孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ミャンマー  スーチーさん解放後の演説内容 困難な今後の活動

2010-11-15 20:06:08 | 国際情勢

(13日解放時、自宅前に集まった支持者にあいさつするスーチーさん  14日演説で、カメラ付き携帯電話の多いのに驚いたと話しています。7年半の時間を感じさせます。 “flickr”より By Gordon Whiting
http://www.flickr.com/photos/seeker56/5173026178/# )

報じられていように、13日に7年半ぶりに自宅軟禁から解放されたミャンマーの民主化運動指導者のアウン・サン・スー・チーさんは、14日にヤンゴンの国民民主連盟(NLD)本部前で、大勢の支持者を前に(朝日では約4万人、毎日では5000人)解放後初めての演説を行いました。

****ミャンマー:スーチーさん、対話による民主主義実現を強調*****
ミャンマー民主化運動指導者、アウンサンスーチーさん(65)は7年半ぶりの自宅軟禁解除から一夜明けた14日、支持者に向けて演説。今後も政治活動を継続する方針を明確にする一方、軍事政権に対しては「敵意はない。最後まで話し合う」と語り、対話を通じて民主主義の実現を目指す方針を強調した。

スーチーさんは自身が率いる民主化勢力「国民民主連盟」(NLD)のヤンゴン市内の本部前で演説。「私は自分の思い通りにするつもりはない。すべての民主化勢力や国民とともに、国民和解に向けて取り組む」と述べ、選挙をボイコットしたNLDから分裂して、スーチーさんの意向に反して選挙参加した「国民民主勢力」(NDF)などとの関係修復に取り組む考えを示した。

スーチーさんは集まった5000人の支持者に「私たちが何かを手に入れたければ、恐れずに行動すべきだ」と訴えた。しかし「行動」の中身については、「物理的な力や、大きな声で叫ぶことではない」と述べ、政権を刺激するデモなどではなく、あくまで対話によって民主化を前進させる必要性を強調した。
その後行われた記者会見でも、スーチーさんは「私が解放されたことを、政権が脅威に感じないことを望む」と発言。政権最高指導者のタンシュエ国家平和発展評議会議長に直接対話を求め、米国や欧州連合(EU)の経済制裁解除に向けて政権との協力も拒まない姿勢も示した。【11月14日 毎日】
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【11月15日 朝日】に掲載されたスーチーさんの演説を一部抜粋すると、以下のとおりです。
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【正しい方法で行動しなければ何も得ることはできない】
期待するだけでは何もできません。期待することを実現するためにどうしたらいいか。実現する際にも正しい方法で行動する必要があります。
正しい方法で行動したいというのはなぜかというと、自分が聖人になりたいからではありません。私の経験から言って、正しい方法で行動しなければ目標が正しいものではなくなってしまうからです。だから、正しい方法で自分が実現したいと思っていることを実現しなければなりません。

国民が参加しなければ何も実現できません。それは皆さんもわかっていると思います。国民が国民のために民主化を実現する、それは私の国だけではなく世界中に広がってほしいことです。そういう考えに基づいて、私たちは努力します。私が掲げる目標を平和的に正しい方法で実現できると信じています。
やらなければないことはたくさんあります。行動しなければ何も得ることはできません。
 
【期待を背負うのはとても重い、しかしその責任を恐れない】
ほかの人がしてくれるのを待っていては駄目です。私たちは無理やりやらせるつもりはありません。皆さんが自ら参加することで実現するのです。
このように皆さんがここに来て支持をしてくれるのは、私に期待しているからだということはわかっています。そのような期待を背負うのはとても重いことです。しかし、私はその責任を恐れません。恐れるのは責任を果たせないということだけです。責任を果たすために努力します。

【民主主義の基本である言論の自由】
私たちとは、正直に何も恐れずに接してください。私たちに何を言ってくれても構いません。言いたいことを伝えてください。私と意見が違ったときには私は反論します。これが民主主義の基本である言論の自由です。言論の自由というのは勝手に文句を言い合うことではありません。
時には少し声を張り上げることもあるかもしれません。しかし、お互いが理解できるよう話すことがとても重要なのです。

【失望せず行動を】
私が言いたいのは、失望しないでくださいということです。我が国の状況を見て、失望したくなるときもあります。今まで何も変わらず、発展もしていないという思いもあるでしょう。しかし、失望する理由はありません。私たちは努力しなければなりません。努力はとても重要です。努力を重ねなければなりません。行動を起こす際にも、その途中でも、目的に達するまで努力をしなければなりません。
行動を起こすということに終わりはありません。国を造っていく際には、行動しなければなりません。この世に完全な満足ということはありません。しかし、ある程度の満足は絶対に必要です。そのような満足できる状況に達することができるよう、皆が協力して努力しなければなりません。

【1人で行動するのは民主主義ではない】
私がすべてしてあげられるとは言えません。国民の信頼、国民の期待、国民の支持があってはじめて、私の力は大きくなるでしょう。そのような力で国民とともに行動したいと思います。
私1人ではできません。私1人ではやりたくありません。1人で行動するのは民主主義ではありません。この考えを忘れないでください。私は1人で行動するつもりは全くありません。多くの皆さんと一緒に行動します。国民の皆さんと一緒に行動します。私たちを支持し、私たちに共感する世界の人々とともに一緒に行動します。そういう思いを心にしっかりと持ってください。

【多くの国民が少数の支配者を動かす権利をもつことが民主主義】
民主主義の重要な点は何かというと、前面に立って活動している人を後ろの人たちが動かすことが必要で、その権利がなければならないということです。それが民主主義です。多くの国民が少数の支配者を動かす権利を持たねばなりません。それが民主主義です。
国民が私たちを動かすことは受け入れます。しかし、国民でないものが私たちを拘束することはあまり受け入れたくありません。特に深い意味はありません。頭に浮かんだことを今話しただけです。

【すべての人たちとの間で対話を】
私は国民との間で、すべての人たちとの間で対話を続けていきます。この人とは対話がうまくできないとか、この人とは話し合いができないということは全くありません。どんな人ともうまくいくようにしたいという思いがあれば、それは可能です。話をしたいという思いがあれば、できるでしょう。私はそういう方法でやっていきたいと思います。私たちの側には国民の力が必要です。

【今ははっきりと言えないが、多くの声を聞いて決めていく】
国民の理解、支持を得て、引き続き活動していきます。今ははっきりと言えないことを許してください。しかし、たった今軟禁を解除され、今これをやりますと言ったとしても、深く考えずに語った言葉になってしまいます。最近の人々の声をたくさん聞きたいと思います。そのような声を聞きながら、これからの旅をどのように続けたらいいかということを私たちは決めたいと思います。

【民主主義を求めるグループすべてと連携して活動】
最も重要なのは、国民の力をもって私たちが行動するということです。民主主義を求めるグループすべてと私は連携して活動します。そして、私たちは対話が実現するよう活動していきます。

【時には傷つくことも】
対話の実現のために努力し、国民が最も傷つかない方法で、でも、まったく傷つかないとは私は言えません。そのように私が保証すれば(国民に)わいろを与えるようなものになってしまいます。
私を支持することでまったく傷つかないとは言えません。時には傷つくこともあるかもしれません。私を支持してくれる人も傷つくかもしれません。私たちも傷つくかもしれません。しかし、国民が最も傷つかない方法を私たちは探していきます。
国民も時には傷つくことを恐れないでください。私は今、言いたいのです。正しいことと悪いことの違いを知らなければなりません。正しい側にとどまり続ける勇気がなければなりません。悪いことと正しいことは時とともに変わることもあります。時間が変わるように、状況が変わるように、答えも変わります。

【対話だけを信じて行動】
一緒に行動してこそ実現するのです。期待だけで実現するのではありません。欲しいと思うだけで得ることはできません。欲しいものを得るために行動をして初めて、行動を起こす勇気があって初めて、行動できて初めて、獲得することができるのです。
私は最良の方法を探します。先ほど私が言ったとおりです。もう一度言いましょう。私たちは最良の方法を探して、目標に到達しなければなりません。私は対話だけを信じています。この方法を私たちが使わなければならないということを私は信じています。

【“警備していた人たち”に憎しみはない】
この本部に来て、私を支持をしてくれている皆さんの前で正直に話させてください。私を警備していた人たちに対して、私は憎しみの気持ちはありません。
私の性格からして、誰かを憎んでいるわけではありません。そのような感情は私にはありません。私は拘束を受けていた期間、私の警備の担当者たちは私に対しとても良く接してくれました。私は事実を言っているのです。私に本当に良くしてくれました。私はそれを大事にしたいと思います。感謝しています。
このようにいかなる地位であっても、いかなる分野にある人であっても、一人ひとりが思いやりを持って付き合ってほしいと思います。そのように私に対して丁寧に付き合ってくれたように、国民に対しても思いやりを持って接してくれればどんなに良いことでしょうと思いました。
私を自宅軟禁にしたように、人々を軟禁状態に置かないでください。私に丁寧に接したように、国民に対しても丁寧に接してくださいとお願いしたいです。自分が嫌いだからと言って、すべてが悪いと言ってはいけません。良いところもあれば、悪いところもあるでしょう。悪い部分を「悪い」と言われても怒る必要はありません。悪いことはしなければいいのです。良い点を大事に思って、感謝をしましょう。

【民主主義を信じているグループと相談しながら行動】
私たちは民主主義を信じているグループと相談しながら行動していきます。国民民主連盟1団体だけで行動するのではありません。多くの人たちと連携しながらやっていきます。それを支えるのが国民の皆さんです。国民が加わらなければ私たちは何もできません。国民の協力が必要であればお願いをしたいと思います。お願いをした際には私たちを信頼して、皆さんの力で支えてください。

【命を落とした民主化活動家に敬意】
人はいつかは死ぬのです。死ぬまでの間にどのように生きてきたかが重要です。今私たちはこれまでに命を落とした民主化活動家に敬意を表したいと思います。獄中にある民主化活動家にも敬意を表したいと思います。すべての活動家が釈放されるように祈りたいと思います。【11月15日 朝日より】
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軍政や不正選挙疑惑に対する直接的な批判は慎重に避け、対話をとおして、民主主義を求めるグループすべてを再結集して行動していくことを訴える内容となっています。
さすがにカリスマを感じさせる演説ではありますが、すでに総選挙で大勢は決しており、スーチーさんら活動の具体的道筋は定かではありません。多くのメディアが報じているように、今後彼女が地方遊説など活動を本格化させれば、再度軟禁・拘束ということも容易に推測されます。

総選挙結果は予想どおり軍事政権側の圧勝でしたが、国民民主連盟(NLD)から分派し、選挙に参加した国民民主勢力(NDF)も上下両院合わせて10議席前後程度は確保したと言われています。
わずかな議席ですが、圧倒的に不利な条件下での選挙、投票時に政権側の監視がなされるとか、投票用紙に番号が振られており誰に投じたかわかる・・・とも言われる状況を考えれば、重みのある数字です。
もし、スーチーさんがNLDの総選挙参加の方針をとっていれば、この2~3倍の数字は・・・という思いもあります。スーチーさんの総選挙ボイコットは軍事政権側には好都合だったとも言えます。

NLDは解党状態となっているなかで、どんな具体的行動ができるのか、新体制・総選挙をボイコットしたスーチーさんが、議会内の民主化勢力とどのような関係を持っていくのか注目されます。

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