孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ロシア・モスクワ市長選挙  反プーチンのブロガー候補、従来にない選挙運動で善戦中

2013-08-30 22:12:59 | ロシア

(7月18日 モスクワ ナバリヌイ氏への横領罪実刑判決へ抗議して集まった市民 “flickr”より By Yuri Timofeyev http://www.flickr.com/photos/90006571@N00/9320652702/in/photolist-fcCMjE-fcCMjq-fcotzr-fcotBp-fcxa5s-fcx9Bm-fcx9dE-fchSSX-fchQV8-fcx8RJ-fcCMdE-fcCMeC-fcotEg-fcCMgL-fcCMfm-fbZiWt-fc2KhT-fch3NA-fch4ah-fch3iL-fch51h-fc2MER-fc2Kxt-fchSzk-fcx9pE)

決選投票に持ち込める可能性も
ロシアでは9月8日に首都モスクワの市長選挙が行われますが、反プーチンの先鋒に立つブロガーのナバリヌイ氏(37)が大統領側近の現職相手に善戦していると報じられています。

****ロシア:反プーチンのブロガーが存在感 モスクワ市長選****
ロシアの首都モスクワで9月8日に行われる市長選に立候補している反プーチン政権ブロガーのナバリヌイ氏(37)が存在感を示している。現職のソビャーニン氏(55)=6月に辞任し市長代行=が優勢を保つが、市民に直接支持を訴える手法で一定の浸透を見せている。

「モスクワからロシアを変えよう」をスローガンに掲げるナバリヌイ氏は連日、市民との対話集会を開催。汚職問題以外に、医療、年金、不法移民など身近な政策課題を取り上げている。選挙活動は一般からの募金やボランティアが支え、募金の使途をネットで公開するなど、従来のロシアの選挙で見られなかったスタイルを貫く。候補者6人のうち2位につけている。

ナバリヌイ氏は7月に横領罪で禁錮5年の実刑判決を受けて収監され、立候補見送りも取りざたされたが、国内に抗議行動が広がり釈放された。

全ロシア世論調査センターによると、7月上旬〜8月下旬にソビャーニン氏の支持率が54%から52%に下がる一方、ナバリヌイ氏は8%から11%と増加。ナバリヌイ陣営は「決選投票に持ち込めば逆転勝利の可能性はある」と指摘する。

モスクワは政治的自由を求める中間層が多く、昨年3月の大統領選で当選したプーチン氏の市内での得票率は47%と全国平均の64%を大きく下回った。

ナバリヌイ氏は18年の次期大統領選に出馬意向を示しており、今回の市長選は結果にかかわらず、プーチン大統領に対抗できる政治家としてのステップにつながるとの見方が出ている。【8月30日 毎日】
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反プーチン政権ブロガーのナバリヌイ氏の概略については、昨年1月の記事で「バーチャルな世界から政界に出て、将来は大統領になる可能性がある」とも紹介されています。

****ロシア:35歳ブロガー脚光 政権汚職追及運動を展開****
ロシアで(2012年)3月4日の大統領選を前に盛り上がっている反政府運動のシンボルとして、モスクワ在住のブロガー、アレクセイ・ナバリヌイ氏(35)が注目されている。英紙タイムズがこのほど発表した「今年注目される世界の100人」にロシアから唯一選ばれ、「バーチャルな世界から政界に出て、将来は大統領になる可能性がある」と指摘されている。

弁護士のナバリヌイ氏は2年前から自分のブログで政権の汚職を追及するキャンペーンを展開。昨年12月の下院選では、大統領復帰を狙うプーチン首相(59)が率いる与党「統一ロシア」を「ペテン師と泥棒の党」と名付け、他党への投票を訴えた。これがネットを通じて全国に広がり、与党の大幅議席減につながったといわれる。

ナバリヌイ氏は下院選の不正疑惑でも抗議行動の先頭に立って治安当局に拘束され、釈放時には大勢の市民に出迎えられて一躍「時の人」となった。昨年末の英BBCとのインタビューでは「プーチン体制を変えなければならない。それは我々次第だ」と強調。ロシアで自由かつ公平な選挙が実施されるのであれば大統領選に出馬する用意があると語った。

一方でタイムズ紙は、反プーチン色を強めるナバリヌイ氏が「でっち上げの罪で刑務所行きになる恐れがある」と指摘。03年に当時のプーチン政権と対立して逮捕され、今も服役中の元石油王、ホドルコフスキー氏(48)と同じ運命をたどる可能性に言及している。

タイムズ紙の「今年の100人」には、オバマ米大統領や北朝鮮の新指導者となった金正恩氏らが選ばれたが、ロシアのプーチン首相やメドベージェフ大統領は含まれていない。【12年1月22日 毎日】
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もともと、モスクワ市長選挙はもっと先の予定でしたが、プーチン批判層も多い首都モスクワの事情を考慮して、野党側の態勢が整わないうちに・・・というプーチン政権側の思惑で、前倒しで行われています。

****ロシア:早期の選挙狙いモスクワ市長辞任、再出馬へ****
ロシアのソビャニン・モスクワ市長は4日、2015年の任期を待たずに近く辞任したうえで、出直し市長選(任期5年)に再出馬する意向を表明した。モスクワで政権批判の動きが続く中、プーチン大統領側近の市長は野党勢力の準備が整う前に早期の選挙に踏み切る狙いとみられる。

市長選の実施は、プーチン露大統領の承認を経て決められる。ロシアでは昨年、州レベルの地方自治体(モスクワ市も相当)の直接選挙の復活を決めており、実施されれば、03年以来10年ぶりのモスクワ市長選となる。9月8日に予定されている統一地方選と同時期に行う見通し。

ソビャニン市長はプーチン大統領の「側近」で、10年に解任されたルシコフ前市長の後釜として市議会に承認された。今回の選挙で選ばれれば、任期は18年秋までとなる。政権側は次期の下院選(16年12月)と大統領選(18年3月)をにらみ、批判勢力が多い首都を掌握する狙いだ。

政権を批判する著名ブロガーのナバリヌイ氏も4日、出馬の意欲を示した。ナバリヌイ氏が横領罪で起訴されているが、プーチン政権と野党勢力が対決する可能性も出てきそうだ。【6月5日 毎日】
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政権側:正統性アピールのため保釈
ナバリヌイ氏は前出タイムズ紙が懸念していたように、横領罪で起訴され禁錮5年の1審判決を言い渡されましたが、政敵を排除する政治的な判決との批判の高まりを受けて、政権側が同氏を保釈して市長選立候補を可能した経緯があります。

政権側としては、市長選に立候補させたうえで選挙で退け、自らの正統性をアピールしたい・・・との思惑でしたが、想定外の展開もありうる状況となっています。

****露反政権ブロガーに実刑判決→抗議デモで保釈 「政敵排除」の批判回避****
ロシア西部キーロフの地方裁判所は19日、横領罪で禁錮5年の1審判決を言い渡された反プーチン政権の有力ブロガー、ナワリヌイ弁護士(37)を判決確定まで保釈する異例の決定を下した。

ナワリヌイ弁護士の実刑判決に抗議する無許可デモが18日夜、首都モスクワなどで行われ、約260人が一時拘束される事態となったのを受けた措置。当局側は「政敵排除」との批判をかわし、反政権派の動向を注視する構えとみられる。

 ◆G20会場付近も緊迫
18日のデモはインターネットのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を通じて呼びかけられ、モスクワ中心部では、最大約1万人が街頭に集結。20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の19日開幕を控えていた会場の周辺でも状況が緊迫した。

特定の裁判をめぐってこの規模の抗議行動が起きた前例はないとされ、モスクワで約200人、第2の都市サンクトペテルブルクで約60人が治安当局に拘束された。

モスクワでは2011年末~12年春、ナワリヌイ弁護士らの主導する大規模な反政権デモが断続的に行われたが、その後は下火になっていた。今回の裁判に対する抗議は、プーチン政権の超長期化や強権統治に対する不満が、大都市部でくすぶり続けていることを改めて示したといえる。

検察当局は19日までに、上級審による判決確定まではナワリヌイ弁護士を拘束する必要がないと申し立て、同弁護士はモスクワ滞在を条件に保釈された。

 ◆指導部内で意見対立
ナワリヌイ弁護士は9月8日のモスクワ市長選に立候補しているため、同弁護士の保釈によって出馬を可能にし、当選の予想される政権派候補の正統性を強調しようとの政権側の思惑が指摘されている。

また、同弁護士の処遇をめぐり、露指導部内で意見が対立しているとの見方も出ている。

通算3期目のプーチン政権は反政権派や非政府組織(NGO)を標的とした抑圧路線を推し進めており、今回の裁判もその延長線上に位置づけられている。実刑判決によって反政権派が勢いを得る可能性もあるが、地方部ではプーチン政権への支持がなお厚い。【7月20日 産経】
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ナバリヌイ氏は、“選挙活動は一般からの募金やボランティアが支え、募金の使途をネットで公開する”という、これまでのロシアではみられなかった選挙戦術をとっていますが、こうした手法への政権側の牽制もあるようです。

****反プーチンのブロガー、外国から寄付…露検察庁****
タス通信によると、ロシア検察庁は12日、プーチン政権を批判するブロガーで、モスクワ市長選(9月8日投票)の候補者アレクセイ・ナワリヌイ氏(37)が、外国から選挙資金の寄付を受けていたと発表した。
外国から選挙資金を受け取ることは禁じられており、同氏が新たな刑事事件の捜査対象となる可能性がある。

検察庁が調査した結果、ナワリヌイ氏の陣営がネットを通じ集めた資金に外国の個人や法人からの寄付が300件以上含まれていることが判明したという。
同氏の陣営は検察庁の発表内容を否定している。

ナワリヌイ氏は7月、ロシア中部キーロフ州の知事顧問を務めていた時期に公的資産を横領した罪で禁錮5年の実刑判決を受けた。同氏は無罪を主張した。【8月12日 読売】
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資金面だけでなく、選挙運動もユニークで、人々が多く集まる駅などの街頭に立ち、有権者と直接対話する、日本の辻説法のようなミニ集会を数多く行っているそうです。

注目される選挙後
今のところはまだ支持率は11%とのことですが、反プーチン本命として注目が高まれば、更に上積みして20%を超える可能性もあります。

万が一当選した場合はもちろんですが、仮に敗れたとしても相当の得票を集めた場合、当局側による保釈中の同氏への対応が非常に注目されます。
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