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(ラマダン中、スラバヤ市内の大規模ショッピングモールのなかのフードコートのお昼時 7月27日)
【原理主義と宗教的不寛容】
先月の21日から28日にかけて、インドネシアのジャワ島東部を観光したことは、このブログでも何回か書きました。
インドネシア第2の商業都市スラバヤを起点に、13世紀シンゴサリ王国の遺跡も残るマラン、阿蘇のような広大なカルデラ地形のブロモ山、硫黄の採取を行っているイジェン火口などを回りました。
インドネシアは世界最多のイスラム人口を抱える国でもありますが、近年、原理主義の台頭も指摘されています。
****インドネシア、宗派対立激化 原理主義台頭 薄れる寛容性****
2002年のバリ島爆弾テロから来月で10年となるインドネシアでは、テロの頻発に加え、多数派のイスラム教スンニ派住民による少数派住民への襲撃が相次いでいる。政府は、世界最大のイスラム教徒を抱える穏健な世俗国家で、宗教の多様性に比較的寛容なこの国に、「原理主義と不寛容」が急速に台頭していると危機感を強めている。
「事件は遺憾だ。宗教に対する寛容性における汚点だ」。ユドヨノ大統領が苦渋の表情で言及した「事件」とは、東ジャワ州マドゥラ島中部のサンパン県で8月26日、暴徒化した500人のスンニ派住民が、少数派のシーア派住民を襲撃した出来事を指す。シーア派住民の2人が死亡、数十人が重軽傷を負い、35軒の家屋が放火されたのだ。
事の発端は、シーア派の生徒数十人が、スンニ派住民に登校を妨害され、小競り合いとなったこと。だが、根は深そうだ。シーア派団体は、イスラム団体を統括するイスラム指導者会議(MUI)が1月に、シーア派を「異端」とするファトワ(宗教裁定)を出し、これがシーア派への差別を助長させ襲撃の要因になった、と非難している。ユドヨノ大統領は、あるシーア派指導者の兄と、その弟のスンニ派指導者との「兄弟対立」に起因しているという見解を示した。
だが、標的はシーア派にとどまらない。西ジャワ州ボゴールでは7月、アハマディア派が襲われた。インドネシアの人口(約2億4千万人)の88%を占めるイスラム教徒のうち、スンニ派は99%と圧倒的で、シーア派は100万~300万人、アハマディア派は50万人ともされる。
ある専門家は「宗教上の寛容性が低下している要因として、宗教の多様性と寛容性を脅威だとみなして拒絶し、正統性を認めない原理主義の高まりにあると指摘できる」と説明する。
一方、テロの企ては枚挙にいとまがない。ミャンマー西部ラカイン州における仏教徒とイスラム教徒との衝突事件にからみ、インドネシア国内の仏教徒を標的にテロを計画した容疑者が逮捕された。ジャカルタの議会を狙ったテロも発覚し、中ジャワ州ソロを拠点とする若いテロリストが逮捕されている。
こうした動向は、「民主主義の進展に対する反動としての原理主義の台頭」(専門家)という側面が指摘されている。政府は、原理主義の台頭を押さえ込む包括的な対策に乗り出した。【2012年9月13日 産経】
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広いインドネシアですからイスラム主義の濃淡は地域差がありますが(例えば、観光で有名なバリ島はバリ・ヒンズー教です)、イスラム法(シャリア)の施行が認められているインドネシア・スマトラ島アチェ州では、女性がバイクの後部座席にまたがって座ることを禁止する規則が導入されることになったといった話も聞きます。【1月5日 毎日より】
もとより1週間そこらの物見遊山ですから、そうしたイスラム主義の現状などわかるはずもありませんが、ちょうど旅行期間がラマダン(断食月)にあたり、どの程度厳格に実施されているかによって、旅行中の私も昼食をとる店がみつからないといった影響を受けます。
また、ヒジャブ(ベール)を着用する女性が多いのか、少ないのかぐらいは、ある程度わかります。
【ラマダン】
まず、ラマダンの状況ですが、結論から言えばよくわかりませんでした。
冒頭写真は、スラバヤで一番の人気スポットとガイドブックで紹介されている、都心大規模ショッピングモール「プラザ・トゥンジュガン」のなかのフードコート(手軽で簡便な料理を出す店が集まった、屋内屋台村みたいな場所)のお昼頃の様子です。
ラマダンの日中は病人や妊婦を除いて一般には食事をとらない、厳格な人は水も飲まない、唾も吐き出すということですが、フードコートにはさすがに空席があります。写真はあえて空席が目立つアングルで撮影していますので、全体的には2割程度の空席でしょうか。
ラマダンにもかかわらず8割は埋まっていると見るべきか、一番の人気スポットのお昼時でさえ空席があると見るべきか・・・。普段の状態を知りませんので、なんとも言い難いところです。
スラバヤ旧市街・アラブ街のモスク「アンペル・モスク」近くのワルン(庶民的な食堂)は、さすがに日中は閉まっていました。
マランのホテル近くには一応屋台が出ており、食べられるのかと覗くと、おじさんが「大丈夫、そこに座れ」とのこと。しかし、すぐに調理は始まらず、携帯で呼び出された奥さんがバイクで到着して調理が始まります。
一応営業しているとも言えますし、どうせ客は少ないとのことで調理する奥さんは詰めていないような状態とも言えます。
夜明け前に空港に向かったタクシーのドライバーは。「日が昇ると食べられないから」と言いながら、運転中にパンみたいなものを食べていました。
マランでチャーターした車のドライバーは「ラマダン?いや、食べるよ。まあ、体が弱いからね・・・」なんて言っていました。
ブロモ山周辺に住むテングル人はヒンズー教だそうで、海外からの観光客も多い土地柄もあって、普通に昼食をとる店を見つけることができました。
ラマダンで日中店があいていないときのために、日本から日持ちするパンや缶詰・ソーセージなどを持参したのですが、店を見つけられずにそれらに頼るといった場面は結局ありませんでした。(ただ、早朝の出発だったり、移動時間が長かったりして、持参した食糧は完食しましたが、それはまた別の話です。)
なお、ラマダン期間中は警察取締りが厳しくなるようです。
****1.6万本の酒瓶をローラー重機で破砕、インドネシア****
インドネシアの首都ジャカルタの警察署前で29日、押収された酒類の瓶1万681本がローラー重機で破砕処理された。
これらの酒瓶は、イスラム教の断食月「ラマダン」期間中の警察の取り締まりで販売許可証を提示できなかった業者から押収されたもので、大半はインドネシア国内で生産されたものという。【7月29日 AFP】
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【ヒジャブ】
次に、ヒジャブ(ベール)の話。こちらも微妙です。
もちろん、ヒジャブ姿の女性は大勢います。
ただ、それと同じぐらいヒジャブを着用していいない女性も大勢います。
小学校の女子児童などは全員制服としてヒジャブを着用しています。
当たり前ですが、モスクでお祈りをしている女性は皆ヒジャブを着用していました。
帰国日前日、スラバヤの別のショッピングモール内のレストランで、頼んだ夕食が出てくるまでの間、店の前を通る女性を「ヒジャブを着けている女性とつけていない女性、どっちが多いのだろうか?」と眺めていたのですが、そのときは着けていない方が6~7割で多かったように思います。あくまでも、そのときの印象ですが。
年齢的には、着用している女性には年配の方が多いようにも思えました。もちろん若い女性でも着けている方は大勢いますが。
例えば、隣国マレーシアもイスラム教徒が多い国ですが、華人やインド系も多いこともあって、首都クアラルンプールでは着用していない女性が多いのですが、マレー系が大半を占め、イスラム教色が強い(原理主義政党の力も強い)東部のコタバルなどへ行くと、ほぼ全員がヒジャブを着用しています。
そんなマレーシア・コタバルなどとは明らかに違います。
インドネシアは、今回旅行とバリ以外では、ジャワ島・ジョグジャカルタ周辺、スマトラ島北部のブキティンギ・ブラスタギなどに行ったことがありますが、ヒジャブの着用割合に関する記憶は定かではありません。マレーシアに比べてあか抜けないような印象を持ったこともあるようにも・・・。
ホテルでTVを眺めていると、CMに登場する女性はヒジャブを着けず、長い黒髪を誇っているようにも見えます。
CMというのは、ある意味、人々の憧れの生活をあらわしたものとも言えます。
ドラマの中では、貞淑な女性はヒジャブを着け、悪意をむき出しにした女性は着けていないというふうにも・・・。もちろん言葉もわからない番組をほんの少し眺めた印象にすぎません。
TVに登場する女優さんはきれいにヒジャブを着こなしていますが、街で見かける一般の女性について言えば、どうしてもヒジャブ姿は、全体のイスラム風ファッションもあって、あか抜けない古風な印象は否めないところがあります。
****イスラム・ファッション売り込め=インドネシア政府が本腰****
世界最多のイスラム人口を抱えるインドネシアが、女性向けを中心としたイスラム・ファッションの売り込みに力を入れている。
インドネシアでは近年の経済成長に伴いファッション産業が伸び、イスラム教徒の女性向け衣服も華やかなデザインが増えてきた。政府は中東など他のイスラム圏への輸出も強化したい考えだ。
イスラム教徒の女性向け衣服は頭部を覆うスカーフ「ヒジャブ」と肌の露出を抑えた丈の長い上着やスカートなどが特徴。インドネシアには「バティック」と呼ばれる国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に認定された伝統的な染色工芸がある。こうした伝統工芸が生かされ、同国のイスラム・ファッションはバラエティーに富んだものになっている。
女性向けイスラム・ファッションの専門誌「ライカ」のフィフィ・アルビアント編集長によると、インドネシアでイスラム・ファッションが活況を呈してきたのは2010年ごろから。それ以前は「おしゃれなヒジャブはほとんどなかった」という。最近は著名な女性デザイナーが現れ、ジャカルタではファッション・ショーがたびたび開催されている。
こうした活況に近隣のイスラム圏の国も注目。同編集長は「われわれの雑誌にはマレーシアの読者も多い」と語った。【8月3日 時事】
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同様のイスラム・ファッションを追及する動きはトルコを紹介したTV番組でも目にしました。
女性が美しくなってくれることは、男性にとっては喜ばしいことです。
イスラム圏の女性がヒジャブについてどのように感じているのか訊く機会は今までありませんが、「ヒジャブは女性抑圧の象徴」といった欧米的な認識とは必ずしも一致しないのでは・・・という印象もあります。
おそらく一般女性にとって、ヒジャブは重要なファッション・アイテムのひとつというと認識なのかもしれません。
男性からすれば、女性を意識させる、きわめて性的なものとも言えます。