 Newsweek】
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少年兵を使うような国を軍事援助することにどのような意味があるのか・・・という感はもちろんありますが、政府軍・反政府軍を問わず少年兵使用が珍しくない現状で「よりましな選択」ということに加え、経済大国・中国の人権問題に黙るなら、ものが言いやすいアフリカ・中東の紛争国とはいえ、そうした国にだけ正論を主張するのもいかがなものか・・・という感もあります。
ただ、こうした国々は少年兵意外にも多くの問題を抱えているのも事実です。
何を言いたいのか自分でもよく整理できませんが、現実対応で必要とされるのはバランス感覚ということでしょうか。