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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

エジプト  混乱・衝突の懸念のなかで妥協を探る動きも

2013-08-04 21:17:36 | 北アフリカ

(3日、エジプト・カイロ東部のイスラム教のモスクで、座り込みを続けるモルシ前大統領支持派(ロイター)【8月4日 msn SankeiPhoto】http://photo.sankei.jp.msn.com/highlight/data/2013/08/04/11egypt/
7日まで続くラマダンの日中断食と暑さで疲労もたまっているのではないでしょうか。)

革命後に現実の政治で分裂
エジプトでは、軍のクーデターで誕生した暫定政権派と、ムスリム同胞団を中核とするムルシ前大統領派の対立・混乱が続いていますが、かつてムバラク政権を崩壊に追い込んだ若者らの「4月6日運動」や、ムスリム同胞団若手の間でも様々な考えがあり、“革命後に現実の政治で分裂した”混沌とした状況が窺えます。

****エジプト、若者引き裂く 「アラブの春」の団結、一転 クーデター1カ月****
・・・・エジプトは、軍のクーデターで誕生した暫定政権派と、ムルシ前大統領派の対立が続く。国民が団結した2011年の「アラブの春」とは、対照的な状況だ。長期独裁政権を崩壊に追い込んだカイロ中心部タハリール広場のデモを主導した若者はいま何を思い、どう行動しているのだろうか。

ムルシ支持派が集まるカイロ郊外ナスルシティーの一角で若者たちが「軍統治を倒せ」と叫びながら、拳を振り上げていた。その中の一人、大学工学部3年アブドラ・サラフさん(21)は6月30日にタハリール広場で行われた反ムルシ・デモに参加したが、クーデター後にナスルシティーに移った。「ムルシ(前大統領)には反対だが、軍の支配はもっと悪い」と語る。

エジプト革命を主導した若者たちによる組織「4月6日運動」の創設メンバーの一人、アブドルラフマン・イッズさん(26)も、ナスルシティーでのデモに参加する。「民主主義を守ることが国民の利益だ。選挙で選ばれたムルシ以外に正統性はない」と語る。イッズさんらは「4月6日運動」と分かれて「自由4月6日運動」を名乗る。

一方、本家の「4月6日運動」は「反ムルシ」のデモを呼びかけた若者組織「タマルド」と連携、暫定政権を支持する。幹部のハーレド・マスリさん(38)は「軍は、国民の多数の意思を実現した」と話す。

革命直後に「4月6日運動」から分かれたもう一つの分派「4月6日運動民主戦線」はムルシ政権に反対したが、クーデターにも反対の立場だ。報道担当のシェリフ・ルビーさん(33)は、「私たちは暫定政府にも協力しない。3カ月たっても軍が引かなければ、軍政反対の街頭デモを始める」と語った。

4月6日運動の分裂は、国民の分裂を象徴する。
マスリさんは「私たちの運動は世俗派からイスラム派まで異なる考え方を持つ者が強権打倒で一致したが、革命後に現実の政治で分裂した。エジプトを思う気持ちは同じだ」と話す。

現在は立場を異にするイッズさんは「分裂は我々に政治的経験がなかったことに原因がある。エジプト革命で注目を浴びたことで、外から様々な働きかけを受け、旧公安警察の切り崩しにもあった」と語った。

分裂はムルシ派デモを組織するイスラム組織「ムスリム同胞団」にもある。同胞団の若手リーダーたちは革命後に「エジプト潮流」をつくり、「反ムルシ」を訴えるデモに参加した。中心メンバーのムハンマド・カッサースさん(39)は「ムルシ(前大統領)は『投票箱の正当性』を言うが、自由や公正を実現する『革命の正当性』がより重要だ。同胞団は選挙で勝利した後、権力を私物化した」と批判する。

ただし、軍と警察によるムルシ派デモ隊の強制排除には反対する。「危機打開には話し合いしかない。仲介の道を探っている」と、カッサースさんは話した。【8月4日 朝日】
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集会場を4日夕(日本時間5日未明)までに包囲する方針
そうした混沌とした状況で、治安当局はムスリム同胞団の集会場を4日夕(日本時間5日未明)までに包囲する方針を決めており、新たな大規模な衝突の懸念も高まっています。
すでに2日には治安部隊とモルシ派デモ隊の間で衝突も起きています。

****エジプト:ムスリム同胞団集会場包囲へ 大規模衝突の懸念****
軍事クーデターでモルシ前大統領が解任されたエジプトで、治安当局がモルシ氏の出身母体・イスラム組織ムスリム同胞団の集会場を4日夕(日本時間5日未明)までに包囲する方針を決めたことに対して、同胞団のスポークスマンは2日、「クーデターには屈しない」として集会を強行する方針を明らかにした。治安当局が包囲を強めれば大規模な衝突に発展する恐れがある。

2日には、同胞団のデモ隊が「報道は偏っている」と、カイロ郊外のテレビ局などが集中する企業団地に入ろうとしたところ、治安部隊が催涙ガス弾を使用。一方、地元メディアによると、警察官2人もデモ隊側の発砲によって負傷した。

同胞団は6月28日以降、カイロ北東部のラバ・アダウィーヤ・モスク周辺など2カ所で座り込みの抗議集会を続けている。

国営テレビによると、治安当局は集会を解散させるため、4日夕までに周辺道路を封鎖し、外部からの進入を禁止する。集会場から外への移動は認める。ただ、多数の犠牲者が出る恐れがある強行突入はしない方針だという。同胞団のスポークスマンは2日夜、毎日新聞の取材に「封鎖が始まっても、平和的なデモを続ける」と話した。

一方、国内外で仲介の動きも活発化している。バーンズ米国務副長官は2日、カイロを訪問。ファハミ外相らと会談し、平和的な解決を促したとみられる。

また、政府系紙アルアハラムは2日、暫定政権と同胞団が水面下で接触を始めたと報じた。同胞団は拘束されている幹部の釈放を求め、政権側は暴力をあおるような呼びかけをやめるよう要求したという。【8月3日 毎日】
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【「米国の同胞団に対する影響力は大きく、その力を行使してほしい」】
部外者の無責任な感想としては、いつまでも街頭での混乱を続けていてもどうにもならない、一度、政治・経済・社会を正常な安定状態に戻したうえで、今後の方針についてはしかるべき時期に選挙で民意を問えばいい・・・という風に思えるのですが。

エジプト国内においても、このまま混乱が加速して大規模衝突に至るような事態は避けたいという思いから、妥協を探る動きが政権側・モルシ支持派双方にあるようです。

治安当局は大規模衝突を起こす強制排除には慎重姿勢で、軍トップのシシ第1副首相兼国防相はアメリカのムスリム同胞団への働きかけを期待しています。

****米国はモルシ派説得を」=交渉優先示唆か―エジプト軍トップ****
エジプトで事実上のクーデターを起こし、イスラム組織ムスリム同胞団出身のモルシ前大統領を解任した軍トップのシシ第1副首相兼国防相は3日、米紙ワシントン・ポストとのインタビューで、軍が後押しする暫定政権とモルシ氏支持派の緊張緩和に向け、米国がモルシ派を説得する必要があるとの認識を示した。

シシ氏は、米国がこれ以上の流血を望まないのであれば、モルシ派が首都カイロの2カ所で1カ月以上続ける座り込みをやめさせるべきだと表明。「米国の同胞団に対する影響力は大きく、その力を行使してほしい」と述べた。

暫定政権はモルシ派を強制排除する構えを見せてきたが、犠牲拡大への懸念から国内外で慎重対応を求める声が高まっている。政変後、シシ氏が報道機関のインタビューに応じたのは初めてで、発言を通じて交渉解決に軸足を置くことを示唆した可能性もある。【8月4日 時事】
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アメリカは、モルシ政権末期にはムスリム同胞団との関係を反モルシ派から批判され、軍のクーデター時にはこれを容認したとしてモルシ派から批判され・・・と、双方から批判を受ける立場にありましたが、それもアメリカの影響力の大きさの故でしょう。最後はやはりアメリカ頼みというということにもなります。

エジプト、特に軍はアメリカからの支援なしには立ち行かないのが実情で、また、アメリカもエジプトと決定的に対立することでエジプト・中東での影響力を失いたくないということで、両者は不可分の関係にあります。

アメリカは、現在の軍を背景とした暫定政府を実質的に支援する形で混乱を収拾する方向に乗り出したように見えます。

****エジプト政変を評価 米国務長官、同胞団に妥協迫る****
ケリー米国務長官は1日、エジプトでムルシ前大統領を排除した軍の行動について「民主主義を取り戻した」と述べ、肯定的な評価に踏み込んだ。

軍と関係改善を進める一方で、ムルシ氏復権を求めて抗議デモを続けるイスラム組織「ムスリム同胞団」に政治的妥協を迫る狙いがあるとみられる。

訪問先パキスタンの地元テレビ局とのインタビューで語った。ケリー氏は「軍は何百万人もの要請に応じた」とも述べた。

米政府は7月3日の政変直後、ムルシ氏排除と憲法停止を「深く懸念する」とする声明を発表。反ムルシ派や暫定政府が反発を強めていた。米政府はその後、政変が軍事援助の凍結に直結する「クーデター」に当たるかの判断は回避した。(後略)【8月3日 朝日】
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一方、モルシ支持派からも“柔軟姿勢”が出てきています。

****エジプト・モルシー派が柔軟姿勢「民意尊重****
ロイター通信によると、エジプトのモルシー前大統領を支持するイスラム系のワサト(中道)党関係者は3日、クーデターによるモルシー氏排除につながった民意を「尊重する」と述べた。
その一方で、クーデターを主導したシーシー第1副首相兼国防相が政治的役割を果たすことは拒否すると強調。
同様の考えは、同国を訪問中のバーンズ米国務副長官にも伝達したという。

モルシー氏支持派が公に柔軟姿勢を示したのは初めてだが、同派の中核であるイスラム原理主義組織ムスリム同胞団指導部の意向を受けたものかは不明だ。【8月4日 産経】
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アメリカの仲介で軍・暫定政府側とムスリム同胞団の間で妥協が成立する可能性も出てきたようです。

【「今必要なのは、第一に、暴力を確実に止めること」】
エルバラダイ暫定副大統領は、2日付けの米紙ワシントン・ポストが掲載したインタビューの中で、ムスリム同胞団などのモルシ氏支持派に対し、暴力の停止と対話を呼びかけています。

“「今必要なのは、第一に、暴力を確実に止めること」「その後は、モルシ氏が失脚したという事実をムスリム同胞団が理解しているかどうかを確認するための対話に入ることだ。しかしそれは、同胞団を排除するという意味ではない。(ムスリム同胞団は)憲法改定、議会選挙および大統領選挙といった政治プロセスに引き続き参加するべきだ」”【8月3日 AFP】
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