(イスラム女性の着衣「ブルカ」を身にまとった主人公が、女性の権利と教育を守るため、本とペンを武器にして社会の悪と戦うテレビシリーズ「ブルカ・アベンジャー」 ペンを手裏剣のように投げるのでしょうか? 【8月6日 ロイター】http://jp.reuters.com/article/entertainmentNews/idJPTYE97502220130806)
【「和平交渉は間もなく始まるだろう」】
アフガニスタンからの14年末までの米軍等撤退を睨んでの、アメリカ、アフガニスタン政府、タリバンの間の和平交渉は、タリバン側の国名や国旗の問題やアフガニスタン政府とアメリカの主導権争いなどで、表面上一旦とん挫した形とはなっていますが、水面下での接触は続いているようです。
****タリバンと水面下で接触 アフガン評議会 和平交渉向け****
アフガニスタンのイスラム原理主義勢力タリバンとの和平を担当するアフガン政府高等和平評議会のカシミヤー報道官は6日、産経新聞に、タリバンとアフガン政府、米国との和平交渉を始めるため、水面下でタリバンとの接触を進めていることを明らかにした。
タリバンのメンバーもAP通信に接触を認め、妥協案の提示を示唆したとされるが、タリバンの広報担当者はこの内容を否定しており交渉が本格的に始まるかどうかはなお不透明だ。
タリバンは今年6月、カタールのドーハに事務所を設置し、米、アフガン両政府と和平交渉を始めると表明した。しかし、タリバンがアフガン統治時代から使用している国名や国旗を事務所に掲げたことにアフガン政府が反発、協議は見送られた。
カシミヤー氏は「いくつかの手段を通じて、アラブ首長国連邦やトルクメニスタンでタリバンのメンバーと接触しており、どう和平交渉を始めるかを協議している」と述べた。
また、タリバン・カタール事務所の代表の一人はAP通信に、タリバンの交渉担当者のスタニクザイ氏が先月、和平評議会幹部とアラブ首長国連邦ドバイで会談し、主張の相違点の調整を試みたと明らかにした。これまでと同様、国名や国旗の使用で譲る意思はないが、妥協案を示したという。
事務所代表者は、タリバンが現行憲法を3つの条項を除いて受け入れることや、女性の教育や政治の機会の否定を誤りと認める用意があることを示唆した。
来年4月に実施予定の大統領選には参加しないものの、新大統領は「暫定統治者」にすぎないとの位置づけで外国部隊撤退後に速やかに選挙を行うよう求めた。
アフガン政府とタリバンの溝は依然として大きいが、タリバンとの関係を維持しているパキスタン政府からの助言もあり、「和平交渉は間もなく始まるだろう」との見通しを示した。
しかし、タリバンの広報担当者のムジャヒド氏は産経新聞に、「憲法や暫定統治などについて協議したことはない」と断言、妥協案について否定している。最高指導者オマル師は6日の声明で、来年の大統領選について「時間の無駄だ」と不参加の意思を強調した。【8月7日 msn産経】
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パキスタンは武器・資金支援や領内を活動に使用することを黙認するなどで、タリバンに対し、北朝鮮に対する中国同様の強い影響力を持っていますので、“(タリバンへの)パキスタン政府からの助言もあり”ということが事実であれば今後の展開に期待が持てます。
タリバン最高指導者オマル師の声明については、次のように報じられています。
****アフガン和平にタリバーン意欲 オマール師声明****
アフガニスタンの反政府勢力タリバーンの最高指導者オマール師は5日付の声明で、12年間に及ぶ戦争終結へ向けた和平交渉について「外国軍の占領を終わらせるためだ」と述べ、開始に意欲を示した。
タリバーンは今年6月、米政府やアフガン政府との和平交渉入りを表明し、そのための事務所を中東カタールに開いた。しかし、手続き面で対立が解けず、開始が遅れている。オマール師は、アフガン政府などが「口実を並べて、障害を生み出している」と批判した。
声明はさらに、従来の宗教教育一辺倒の姿勢を修正。国際機関の人道支援活動についても容認する姿勢を示した。政権復帰をにらみ、現実路線へかじを切っている可能性がある。
米国務省のサキ報道官は6日、声明が民族和解的な政府づくりに言及している点に触れ「我々の長年の目標と同じだ」と述べた。【8月8日 朝日】
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そもそもオマル師が生きているのか、どこに潜伏しているのか、パキスタン政府あるいは軍に匿われているのか・・・そのあたりは謎ですが、タリバンにとっては絶対的存在であるオマル師の名前で和平交渉に意欲的な内容の声明が出されたのであれば、これも期待できるところです。
アフガニスタン政府の行う選挙への対応も変わってきました。
2010年9月に行われた下院選挙の際は、タリバンは「米国流選挙はアフガンの伝統を損なう」と住民に棄権を命じ、「違反者には相応の処置が待っている」と脅迫していました。
2009年8月の大統領選挙の際は、選挙妨害を宣言し、カブールの大統領府にロケット弾を撃ち込むなどのテロ活動を行っていました。
こうした過去の対応に比べれば、今回大統領選挙に対する「時間の無駄だ」という否定的評価は、“やりたいなら勝手にやればいいが、自分たちは認めない”といった、はるかに穏やかで平和的なものと言えます。
【タリバンも女性教育を認める?】
更に、今後のタリバンの方針についても明るいものがあります。
“事務所代表者は、タリバンが現行憲法を3つの条項を除いて受け入れることや、女性の教育や政治の機会の否定を誤りと認める用意があることを示唆した”【msn産経】
“声明はさらに、従来の宗教教育一辺倒の姿勢を修正。国際機関の人道支援活動についても容認する姿勢を示した”【朝日】
“現行憲法を3つの条項”が何をさすのか知りませんが、女性教育を否定してきたタリバンが、その姿勢を改めるというのであれば喜ばしい限りです。
隣国パキスタンでは、女性の教育を訴えていた少女マララ・ユスフザイさんが「パキスタンのタリバン運動(TTP)」によって頭部を銃撃されて瀕死の重傷を負ったことは何回も取り上げてきましたが、アフガニスタンのタリバンははるかに先を行っているとも言えます。
タリバンも、前回政権を獲得したときはカンダハルの片田舎から出てきたばかりで、外の世界、パシュトゥン人社会の伝統的価値観・文化以外の価値観・文化について全く無知でしたが、十数年の時間の流れのなかで、より寛容(あるいは現実的)な方向に変化したのでしょうか。是非そうあってもらいたいものです。
なお、パキスタンでは、「ブルカ」を身にまとった主人公が、女性の権利と教育を守るため、社会の悪と戦うテレビシリーズが制作されて話題となっています。
****ブルカ姿のヒロイン大活躍=アニメ、「女性の教育」のため戦う―パキスタン****
漆黒の伝統衣装ブルカに身を包み、女性の教育を邪魔する悪党に立ち向かう。
女性の権利向上を訴えるマララ・ユスフザイさん(16)の母国パキスタンで7月、戦う女性教師を主人公とするテレビアニメの放映が始まった。早くも多くの注目を集め、今後欧米など約60カ国で放送される見通しだ。
アニメ「ブルカ・アベンジャー(ブルカを着た反撃者)」の舞台は架空の都市ハルワプール。日中はごく普通の女性教師「ジヤ」が夜の訪れとともにブルカをまとい、女子校を閉鎖しようとたくらむ武装勢力の首領や汚職まみれの市長と戦う。3人の教え子とヤギの「ゴブ」の助けを受けながら、本とペンを武器にして悪党を退治するストーリーだ。【8月9日 時事】
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なぜ抑圧の象徴であるブルカをまとっているのか・・・・との指摘も一部にあるようですが、製作者側は「彼女を反イスラムとして描いたわけではない。彼女はブルカを着たイスラム教徒だ」と語っています。【8月6日 ロイター】