孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

タイ  明日29日、与党解党にもつながる判決 政治混乱の可能性も

2010-11-28 19:56:11 | 国際情勢

(5月のUDD占拠強制排除時の混乱 “flickr”より By ReportageEditor
http://www.flickr.com/photos/reportageonline/4766761214/ )

【小康状態】
タクシン元首相を支持する勢力と反タクシン派が相互に街頭行動を行い、5月にはタクシン元首相派の「反独裁民主戦線」(UDD)によるバンコク都心部占拠を軍治安部隊が強制排除し、日本人カメラマン村本博之さんを含む多くの犠牲者を出したタイですが、その後は小康状態とも言うべき状況が続いています。

もっとも、基本的な対立の構図が解消された訳ではありませんので、散発的に事件や抗議行動も行われています。
9月には、24日バンコクでごみ箱が爆発し通行中の女子学生2人が負傷、26日には首相府近くにある競馬場前で爆発がありました。

11月19日は、4月以来の非常事態宣言が解除されない中で、UDDが以前占拠していた都心部で、犠牲者を追悼する1万人規模の集会を開催しました。

****タイ:タクシン派が1万人集会 犠牲者の追悼で****
タイのタクシン元首相派組織「反独裁民主戦線」(UDD)によるバンコク都心部占拠が、軍治安部隊による強制排除で終結した5月19日から半年が過ぎた。4月以来の非常事態宣言が解除されない中で、UDDは19日、占拠していた都心部で犠牲者を追悼する1万人規模の集会を開催。当局側は阻止せず、集会は平穏に終了した。

非常事態宣言下での政治集会は禁止されているが、アピシット政権は一般市民が中心の平和的な集会は容認し、元首相支持者の不満のガス抜きを図っているとみられる。5月の都心部占拠終結時、一部が暴徒化し多数のビルへの放火に及んだタクシン派も、世論の反発を和らげる狙いからそれ以降は暴力的な行動を自制。双方が力による衝突を避け、対立は小康状態を保っている。
バンコクでは7月から、両派対立を背景にしたとみられる爆破事件が相次いだ。爆発物の威力は大きくなく、治安の不安定さを印象付ける狙いとみられる。10月には郊外のマンションで製造中の爆発物を誤って爆破させたとみられる事件が起き4人が死亡したが、その後は政府が市内に兵士を配備するなど警戒を強化し、爆破事件は起きていない。

アピシット政権はテロ容疑で拘束したUDD幹部に対しては釈放を認めない強硬姿勢だが、市民中心の抗議集会は禁止せず硬軟の対応を使い分けている。5月以降行われた下院補選やバンコク都議会選で政権与党の民主党が圧勝するなど、バンコクに騒乱状態をもたらしたタクシン派への支持は弱まる傾向を示している。首相は同派封じ込めに自信を深め、年内にもバンコクの非常事態宣言を解除する方針だ。(後略)【11月19日 毎日】
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【与党解党・首相失職の可能性】
しかし、この「小康状態」から一気に再び混乱へ転じるかもしれない、与党・民主党に対する政党交付金不正流用疑惑の判決が明日出される予定です。

****タイ政局緊迫化か 与党交付金流用、あすにも判決****
タイのアピシット首相率いる与党・民主党が、政党交付金を不正流用したなどとして公職選挙法違反に問われた裁判で、タイの憲法裁判所は29日にも判決を言い渡す。有罪なら同党は解党、首相ら党幹部は5年間の公職停止となり現政権は崩壊する可能性が高い。逆に無罪ならばタクシン元首相支持派が憲法裁の判断を不服として、大規模な抗議行動を展開することも予想される。政治情勢は再び緊迫化しそうだ。

裁判は、民主党が政党交付金2900万バーツ(約8060万円)を不正流用したとして、選挙管理委員会が4月に提訴、憲法裁が審理していた。
アピシット首相は、裁判での決定は尊重するとしており、有罪なら、1946年創設の同国最古の政党である民主党は解党、首相らも失職することになる。その場合、民主党の残る議員は新たな政党に移り、政権維持のために連立を組む各党と協議に入るとの見方が有力だ。

一方、憲法裁判所の判事9人のうち3人が26日までに今回の裁判の審理を辞退し、6人で審理が行われる。3人は同裁職員の採用で便宜を図ったとして、その証拠ビデオが動画サイトに投稿されている。
与党側からはビデオは、民主党解党という厳しい判決を求めるタクシン元首相支持者が投稿したもので、判決への圧力だとする声があがる。
また、民主党議員が判事らに審理を有利に進めるよう働きかけたとする疑惑も浮上し、裁判をめぐって与野党の駆け引きが活発化している。【11月28日 産経】
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違憲判決による与党解党はタイではこれまでも見られたことで、解党命令が出ても、新しい政党を受け皿にして政権を実質的に維持することは可能とも思われます。
ただ、そうは言っても、与党解党、首相失職という事態になれば、タクシン元首相派と反タクシン元首相派の対立に再度火がつく危険が十分に考えられます。

【再度の軍事クーデターも・・・】
更に、そうした混乱状態になれば、タイ国軍の動きが注目されます。
****アジアに広がる軍拡中毒****
・・・・多くのタイ政府当局者によれば、いまタイの政治ではアピシット・ウェチャチワ首相よりも保守強硬派のプラユット・チャンオーチャー陸軍司令官の影響力が強い。
プラユットは、軍が再びタイの政治で大きな役割を果たしていることを認めており、最近の発言でも軍事クーデターを起こす可能性を否定していない。
「政治に介入することは極力避けたい……と考えているが、国に秩序が取り戻されなければ、軍が統治のメカニズムとしての役割を担い、まず秩序回復の手助けをする必要がある」【12月1日号 Newsweek日本版】
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これまでも再三軍事クーデターを繰り返してきたタイ国軍ですが、前陸軍司令官は前回クーデターによるタクシン派一掃が失敗に終わり、政治介入には消極的でした。
しかし、現在のプラユット陸軍司令官は“強硬派”と見られています。政治混乱状態になれば、再度の軍事クーデターという事態も否定できません。

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