(スロバキアで暮らすロマ 2001年頃の写真のようです。もちろんロマの人々の暮らしぶりも様々でしょうが。 “flickr”より By Christophe VANDER EECKEN http://www.flickr.com/photos/73066088@N00/2580934097/in/photolist-4W4XMK-4W9cN7-4Y773Q-5gmgBX-5Cauk4-5CaumF-5CeMam-5Ei1yG-5Ei1Ah-5LcMj2-5Lh2MW-5Lh2Q9-5Lh2US-65Xa3Q-69TDZ9-6aYKKD-6aYLGc-6aZdiK-6aZdWF-6aZenk-6aZeLv-6aZfyt-6aZC54-6aZCdR-6aZCwv-6aZFUB-6aZHm6-6aZHAH-6aZJ7Z-6aZKF8-6aZLz8-6aZM14-6aZMST-6aZNeT-6b19SK-6b1cDc-6b3U9d-6b4N57-6b4NKA-6b4PVd-6b4Qkj-6b4Rdb-6b4RN7-6b4Sab-6b4UAG-6b4VpL-6b4Y7L-6b5gRj-6b5p9s-6be6Xx-6be6Zk)
2年ほど前の欧州の状況に関する下記記事ですが、現在も排外主義や大衆迎合主義が横行する危険が続いています。
****ヨーロッパに忍び寄るネオ排外主義****
ユダヤ人やイスラム教徒を標的にする極右政党の躍進が各国で相次ぐ不気味。
ヨーロッパに新たな分断が生まれている。かつての鉄のカーテンとは違って、今回の「壁」は異質なものに対する強い拒否反応。西ヨーロッパではイスラム教徒、東ヨーロッパではユダヤ人とロマ人、同性愛者が標的になっている。
・・・・世界的な不況のあおりを受けて有権者が失業や所得減に苦しむなか、スケープゴートを求める風潮がかつてと同じ有害な政治を生み出している。(後略)【2011年10年4月28日号 Newsweek日本版】
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上記記事で排斥・差別の対象として挙げられているジプシーとも呼ばれるロマの起源等については諸説あり、それだけで1冊の本にもなりますが、ごく簡単には以下のように理解されています。
“ロマ民族は、数百年前にインドを離れた人々を起源とする放浪の民。長きにわたり差別を受けてきた歴史を持ち、軽犯罪の取り締まり対象になることも多い。第2次世界大戦中には、ユダヤ人や同性愛者らと共に、数十万人がナチス・ドイツにより殺害された。”【7月24日 AFP】
なお、【ウィキペディア】では、北インドから移動を始めたのは西暦1000年頃とされています。
冒頭【Newsweek】記事では、東ヨーロッパでの差別対象として挙げられていますが、西ヨーロッパでも差別対象となっていることには変わりありません。
2010年10月22日ブログ「欧州委員会、フランスのロマ送還問題で法的措置回避 ルーマニアのロマの現況」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20101022)では、当時のフランス・サルコジ政権が少数民族ロマを出身国ルーマニアなどに送還している問題、またイタリア・ベルルスコーニ首相(当時)も、サルコジ大統領の「ロマ追放策」を支持し、「ロマ問題は仏だけでなく欧州すべての問題だ」と発言していることなどを取り上げています。
このブログのなかで、イタリア・ナポリ近郊のジュリアーノ市が、ロマ居住区を高さ3mのコンクリート壁で遮断する計画であり、当局はこの壁は“町の装飾”と説明している・・・という話にも触れました。
こうした“壁”は実在するようで、スロバキアの「欧州文化首都」コシツェでも問題となっています。
****ロマ分断の「壁」出現=EU、撤去促す―スロバキア****
欧州連合(EU)の今年の「欧州文化首都」に指定されているスロバキア第2の都市コシツェに7月、少数民族ロマと多数派スロバキア人の居住区を分断する壁が建設された。EUは欧州文化首都の理念に反すると警告。即時撤去を促した。
壁は全長30メートル、高さ2メートル。ロマ居住区に隣接する駐車場で窃盗が多発しているとの住民の苦情を受け、地区当局が建設した。これにより、ロマ居住区からスロバキア人居住区への行き来ができなくなった。
EU欧州委員会のワシリウ欧州委員(教育・文化・多言語・青年担当)はコシツェのラシ市長に書簡を送り、「人種差別と闘うEUの価値観に背く」と不快感を表明。欧州文化首都は欧州文化の多様性を訴える狙いがあり、コシツェはロマ文化の紹介も求められていると強調した。
これに対し、ラシ市長は返信で、「市当局は壁を許可しておらず、違法に建設された」と釈明し、法的措置を取ると約束した。スロバキアのメディアによると、同国では2009年以降、同様の壁が14カ所で建設されたという。【8月24日 時事】
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コシツェの壁は当初、騒音問題やゴミの被害を理由に建設され、“2011年の国勢調査では、スロバキアの総人口550万人のうちロマ民族は約10万6,000人。ただ実際には30万人近いとの見方もある。ロマはスロバキアやチェコ、ハンガリー、ルーマニアを中心に中東欧の各地に散在する。”【8月22日 NNA.EU】とのことです。
また、フランスでも先月、ある国会議員のロマ差別発言が問題となっています。
****「ヒトラーはロマを十分に殺さなかった」発言で仏議員の捜査開始****
フランスの捜査当局は23日、ナチス・ドイツのアドルフ・ヒトラーがロマ民族を「十分に殺さなかった」と発言したとされる国会議員について、「人道に対する罪の擁護」の疑いで捜査を開始したと発表した。
問題の発言をしたとされるのは、仏西部ショレの首長も務めるジル・ブルドゥレックス下院議員。マニュエル・バルス内相は捜査当局の発表に先立ち、発言に対する「重い処罰」が妥当との意見を述べていた。同議員が裁判で有罪になれば、最大で禁錮5年と罰金4万5000ユーロ(約590万円)が科される可能性がある。
地方紙「Courrier de l'Ouest」のウェブサイトで公開された録音によると、ブルドゥレックス議員は21日、違法に野営地を設営していたロマ民族の人々に対し、「ヒトラーは十分に殺さなかった」と発言したとされる。
発言の前、ロマの人々は同議員に対して「ナチス式の敬礼」をしたという。
(中略)ジャンマルク・エロー首相はブルドゥレックス議員の発言について「選挙で選ばれた議員としてふさわしくない」もので「法によって罰することもできる」と述べた。また、同議員が所属する中道派・民主独立連合(UDI)の党内からも批判の声が上がっており、同議員は離党を強いられる可能性がある。
一方、ブルドゥレックス議員は、発言は文脈から切り離されたもので、録音も改ざんされていると主張している。
同議員は2010年11月、ロマ民族の野営地にトラックで突っ込むと脅した他、2012年11月にもフランスはロマ民族により「新たな侵略」を受けていると発言するなど、ロマ民族に関する発言が問題になっていた。【7月24日 AFP】
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ロマが差別対象となる理由のひとつには、現実に犯罪など治安上の問題を惹起していることがありますが、職業・教育など多くの面で差別を受けている現状では、生活のため、あるいは社会に対する不満などからそうした犯罪に走りやすいという事情もあります。
独自の文化や慣習を固守する閉鎖性についても、そうした形の生活においやる社会的差別・偏見の結果でもあります。
ロマの多くが暮らすルーマニアにおけるロマへの偏見・差別については、2010年10月22日ブログでも取り上げています。
問題の解決には差別ではなく寛容の精神が必要ですが、現実的問題を声高に叫び差別を公言する人々は、そうした対応を間の抜けた理想論に過ぎないと嗤うことでしょう。
そのあたりは、理想を捨て去り、自己の利益に固執する“醜さ”を良しとするか・・・という美学・品格の問題でもあります。