孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ドイツ  メルケル首相「多文化主義は失敗した」 移民の「社会適応」と「選別」重視へ

2010-10-21 20:03:23 | 世相

(10月3日 ベルリンで行われた右翼団体による小規模(50名程度)な「反イスラム」デモ
“flickr”より By Matthias Berg   http://www.flickr.com/photos/bergm13/5056372011/ )

【大統領:「イスラムもドイツの一部だ」】
欧州の移民問題、最近の移民排除の動き・右傾化については、これまでもたびたび取り上げてきました。
ドイツの場合、人口8200万のうち約1600万人が移民か外国出身で、イスラム系は約400万人とされています。

ドイツ連邦銀行のザラツィン理事は、「すべてのユダヤ人には特定の遺伝子がある」という発言の他、イスラム系移民増大についても「トルコ系住民は高い出生率を武器にドイツを征服しようとしている」「アラブ人とトルコ人はこの街(ベルリン)で、果物と野菜を売る以外の生産的な活動をしていない」などと発言して、9月2日解任されています。
「タブー」に踏み込んだこの発言には、メルケル首相も「断じて受け入れられない」と批判していますが、当時の世論調査では、51%がザラツィン氏の解任に反対していたように、ドイツ社会にはこうした発言を受け入れる素地が一定にあるようです。

一方、クリスチャン・ウルフ大統領は10月3日、北部ブレーメンで行われた東西ドイツ統一20周年の記念式典で「わが国はもはや多文化国家だ。イスラムもドイツの一部だ」と演説し、現在はイスラム教もドイツの一部だとの認識を示しました。
ウルフ大統領は、ドイツ国民にイスラム系の人びとに対する寛容さを求めると同時に、イスラム系移民に対してもドイツ社会に真に溶け込む努力が必要だと語り、イスラム系住民のドイツ社会への融合を目指す努力を訴えました。

【首相:「多文化社会を築こう、共存共栄しようという取り組みは失敗した。完全に失敗した」】
しかし、メルケル首相は「多文化主義は失敗した」と、今後の移民対策を厳しくしていく方針を打ち出しています。
****移民政策 独首相発言 「多文化主義は失敗」波紋*****
ドイツのメルケル首相が最近、「多文化主義は失敗した」と述べ、波紋を広げている。
各民族の文化を尊重する多文化主義は移民政策の理想モデルとされてきたが、移民を受け入れてきた国々で1990年代から文化摩擦が相次いで表面化。ドイツでも米中枢同時テロ後、イスラム原理主義への警戒心が強まり、金融危機やその後の財政危機で仕事や年金が移民に奪われるとの懸念が高まっていることが背景にある。

メルケル首相は16日、与党キリスト教民主同盟(CDU)の集会で、「ドイツは移民を歓迎する」と前置きした上で「多文化社会を築こう、共存共栄しようという取り組みは失敗した。完全に失敗した」と述べ、喝采(かっさい)を浴びた。
調整型の首相が慎重を要する移民問題にあえて踏み込んだのには事情がある。首相の後押しで選出されたウルフ大統領が3日、東西ドイツ統一20周年記念式典で「わが国はもはや多文化国家だ。イスラムもドイツの一部だ」と演説。これにCDU右派が反発し、姉妹政党・キリスト教社会同盟(CSU)のゼーホーファー党首が「ドイツは移民国家になるべきではない」と異文化国家からの移民受け入れ禁止を求めていた。

旧西独は労働力不足を補うため、1961年からトルコ、ギリシャなどの出稼ぎ労働者を大量に受け入れた。しかし、いずれは帰国するとして、99年に国籍取得条件を緩和するまで積極的な統合政策を怠った。
人口8200万のうち約1600万人が移民か外国出身で、イスラム系は約400万人とされる。しかし、「ドイツは移民国家」であることさえ認めたがらない空気が保守層に強く、最近の世論調査では3割以上が「ドイツは外国人に乗っ取られる」と回答した。

メルケル発言について、欧州の移民政策に詳しいアムステルダム大のエリナス・ペニンクス教授は「移民禁止という右派の主張や移民に寛容すぎる左派にクギを刺して、CDUを中道に誘導しようとした」と分析。
メルケル首相は今後、移民のドイツ語教育に力を注ぐ一方で、ドイツ基本法(憲法)に反するイスラム社会の強制結婚など、伝統的な習慣を規制していくとみられる。
欧州では、移民に寛容だったオランダやスウェーデンで極右政党が台頭。英紙フィナンシャル・タイムズは19日付の社説で「多文化主義は失敗ではない。もっと努力が必要なのだ」と述べ、極右勢力などに誤ったメッセージになりかねないメルケル発言に懸念を示した。【10月20日 産経】
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好調な経済情勢にもかかわらず、政治的にはメルケル首相は苦しい状況に追い込まれつつあり、右傾化の方針転換を図っているとの指摘もあります。
****「鈍牛」メルケルが右傾化の賭けに出た****
欧州最大の規模を誇るドイツ経済は絶好調。失業率も過去18年で最低水準に下がった。
だが経済の好調さは連立政権の中核を成すキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)の助けにはなっていない。CDU・CSUと保守的な自由民主党の連立政権に、多くの国民は失望している。
メルケル首相率いる連立政権は医療保険や税金などの問題をめぐる論争に明け暮れている。直近の調査ではメルケルの支持率は7ポイント下がって41%になってしまった。
州レベルの6つの選挙が来年早々に控えている。メルケルは生来の用心深さを捨ててリスクを冒す政治家に変身。穏健な現実主義者だったのが、右派的な姿勢を強めている。
メルケルは原発17基の稼働期間を延長する方針を打ち出し、福祉制度も見直す考えを示した。シュツットガルトの駅改築計画をめぐって反対派と警察隊が衝突したときも、明確に改築計画を支持した。
右傾化しか取るべき道はなかったのかもしれない。最近の調査では、回答者の3分の2がメルケルの連立政権には確固たる方針がないと答えている。連立相手の自民党の主張どおりに振る舞えば、少なくとも「確固たる方針」はアピールできる。【10月27日号 Newsweek日本版】
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【不適応移民は排除、「有能な移民」を確保】
移民政策に関しては、“ドイツ社会に適応していないとみなした移民を締め出す一方、労働力不足を補うために「有能な移民」を新たに確保すべきだとの考えが出ている”とのことです。
****ドイツ:移民「選別」探る 独語話さぬ共同体や貧困層締め出し 「優秀な」労働力確保****
 ◇独語話さぬ共同体や貧困層締め出し、「優秀な」労働力は確保ドイツで移民政策の見直しに向けた議論が活発化している。少子高齢化社会に対応するため、移民の活力を利用しようとする動きだ。政府内では英仏の移民政策を参考に、ドイツ社会に適応していないとみなした移民を締め出す一方、労働力不足を補うために「有能な移民」を新たに確保すべきだとの考えが出ている。【ベルリン小谷守彦】

議論の引き金は、デメジエール内相が9月上旬に発表した「社会適合プログラム」と称する政策案だ。
内相は「社会に適応する意思のない移民が移民全体の15%に及ぶ」と指摘したうえで、ドイツ語を母国語としない移民の若者が増えていることについて「対処が必要だ」と訴えた。
保守系の与党議員からは、内相の政策案公表を機に、ドイツ語を学ぶ意欲のない移民に対する生活保護費支給の打ち切りや滞在許可延長申請の拒否など「制裁」を加えるべきだとの意見が噴出した。
移民への強硬策が主張される背景には、移民の一部が都市部を中心に閉鎖的な共同体を形成し、貧困問題が顕在化していることなどがある。
ドイツは70年代に産業振興策の一環として、トルコなどから「ガストアルバイター」と呼ばれる移民を工場労働者として受け入れた。移民らは親族をドイツに呼び寄せて受け入れ政策停止後もドイツにとどまり、現在に至る。
 ◇ポイント制を検討
こうしたことから、移民希望者の技能を点数化して選別の基準とする「ポイント制」を導入すべきだとの意見が出ている。ポイント制は既に英仏両国で実施されている制度だ。移民問題に詳しいマインツ大学のハンブルガー教授は「ドイツは(少子高齢化の)人口動態の変化に対応するために、英仏の政策と近い方向を目指している」と、ドイツ政府が目指す政策の方向性を解説する。

 ◇英では常識テスト
英政府は、移民希望者に政治に関する知識などを問う「常識テスト」を課し、移民に一定の英語力も要求。フランス政府は中長期滞在の移民に国との「社会契約」を結ばせ、仏社会に適応する努力を義務付けている。
ドイツのブリューデレ経済技術相は、「人材を集めるためには謝礼金を払ってもよい」と、優秀な労働力としての移民を確保する姿勢を鮮明にしている。英仏を先例に「移民の社会適応」と「選別」を重視した意見が勢いを得つつある。

 ◇文化めぐる摩擦に悩む教師、制裁より補習を
移民人口の比率が高い都市部の学校では、教師たちが移民の子供たちの教育を巡って苦悩している。
ベルリン中心部のハインリッヒ・ザイデル小学校(児童540人)は、移民の子供が全校児童の97%と圧倒的多数を占める。半分はトルコ系の子供で、パレスチナなどアラブ系の子供が約4分の1を占める。

 ◇「負担大きい」
フラーダー校長(46)は「(移民の家庭では)森を見たことがなく、『森』という基本的なドイツ語の意味がわからないことがある」と指摘。スカーフ、水泳、断食などイスラム文化を巡る親と教師の摩擦も絶えず、「教師の負担は大きい」と嘆く。校長は「両親は積極的に学校行事に参加してほしい」と親が子供の教育に積極的にかかわるよう呼びかける。
別の地域にあるヘルベルト・フーバー実科学校(中等学校)は移民の生徒が95%を占める。
シューマン校長(60)は、ドイツ社会に適応しない移民に生活保護費の減額など事実上の制裁を加えようとする風潮について「制裁も役立つかもしれないが、重要なのは移民の子供たちが将来、生活保護を受けなくてもよいようにすることだ」と述べ、学校で行われている無料のドイツ語補習授業を拡充するよう訴えた。【10月21日 毎日】
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“ドイツ社会に適応していないとみなした移民を締め出す一方、労働力不足を補うために「有能な移民」を新たに確保する”というのは、受入れ側に都合のいい話ではありますが、現実に移民増加が社会にもたらす影響の大きさを考えると一概に否定できるものではありません。

多くの社会問題の責任を移民に負わせるような移民排斥的風潮に賛同はしませんが、一旦受け入れた移民は家族を呼び寄せ、次世代は母国語も話せず移民先でしか暮らせない状況になります。
そうした点を踏まえて、受け入れる以上は単なる便利な労働力としてではなく、移民の社会適応について腹をくくった対応が必要になります。

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イスラム社会における女性への「しつけ」 アフガニスタンの女子教育

2010-10-20 21:59:48 | 世相

(08年11月 アフガニスタン・カンダハルで、登校途中にタリバン支持者によって顔に酸をかけられた17歳の女性 “flickr”より By tanweer1
http://www.flickr.com/photos/7282565@N08/3034343433/ )

【実効をあげていない女子差別撤廃条約】
私自身は特にフェミニストでもありませんし、女性の権利云々を主張する者でもありませんが、弱い立場にある女性を食い物にしたり、不満のはけ口として女性に暴力をふるったり、あるいは、女性を自分の付属物のように扱う・・・そうした行為については到底賛同できません。

****世界の女性の3分の1が暴力を受けている、国連CEDAW副委員長*****
国連の女性差別撤廃委員会の鄒曉巧副委員長は12日、米国ニューヨークの国連本部で記者会見し、全世界の女性の3分の1以上が、性行為を強要されたり、配偶者や家族から暴力や虐待を受けていると述べた。
この数字は国連人口基金がまとめた最新報告書に基づくもの。さらに世界各国で多くの女性や少女たちが売春行為を強要されており、毎年、5歳から15歳の少女たち200万人が売春市場に出されているという。
また1979年に採択された「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(女子差別撤廃条約)」は186か国が批准しているが、多くの国で条約が実効を挙げていないと述べた。国連加盟国のうち米国、イラン、スーダンなど6か国が女子差別撤廃条約をまだ批准していない。【10月13日 AFP】
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【妻子への暴力「しつけとして許される」】
近年、いろんな国際的問題でイスラム的価値観と日本や欧米の価値観の違いが問題になりますが、イスラムの女性に対する扱いは、なかなか理解しがたいものがあります。
庇護すべきものという考え方は、基本的に同等の権利を認めておらず、往々にして庇護される立場の者の意思・権利を無視したことにもなりかねません。

****UAE:妻子への暴力、最高裁が一部容認…傷残さないなら*****
アラブ首長国連邦(UAE)の最高裁は、男性による妻子への暴力について、傷が残らないことなどを条件に「しつけとして許される」との判断を示す判決を出した。
18日付の同国ナショナル紙(電子版)によると、男性は家庭内で妻や23歳の娘に殴るけるなどの暴行をしたとして罪に問われた。最高裁は、イスラム法では、傷やあざが残らないこと▽子供が18歳未満であることを--条件に、妻子へのしつけが認められるとの判断基準を提示。そのうえで、男性は妻の歯を欠けさせるなどの傷を負わせ「イスラム法の権利を乱用した」と指摘した。男性は有罪判決を受け、500ディルハム(約1万1000円)の支払いを命じられた。
同紙は社説で「多くのイスラム法学者が、いかなる家庭内暴力もイスラム法に反すると判断している」とし、判決が暴力を一部容認したことを問題視した。【10月19日 毎日】
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女性に車の運転や一人旅を禁じているサウジアラビアなどのイスラム湾岸諸国と比べ、アラブ首長国連邦は比較的、寛大なイスラム国と見られているそうです。しかし、司法制度にイスラム法が組み込まれている点では同様です。

事件となった男性は、妻だけでなく23歳の娘にも暴力を加えており、被告が妻を負傷するほど殴ったことに併せ、娘の23歳という年齢が、しつけを必要とする「幼い子ども」とはみなされないことを挙げ、裁判所は被告の暴力はイスラム法(シャリア)に違反するとの判決を下しています。
しかし、記事にもあるように、このことは傷が残らない程度の暴力、18歳未満の子供への暴力なら「しつけ」として許されるという判断の裏側でもあります。
「多くのイスラム法学者が、いかなる家庭内暴力もイスラム法に反すると判断している」というナショナル紙社説が実態に即したものであり、大多数の国民がそうした考えであればいいのですが・・・。

【「メンバーの中にそのような活動をする者がいたとしても止められない」】
イスラム社会における女性の権利をとりあげるとき、イスラム社会の中でも女性に厳しい立場をとっているアフガニスタンのタリバンのことが気にかかります。
アルカイダというテロリスト一掃のために、彼らをかくまうアフガニスタンに攻撃をしかけ、多くの市民の命も犠牲にしているアメリカのアフガニスタンでの戦いに対しては多くの批判があります。
ただ、現実問題として、今アメリカが手を引けばカルザイ政権などはすぐに崩壊し、タリバン支配、あるいは軍閥が割拠して争う社会が復活することでしょう。
それがアフガニスタン国民の選択であるなら仕方ないところでもありますが、タリバンなどが支配する社会における女性の立場には危惧を感じざるを得ません。

アフガニスタンでは1980年代、社会主義政権下で都市部を中心に女性の社会進出が進みましたが、90年代に内戦が激化すると教育自体が衰退。その後、タリバン政権は女子教育を禁止しました。
01年の同政権崩壊で女子教育は再開。高校までの就学児童・生徒700万人のうち女子の割合は37%にまで回復しています。

しかし、タリバンの攻勢に伴って、女子教育への妨害も増加しています。
8月にはカブールの女学校で何者かが噴霧器で殺虫剤のようなものをまき、85名が病院に運ばれる事件がありました。
アフガニスタンではこれまでも夜間に校舎に火を放つなどの女学校攻撃は行われていましたが、08年11月に南部カンダハル州で登校途中の女子生徒11人と教師4人に硫酸のような液体をかけたとして、反政府武装勢力タリバーンの支持者らが逮捕された事件、昨年5月に東部のカピサ州で毒性のガスを使った学校襲撃があり、女子生徒ら126人が意識を失うなどの被害に遭った事件、隣のパルワン州で同月、化学物質の粉末がまかれて60人が一時意識を失った事件など、最近になって毒物や劇物を使って生徒や教師を直接襲って恐怖を植え付ける事件が増えています。
「毒ガス攻撃」は今年4月以降、北部クンドゥズ州とカブールで計5件起きています。【10月16日 朝日より】

8月に「毒ガス攻撃」を受けたカブールの女学校は、それでも一日も休まずに授業を続けたそうです
****女学校  襲撃に負けない 1日も授業休まず***** 
■女子教育に強い反対 
01年、アフガン戦争でタリバーン政権が崩壊し、女性たちは抑圧から解放されると期待した。しかし戦争は続き、地方を中心にタリバーンは息を吹き返す。時代が後戻りするような重苦しさが漂う。
一連の女子学校襲撃に対し、犯行声明などは出ていない。タリバーン情報部門の幹部は「我々は女子教育に反対しているが、生徒に硫酸をかけたり、毒ガスを使ったりはしない」と組織としての関与を否定する。だが、「メンバーの中にそのような活動をする者がいたとしても止められない」と付け加えた。

地元のNGO「アフガン女性教育センター」(AWEC)のライハナ・ジャワドさんは女子教育に不満を持つのはタリバーンなどの勢力に限らないと指摘する。「女性の社会進出に対する男性の危機感は、地方だけでなく首都カブールにもある」 アフガン社会に根強く残る保守的な思想が事件の大きな背景にあるとの指摘だ。
カマールの40代の男性運転手は「教育を受けて女性が仕事に就けば、アフガンの文化やイスラム法はないがしろにされてしまう」と女性の高等教育に不快感を隠さない。

ザビウラ・エスマティ女学校のムフタリ副校長は、事件後一日も学校を休まなかった理由について「休めば生徒に動揺が広がり、女子教育を阻もうという犯人の狙い通りになってしまう」と説明する。「古い考え方を変える唯一の方法は女性に教育を与えること。多くの女性が外で働き、男性を助けられるようになって初めて、男女対等の意識が広がる」と言う。
生徒たちも、恐怖と戦いながら学校に通う。意識を失ったルクサールさんは事件の3日後には登校した。「学校ば友達がいて楽しいし、将来は裁判官になりたいから勉強を続けたい」。3日間の入院を余儀なくされた12年生政マディナさん(18)も、退院後すぐに学校に来た。「怖いけど、来年は大学進学か留学をしたい。夢は映画監督になること」と目を輝かせた。【10月16日 朝日】
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組織の関与を否定しながらも、「メンバーの中にそのような活動をする者がいたとしても止められない」という言い様は腹立たしいものがあります。
ただ、「教育を受けて女性が仕事に就けば、アフガンの文化やイスラム法はないがしろにされてしまう」という男性の発想にみられるように、男性優位の考えはタリバンにとどまるものではありません。
イスラムとか文化を盾にしていますが、特別の教育もうけていない男性にとっては、女性への教育は、男性であるというだけで与えられていたこれまでの優位を脅かす不快なものに思えるのではないでしょうか。

別にアメリカはアフガニスタンに民主国家を建設するために戦っている訳でもありませんし、どのような社会をつくるかはアフガニスタン国民の選択でもありますが、学校に通う女生徒に硫酸をかけるような行為がまかり通る社会になることには賛同できません。

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ミャンマー  来月7日総選挙 圧倒的苦戦の野党勢力

2010-10-19 17:55:59 | 国際情勢

“flickr”より By Burma Partnership
http://www.flickr.com/photos/burmapartnership/4658429901/ )

【“民政移管”を偽装した総選挙】
11月7日にはミャンマーの総選挙が行われます。
これまでも繰り返し取り上げてきたように、また、多くのメディアが報じているように、今回選挙は軍事政権のコントロール下で行われ、“民政移管”を装いながら、実質的に現在の軍事政権を維持しようというものです。
民主化運動の象徴であるアウン・サン・スー・チーさんは軟禁されたままで選挙への関与を認められず、彼女が率いる国民民主連盟(NLD)は彼女の総選挙を認めないという意思を反映して、総選挙に参加せず解党の途を選択しました。

軍事政権は08年、新憲法を成立させましたが、新憲法には、議会の総議席の4分の1を軍部が指名するといった条項が含まれています。
更に、指名枠以外の部分でも、軍による議会の直接的な支配を目指して、多くの軍幹部が軍を離れ、テイン・セイン首相が党首を務める軍政直系の政党「連邦団結発展党」(USDP)から立候補します。

着々と準備を進める軍事政権側に対し、野党は厳しい戦いを強いられています。
公務員や僧侶は立候補できません。
各政党は、政党登録に当たって少なくとも1000人分の党員名簿を提出しなければならないとされましたが、投票日の発表から届け出まで半月足らずで、党員・候補者集めもままならない状態でした。
また、治安当局者が党員を訪ねる「嫌がらせ」も相次ぎました。
平均年収に匹敵する1人500米ドル(約4万3千円)の供託金も大きな負担となりました。

選挙活動についても、“立候補者は少なくとも1週間前には選挙活動を行う許可を得なければならない。スローガンを叫んだり、旗を掲げることは禁止。演説では軍事政権を批判したり、「治安に悪影響を及ぼして」はならない。”といった規制が課されています。

更に、選挙管理委員会は、主に少数民族が暮らす5州の一部地域で投開票を実施しないと発表しました。理由は「自由で公正な選挙を実施する見込みがない」ということですが、武装組織の政府軍編入を求める軍事政権に反発する少数民族を選挙から排除する方針に踏み切ったとみられています。
少数民族による選挙妨害を排除し、また、そうしたエリアでの軍事政権側の選挙敗北を未然に防ぐ意味合いがあると考えられます。

【スー・チーさんは選挙ボイコット】
アウン・サン・スー・チーさん自身については、選挙終了後の13日が自宅軟禁期限ですので、選挙の結果が確定したその時点で解放される見通しが政府高官から明らかにされています。
彼女の選挙権については、当初発表された有権者名簿の中に名前は含まれておらず、選挙権を奪われた形となっていましたが、欧米諸国の強い反発を受け、選挙管理委員会はスー・チーさんを有権者名簿に追加し、投票を認める措置をとっています。
しかし、当然ながら、彼女は投票しないことを表明しています。

****スー・チーさん、総選挙「投票しない」 ミャンマー*****
ミャンマー(ビルマ)の民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんは12日、弁護士と面会し、11月7日に実施される総選挙では投票しない考えを伝えた。自宅軟禁中のスー・チーさんに対し、選挙管理委員会は投票を認める措置をとったが、軍事政権主導の総選挙に反発した形だ。【10月13日 朝日】
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【「選挙後に魔法のように一夜で民主主義が現れるわけでも、軍政が突然消えるわけでもない」】
こうした圧倒的に不利な状況下で戦う野党勢力にとって、大きな痛手は、民主化運動の象徴であるスー・チーさんの協力・支援が得られなかったことでしょう。

****軍政着々、民主化勢力は苦戦=スー・チーさんの支援得られず―ミャンマー*****
・・・・軍事政権側は、地方選を含めて1100人以上の候補者を擁立し、準備を着々と進めている。一方、民主化勢力は頼りのアウン・サン・スー・チーさんの支援も得られず、極めて苦しい戦いを強いられている。
民主化勢力の中核とされる国民民主勢力(NDF)は、選挙をボイコットしたスー・チーさん率いる最大野党の国民民主連盟(NLD)から分派した。約160人の候補者を立て、9月末には少数民族などの5党との連携を決めた。
しかし、スー・チーさんはNDFに批判的とされる上、弁護士を通じ、支援者に「支持政党がなければ、棄権すべきだ」と訴えている。スー・チーさんの後ろ盾のないNDFが、民主化を求める国民の受け皿となるのは難しい情勢だ。
これに対し、軍政側は資金力、組織力ともに圧倒的。民主化勢力側からは「優劣の差は歴然。予想されたような妨害行為すらない状態」との声も上がっている。【10月7日 時事】
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野党勢力側には、同じ民主化勢力でありながら、選挙を「見せかけ」と非難し、ボイコットを呼びかける旧NLD幹部への不満が募っているといるとも報じられています。

****瀬戸際に立つ民主化の象徴******  
・・・・・・NDF幹部のキン・マウン・スエ氏は、今月9日の反軍政誌「イラワジ」(電子版)のインタビューで、「われわれが選挙を戦っているのに、彼らは動かずにしゃべっているだけだ」と、NLD幹部を痛烈に批判した。
ただ、スー・チーさんの高潔さと英明さは尊敬しており、彼女が指示するならば、選挙後、民主化勢力の再結成のため、NDFを解散し、NLDと再び一緒になる考えを示した。
同時に、同氏は「選挙後に魔法のように一夜で民主主義が現れるわけでも、軍政が突然消えるわけでもない」などとして、スー・チーさん側に現実的な対応を呼びかけた。

国会議員の経験を持つキン・マウン・スエ氏は、「民主化実現には、強い中間層の成長が必要」として、5年をめどに「経済的民主主義」を実現し、その後、「社会的民主主義、政治的民主主義」の実現を目指す考えを明らかにしている。
これに対し、スー・チーさんは12日、ヤンゴン市内の自宅で面会した側近に、NLDが解党し支持する政党がなくなったことや、自宅軟禁を含め服役している人に投票権は与えられていないことを挙げ、改めてどの政党にも投票しない考えを示したという。
スー・チーさんの発言が、キン・マウン・スエ氏の呼びかけを知った上でのものかはわからない。さらに、選挙後の「和解」について、どう考えているのかも、現時点では不明だ。(後略)【10月17日 産経】
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冒頭にも書いたように、実質的に軍事政権を維持するための総選挙、完全に軍政にコントロールされた総選挙であることは事実ですが、一方で、ミャンマーの現実を考えると、そこに参加していく以外に民主化を現実のものとしていく方法が他にあるのでしょうか?
選挙の不当性を訴える激しい国際批判は起こるでしょうが、中国やインドの協力を取り付けている軍事政権側は、“国際批判”など意に介さないでしょう。
「われわれが選挙を戦っているのに、彼らは動かずにしゃべっているだけだ」「選挙後に魔法のように一夜で民主主義が現れるわけでも、軍政が突然消えるわけでもない」とのNDF幹部スエ氏の言葉に共感します。

****ミャンマー:総選挙期間中、外国人記者の取材認めず****
ミャンマーからの情報によると、同国選挙管理委員会は18日、首都ネピドーでミャンマー駐在の各国外交官らを対象に会見し、11月7日に投票が行われる総選挙の期間中、外国人記者の取材や国際選挙監視団を受け入れない方針を明らかにした。理由については「必要性がない」と説明した。
国際社会は軍事政権に対し、自宅軟禁が続く民主化運動指導者アウンサンスーチーさんを解放し、自由で公正な選挙の実施を求めているが、軍政側は「複数政党が参加する公平な選挙」と主張。外国メディアや選挙監視団の受け入れを拒否したことで、軍政は強硬姿勢をより鮮明に打ち出した。

選管のテインソー委員長は会見で、「外国メディアの代表として(最大都市)ヤンゴンに地元記者が常駐し選挙取材ができるため、外国人記者を受け入れる必要はない」と指摘。外交団については「投票当日、外交官や国連機関を対象に視察ツアーを予定している」と説明した。【10月18日 毎日】
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ロシア  社会を蝕む汚職・腐敗、非効率

2010-10-18 18:06:18 | 世相

(アメリカ・スタンフォード大学で、ロシアの10の目標(教育、透明性と腐敗一掃、絶えざる政治改革、信頼できる司法制度など)について語るメドベージェフ大統領 “”より By jurvetson
http://www.flickr.com/photos/jurvetson/4730224329/ )

役人の汚職や非効率さは、どこの国でも大なり小なり指摘されるところですが、新興国の一角を目指すロシア社会も根深い問題を抱えているようです。

【汚職追放で、市民生活混乱】
下記は、メドベージェフ大統領の進める腐敗一掃が、かえって役人の仕事へのやる気なさを助長しているとの報道です。
****「賄賂なし=役人やる気なし」地獄の日常****
腐敗撲滅でクリーンにはなったけど、賄賂をもらえなくなった役人は最後の人間らしささえ失ってしまった!

ロシアの役所が非効率なのは今に始まった話ではない。ドミトリー・メドベージェフは08年に大統領に就任した際、国を挙げて汚職と戦うと宣言した。それ以来、贈収賄を減らし効率を上げることを目指して官僚制度の中央集権化を進めてきた。
だがこの改革は、腐敗が最も進んだ政府上層部の汚職を減らすより、市民生活を混乱に陥れているという批判が強い。
賄賂が禁じられた今のロシア人の暮らしがどんなに地獄か。それを知るには、一市民の目線から平均的なお役所仕事のあり方を追ってみるのが一番。中でも遺産相続がわかりやすいだろう。

私の祖母は去年の11月に他界した。それから半年経ってようやく、家族は相続の手続きに取り掛かることができた。これから書くのは、祖母の唯一の相続人である私の母が、家族の暮らすアパートの名義を祖母から自分に書き換えたときの苦労話だ。
母はまず、祖母がアパートを所有していたことを示す書類を市の公証役場に提出しなければならなかった。提出を受けて公証役場は所有権移転の手続きを開始するのだが、ここでさまざまな書類やら証明書を出すよう求められる。
オリジナルの書類だけでなくコピーも添えなくてはならないため、母は全部で20部もの書類をそろえなければならなかった。必要な書類を集めるために、母は不動産や相続に関連する6つか7つの役所を回る羽目になった。
これらの窓口の営業時間たるや、不便という一言では片付けられない。どの窓口も時間によって業務内容が異なる。午前中は提出書類を受け付ける時間で午後は各種の承認や政府の認可書類を交付する時間という風に。3〜4時間しか開いていない窓口に書類を提出するために、人々は朝早く、場合によっては前の日の夜から列を作る。

役所に手続きを支援する姿勢はほとんど見られない。電話をかけてもまずつながらない。インターネット上にも手続きに関する説明はほとんどなく、あってもあいまいだったり省略されすぎていたりして、必要な書類が何と何なのかまるではっきりしないのだ。
あらゆる書類のコピーを添付することを求められる場合もあれば、求められないこともある。コピーの添付を求められたが手元にないという場合も、窓口にコピー機はない。 
手数料の支払いもその場ではできない。汚職撲滅運動の影響で、カネを直接役所に渡すことは許されなくなったのだ。
国営銀行で支払いを済ませたら、領収書を再び窓口に持参しなければならない。支払いのために列に並んだかと思えば、領収書を提出するためにまたもや並ばなければならないのだ。
どの役所も稼動しているのは全体の50%以下といったところ。例えば窓口が3つあれば、開いているのはたいてい1つだけ。待合室が2つあれば、椅子が置いてあるのは片方の部屋だけだ。十分に椅子が用意されているところなんて1つもない。

まるでジョージ・オーウェルの世界
目指す許可や承認が降りるまで下手すれば何カ月もかかる。たいていの場合、承認書類の受け取りには発行窓口の受け付け時間の前から列に並ぶ必要がある。
これだけでも相当につらいのにそれに輪をかけるように、こうした窓口には通常、エアコンの設備はない。困り果て、いらいらしたお年寄りがたくさん来ているのにだ。職員に人当たりのいい人はまずおらず、好きな時間に休憩を取っているようだ。
手続きをスムーズに進めるためのうまい手はないのかって? 昔は役人がその役目を果たしてくれた。【9月30日 マヤ・ドゥクマソバ Newsweek】
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【「道路関連のカネの7割が腐敗した役人とそれに近い企業トップの懐に消えている」】
次は、道路建設が進まず物流を阻害しているロシアの道路事情の背景にも、官僚機構の腐敗体質や非効率があるとの指摘です。

****劣悪な道路事情 進まぬ整備、腐敗を象徴****
ロシアの道路事情というと首都モスクワの大渋滞が有名だが、問題は決してそれだけにとどまらない。首都を少し離れれば幹線道路でも陥没だらけの片側1車線が普通で、物資の輸送効率も欧州方面からロシアに入った途端に大きく落ちる。ロシアの道路が質量の両面で不足していることの根底には建設費が高いという問題があり、このことは広大なロシアが発展する上での大きな障害にもなっている。

各種統計によると、ロシア国内の道路総延長は1995年の94万キロから2007年の96万3千キロとわずかしか増えておらず、08年の建設も2500キロにとどまった。これに対し、国土面積がロシアの約56%の中国では08年だけでロシアの21倍超にあたる5万3600キロが建設され、総延長は190万キロとロシアの約2倍に達した。ロシアでは、5万以上の居住区に舗装道路が通っていない。

既存道路の質も問題だ。自動車所有者の社会団体「選択の自由」のルイサコフ代表は「路面の平坦(へいたん)さや重量耐久性など法的基準に合致している道路は連邦道の37%、地方道の24%にすぎない。使われている技術が古いために道路の“寿命”は短く、標識の設置などにも問題は多い」とし、「状況は危機的だ」と話す。世界経済フォーラムの国際競争力ランキングは、ロシアの道路の質を133カ国中の118位と評価している。

「ロシアでは自動車や燃料関連でわれわれが支払っている税金のほとんどが他の分野の支出に振り向けられており、予算における道路の優先順位は最も低い」。ルイサコフ氏は道路建設が進まない最大の理由は予算の分配方法にあるとし「多くの地方では新規建設はおろか修復にすら金が回っていない」と説明する。

資金難に加え、高すぎる道路建設費が状況をさらに悪化させている。ロシア誌の報道によれば、舗装道路1キロの“平均価格”は中国で220万ドル(約1億8600万円)、米国で590万ドル、欧州連合(EU)が690万ドルなのに対し、ロシアでは1760万ドルと突出。モスクワで建設が進められている第4環状道路の1キロあたり建設費は、米カリフォルニア州で07年に供用が始まった高速道路の108倍という額だ。
こうした内外価格差をめぐっては、政権側から「統計の取り方が恣意(しい)的だ」といった反論がある。また、ロシアの国土が広大で気象条件が厳しく、建設資材の運搬にも困難が伴うといった特殊事情も考慮する必要があろう。ただ、異常な建設費の根底に官僚機構の腐敗体質や非効率があることでは多くの専門家が一致している。

反政権派に転じたネムツォフ元第1副首相は露メディアに「道路関連のカネの7割が腐敗した役人とそれに近い企業トップの懐に消えている」と指摘。道路関連の入札は最初から上積みされた評価額に基づいて行われており、受注側が落札額の3~5割をキックバックする構図があるとみている。業者側の手抜き工事も日常茶飯事だ。(中略)
露誌「新時代」によれば、EUではモノが1日1千キロのペースで輸送されるのに対し、ロシアでは300キロ以下。劣悪な道路事情は、ロシアの消費財価格を押し上げている大きな要因の一つとなっている。ロシアは交通事故による死者が10万人あたり25・2人と世界ワースト2でもあり、道路事情の改善は急務というほかない。【10月5日 産経】
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【“監視”が必要な議員活動】
社会に広がる腐敗・汚職、非効率。
それを正していくべき議会でも非常識がまかり通っているようです。

****出席88人なのに賛成449人!? 露下院で大規模代理投票発覚*****
ロシア下院で大規模な「代理投票」が行われたことが判明し、下院の委員会は個人を識別できる高精度カメラを議場内に設置するといった対策の検討に乗り出した。
しかし、下院で圧倒的多数を誇るプーチン首相の与党「統一ロシア」には、私的なビジネスで忙しい議員が多く、“監視強化”を渋っているようだ。

問題が表面化したのは5月。法案採決のさい、下院(定数450)の議場には88人しか出席していなかったのに、449人分の「賛成ボタン」が押されたのが発端だった。
インターネット上には、議場内を駆け回って欠席者のボタンを次々と押す議員を撮影したニュース映像も出回っている。
14日付の有力紙「独立新聞」によると、下院には改善を求める“忠告”がメドベージェフ大統領からも寄せられた。このため、個人を特定できる高精度のカメラを設置し、個々の議員の入退場を把握するシステムの導入案も出された。しかし、費用は最低で1千万ルーブル(約2700万円)かかるとの試算もあり、下院当局者が難色を示したという。

同紙は、「最も“出席率”が悪いのが統一ロシアの議員であることは、下院の関係者なら、みな知っている。彼らは多数の議席を占めているだけでなく、(議員報酬以外に)別の収入がある比率も高い」と論評。同党が改善策をとろうとしないのは、ビジネスにいそしむ彼ら自身の首を絞めることになるからだ、との見方を示した。
統一ロシア所属の下院議員は315人と全議席の7割に達し、同党単独で憲法改正案も可決できるほど。与党の翼賛体制は権力基盤の確立というプーチン氏の戦略に沿って生まれたものだが、当の議員たちはその“恩恵”を別の方面で生かしたようだ。【10月18日 産経】
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日本でも「代理投票」が問題になった議員や、あまり国会審議に参加しない“大物政治家”などがいますので、これもロシアだけの問題ではありませんが、“出席88人なのに賛成449人”というのは、あまりと言えばあまりな状況です。
ロシア社会の改革を進めたいメドベージェフ大統領ですが、道は遠く険しいようです。

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クルド人問題、トルコでは和解交渉開始  イラン・イラク国境では密輸ビジネス

2010-10-17 17:15:49 | 国際情勢

(イラン・イラク国境付近で遊牧するクルド人の少女 写真は牧歌的ですが・・・・
“flickr”より By Shivan Sito http://www.flickr.com/photos/shivan1/4802763288/in/photostream/ )

【イラク:混乱の火種】
クルド人は、トルコ・イラク北部・イラン北西部等、中東の各国に広くまたがる形で分布し、人口は2500万~3000万人で、「独自の国家を持たない世界最大の民族集団」と言われています。

周知のように、総選挙後の連立政権交渉が難航し、組閣に至るまでの期間で世界記録を更新しているイラクにおいては、クルド人系の政党の扱いがひとつのカギになっています。また、石油産出地域でもあるキルクークのクルド人自治区への帰属を決める住民投票も先延ばしになっており、取り扱い次第ではイラク再混乱、場合によってはトルコ・イランを巻き込んだ混乱の火種にもなりかねません。

【トルコ:融和の兆し】
一方、トルコでは、従来からクルド人系の反政府組織「クルド労働者党(クルディスタン労働者党)(PKK)」と政府との確執が続いていましたが、若干動きが出てきたとの報道があります。

****トルコのクルド人問題に解決の兆し*****
トルコでは、分離独立を求めるクルド人の武装組織と政府軍の抗争で36年間に4万人以上の命が失われた。この長い熾烈な戦いに、ようやく終結の兆しが見えてきた。エルドアン首相が先週、クルド労働者党(PKK)のアブドラ・オジヤラン党首(服役中)と交渉に入ったことを暗に認めたのだ。

つい最近まで、PKKとの交渉は軍の猛反発を招き、政権の命取りになりかねないものだった。だが9月の国民投票で、軍権限の制限を盛り込んだ憲法改正案が過半数の支持を獲得。政府は軍に遠慮せず、交渉できるようになった。
一方で、PKKの弱体化も目立つ。ここ3年余り、米軍の支援を受けたトルコ軍がイラク北部の山岳地帯にあるPKKの拠点を猛攻。トルコ国内のクルド人の間でも、PKK離れが進みつつある。
問題はクルド人の自治拡大要求をどこまで認めるかだが、これについても合意形成が期待できる。トルコ経済が急成長を遂げる今、大半のクルド人は独自の言語と伝統を守れるなら、完全に独立する必要はないと考えているからだ。
トルコの一部タカ派はいまだに、クルド文化の独自性を認めれば国家の統合が脅かされると警戒する。だが、民族的多様性を受け入れることで流血沙汰が収まるなら、取るべき道は明らかだろう。【10月20日 Newsweek】
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もともと、エルドアン首相・与党「公正発展党(AKP)」は、選挙においてはクルド人からの支持を背景にしている側面もあって、軍に比べるとクルド人に融和的な立場にありますから、この交渉については期待も持てます。何より「トルコ経済が急成長を遂げる今、大半のクルド人は独自の言語と伝統を守れるなら、完全に独立する必要はないと考えている」という時代の流れが大きく影響しそうです。

【イラン:毒ガスと密輸】
イラク、トルコにくらべて、イランのクルド人については、あまり報道されることがありませんが、トルコのPKKと密接な関係にある反体制クルド人組織「クルド労働者党」(PKK)の反政府テロ活動が続いています。

****警官ら5人射殺=クルド系地域でテロ相次ぐ―イラン****
イラン西部コルデスタン州の州都サナンダジュで7日、2人組がパトロール中の警官らに発砲し、ロイター通信によると、5人が死亡、9人が負傷した。犠牲者には一般市民も含まれている。地元メディアは、「反体制勢力の犯行」とする州当局の見方を伝えた。
同州周辺には少数民族のクルド人が多く居住しており、クルド系の反政府武装勢力と治安当局の衝突がたびたび発生。先月22日にも同国北西部のクルド人居住地域マハバードで軍事パレード中に反体制派によるとみられる爆弾テロがあり、12人が死亡、約80人が負傷した。【10月8日 時事】
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そうした反政府活動が続くイランのイラク国境近いクルド人居住エリアに関する、別の視点の話題もあります。
****イラン:「密輸ビジネス」活況 経済制裁下で需要****
核開発問題を巡る相次ぐ経済制裁で外国との商取引が制限されるイランで、「密輸ビジネス」が活況を呈している。イラク国境に近いイラン北西部の町、サルダシュトでは、規制をすり抜け命がけで運ばれた最新の電化製品があふれていた。町ではほぼ唯一の産業だが、国境警備の取り締まりは厳しく、命を落とす「運び屋」も後を絶たないという。【サルダシュト(イラン北西部)で鵜塚健】

テヘランから西へ約500キロ。イラクとの国境まで約15キロに迫った山間にある少数派クルド人の町サルダシュト。約150の問屋が入る「国境物流センター」には軽快なポップスが流れ、テヘランなどから訪れた取引業者や家族連れが買い物を楽しんでいた。
日本製の最新の液晶テレビやカメラ、中国製の炊飯器などが並んでいるが、大半は密輸品だ。中国製の偽ブランド品も目立つ。
電化製品を扱う問屋の男性(27)が実態を語る。日本や中国、東南アジアから船で運ばれた商品は、アラブ首長国連邦のドバイを経由してイラク北部へ。国境付近で馬やロバに積むか人力で背負って山を越え、イラン側へ持ち込まれる。運ぶのは低賃金で雇われたイラク人で「馬は一度に300キロ、人なら100キロ運ぶ」という。

イランの核問題をめぐって、国連安保理は06年12月以降、相次いで経済制裁を決議した。外国企業とイラン国内の銀行との取引が制限されて日本など先進国からの消費財輸入は軒並み減少。さらに、高性能のパソコンやゲーム機は、軍事転用の恐れがあると禁輸対象になった。ドバイなどを迂回(うかい)した輸入品もあるが、価格が高く、入ってくる商品の数も減少傾向にある。それだけに、密輸品の需要は高まるばかりだ。
酒類も重要な密輸品だ。飲酒厳禁のイランでは裏市場での需要が大きく、大きな利益を得られるからだ。
問屋は、輸入品の金額と見合う商品をイラン側からイラクに送り返して代金を相殺。支払いが必要な場合には地下銀行を通じてドバイの銀行に米ドルで振り込むのだという。同センターの隣では、約450店が入る新たなショッピングセンターが建設中だ。

密輸品を隠して売る商店は、当局に黙認されている。だが、クルド人による独立運動を抱える同国北西部の国境警備は、イラクやトルコのクルド人組織との連携を警戒してか非常に厳しい。密輸品を運ぶ業者への取り締まりも強化されており、国境付近の山中で射殺された「運び屋」は「この数年間で100人以上」と関係者は語る。
一方でイラン政府は、クルド人地域でのインフラ整備や振興策に消極的だ。雑貨輸入問屋の男性(30)は「この町には工場も大学もなく、密輸が一番の産業だ。テヘランなど都市部の住民に安く商品を売り、イラク人に運び屋の仕事も与えている。悪いことはしていない」と話した。【10月17日 毎日】
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サルダシュトと言えば、イラン・イラク戦争(1980~88年)のさなか、87年6月28日午後4時半、イラク軍機が4発のマスタードガス爆弾を投下した、世界で初めて市街地に化学兵器が使用された町でもあります。
人口1万2000人の町は一瞬にして毒ガスのマスタードガスに包まれました。
イランのNGO(非政府組織)「化学兵器被害者支援協会」によると、サルダシュトや戦場で化学兵器を浴びた直後に死亡した兵士や市民は約5500人。今も約7万人が肺や目の障害に苦しんでいるそうです。

厳しい国境警備の一方で、「密輸品を隠して売る商店は、当局に黙認されている」ということは、賄賂の存在が容易に想像されます。
昨日取り上げた中国のレアアース禁輸がらみの密輸の話題で、「上に政策あれば、下に対策あり」という中国の表現がありましたが、そのあたりは世界共通です。

それにしても「この数年間で100人以上」の死者を出す国境を、「人なら100キロ運ぶ」という形で越える「運び屋」の世界というのは、生活のためとは言え、想像を絶する厳しさがあります。

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レアアース  中国:環境保護」に「密輸対策」  変化が予想される供給状況

2010-10-16 20:08:03 | 国際情勢

(中国・新疆ウイグル自治区のレアアース鉱山 こうした露天掘りと海底資源ではコスト的には比較にならないでしょう。“flickr”より By opalpeterliu  http://www.flickr.com/photos/peteropaliu/5053727771/
ただ、中国でも違法な零細採掘業者の乱開発による環境破壊が深刻化しているため、環境保護のため閉鎖する鉱山も多いとか。ただし、それは表向きの理由で、共産党系企業による鉱山の利益確保が目的とも(「馬上行動 山田冬樹の部屋」http://d.hatena.ne.jp/yamada-home/20100804/1280917203 より)

【「中国は国際規範にのっとった措置をとる」】
先の尖閣諸島沖中国漁船衝突事件では、大部分を中国輸入に依存するレアアース輸出禁止(中国は公式には認めていませんが)が、事件の進展を方向づけるカギとして注目を集めました。
すでに事件以前の4月にも、中国側はレアアース出荷の4割削減を日本へ通告しており、早急な対策が必要な問題ではありました。

****レアアース輸出制限「環境保護が目的」 中国、禁輸否定****
中国商務省の姚堅報道官は15日の定例会見で、レアアース(希土類)の日本への輸出が滞っている問題について「中国は(どの国にも)禁輸しない。世界貿易機関(WTO)などの国際規範にのっとった措置をとる」と述べた。輸出制限の目的については「環境保護が最大の目的だ。中国は管理や加工技術の水準が低く、環境問題が起きている。日本とも協力できる」と説明した。【10月15日 朝日】
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環境保護以外に、密輸対策としての通関厳格化という主張もあるようです。
****「レアアースの密輸が横行」 中国で報道****
中国でレアアース(希土類)の密輸が横行している――。厳格な通関検査は「密輸対策」ともとれる記事を中国メディアが相次いで伝えている。尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件以降、日本への輸出が滞っている問題で、日本は通関手続きの改善を求めている。
「毎年2万トン以上が密輸されている」。雑誌『瞭望』(10月11日号)が政府や企業関係者の話として報じた。
9日付中国経営報電子版によると、2009年は正常な輸出枠が5万トンで、密輸は2万トンだったという。レアアースの国際価格が上昇するなかで、中国政府は環境保護などを理由に輸出を制限。輸出枠を減らされた企業が密輸に走っている、と指摘した。
また、第一財経日報電子版も9月末、「米国への密輸が最も多い」とする企業関係者の話を伝えた。
尖閣事件後に発生した日本へのレアアースの「禁輸」問題については、「中国が資源を外交のかけひきに使った」として欧米でも批判が出た。相次ぐ「密輸報道」は、国際社会の疑念や日本が問題視する通関の厳格化に対する「反論」ともとれそうだ。【10月12日 朝日】
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具体的な密輸方法としては、鉄などとの合金にして輸出し、輸入国で分離する方法があるとか。
****<レアアース>急増する密輸出=合金に加工して政府規制を回避―中国*****
2010年10月9日、中国経営報は記事「中国のレアアース、密輸出は正規ルートの40%に相当か=迂回輸出規制へ」を掲載した。以下はその抄訳。

2009年、正規ルートで輸出されたレアアースは5万トン。一方で密輸出もその40%にあたる2万トン以上に達したとあるレアアース業界関係者は語った。世界のレアアース産出量の90%以上は中国が占めている。中国政府は国際的な発言権をさらに高めるため、2006年以来輸出規制を実施、正規ルートでの輸出量に制限をかけてきた。
中国には「上に政策あれば、下に対策あり」という言葉もあるが、まさにその言葉通り。密輸という形で規制が突破されている。輸出時に内容物の申請をごまかす、レンガや大理石として輸出するという形式もあるが、このほかにレアアース合金として輸出するケースもある。
レアアース輸出規制は原料にのみ課されるもので、レアアースを利用した製品の輸出には一切の規制がない。鉄との合金という形式で輸出し、海外で再び分離することによって実質的な原料輸出が行われている。すでに中国政府はこうした密輸出について注目しており、新たな規制が検討されているという。【10月10日 Record China】
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【中国以外での生産も 海中ロボットも一役?】
レアアースという言葉、以前は馴染みがなかったのですが、元素周期表の「希土類元素」のことだったのですね。
「希土類元素」なら、学生時代に周期表で目にした覚えはあります。(中身は当時も今もよくわかりませんが)
【ウィキペディア】によれば、ハイブリッドカーや電気自動車用の高出力モーターの磁石など、工業的には蓄電池や発光ダイオード、磁石などのエレクトロニクス製品の性能向上に必要不可欠な材料ということで、中国が世界の産出量の97%以上を占めています。
ということは、中国依存は日本だけの問題ではないことになります。

埋蔵自体は、地域的偏りはあるものの中国に限定されている訳ではないようで、現在の中国依存解消もあってか、11年にはカザフスタン、12年にはベトナム、オーストラリア、南アフリカ、アメリカ、14年にはカナダ、グリーンランド、オーストラリアなどで生産が開始される予定です。【ウィキペディアより】
ここ数年で供給状況は大きく変化するのではないでしょうか。

日本国内のマンガン鉱床や、火力発電所等の集塵機で回収される石炭や石油の灰にも含まれているとのことですので、その気になれば(そしてコスト的に見合うなら)、いろいろ調達方法はあるようです。
海底資源も着目されています。

****海底のレアアース探査、ロボ開発加速へ 中止から一転*****
海底に眠るレアアース(希土類)やレアメタル(希少金属)などの資源を探る海中ロボットの開発に、文部科学省が再着手する。高木義明文科相は「こういう機会にスピードをあげたい」としており、今国会の補正予算案に開発費を盛り込む考えを示した。昨年の政権交代以降の予算見直しで開発が中止されていたが、中国からの事実上の輸入規制でレアアースが注目され、一転、加速される見通しだ。

開発するのは海中を自動的に潜航、海底地形のデータを手がかりにして海底下の構造を調べるロボットで、10億円の開発費が見込まれている。来年度の概算要求で、船から遠隔操作する別のタイプのロボットと合わせ、3機分の予算を「元気な日本復活特別枠」として盛り込んだが、その一部を前倒しする。2013年度の調査開始を目指している。
伊豆・小笠原諸島や沖縄周辺の海域には、ニッケルや白金、コバルトといったレアメタルを含んだ海底鉱床が多数あるとみられ、レアアースが含まれる鉱床の存在が期待されている。【10月15日 朝日】
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ただ、海底資源となると、現実問題としてはコスト的にどうでしょうか?
いささか、今回の問題に便乗して予算獲得した・・・という感もありますが、レアアースに限らず海底資源探索、あるいは先端海洋技術開発という面では意義あることでしょう。もちろん予算との兼ね合いはありますが。

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北朝鮮  「おしゃべり」金正男氏襲撃計画?

2010-10-15 21:49:04 | 世相

(長男・金正男氏 “”より by Kala | 卡拉
http://www.flickr.com/photos/nths/100383501/ )

“不思議の国”北朝鮮では三男・金正恩(キム・ジョンウン)氏への権力継承が進んでいるようですが、マカオ在住の長男・金正男(キム・ジョンナム)氏は権力の世襲に反対しているそうです。

****金正男氏、「3代世襲には反対」*****
北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記の長男・金正男(キム・ジョンナム)氏が、テレビ朝日とのインタビューで、弟である金正恩(キム・ジョンウン)氏への権力世襲に否定的な考えを示した。
インタビューは9日、中国の北京で行われたもので、日本では12日に放映された。

正男氏はインタビューのなかで、「1つの家族が3代続いて権力を世襲することに、個人的には反対だ」と述べた。だが、金総書記の後継に正恩氏が決まった背景には「ある内部的な事情」があるとして、「決定には従うべきだろう」と語った。
正恩氏が後継者とされたことについては、「わたしの父(金総書記)が決定したことだと思う。だが、わたしには関係のないことだし、関心もない」と語った。
また、正恩氏に対しては、「北朝鮮人民の生活が豊かになるよう、最善を尽くすことを願う」と述べ、「必要であれば海外からでも正恩氏を支援する用意はある」と協力する姿勢を見せた。
正男氏は現在、マカオに住んでいる。【10月12日 AFP】
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以前からのことではありますが、置かれた立場を考えると、金正男氏はずいぶん正直と言うか、自由な言動の人物です。こんなことまで言って大丈夫なのだろうか?と余計な心配までしてしまいますが、正恩氏側近による正男氏襲撃計画があり、それを中国が阻止したとか・・・。

****正恩氏の側近が正男氏襲撃を計画か、朝鮮日報****
北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記の三男で後継者に決定した金正恩(キム・ジョンウン)氏の側近が2009年、長男の金正男(キム・ジョンナム)氏を襲撃する計画を立て、中国から警告を受けていたと、朝鮮日報が13日報じた。
朝鮮日報は政府筋の情報として伝えたところによると、09年1月に金総書記が正恩氏を後継者に内定した後、正恩氏の側近が「おしゃべりな」正男氏に業を煮やし襲撃を計画。しかし、中国側から「わが国の領土では(正男氏に)接触するな」と警告を受けたという。
正男氏は、父親の寵愛を失ってからは、中国の北京やマカオに生活の拠点を移しており、中国共産党幹部の子弟のエリート集団「太子党」と親交が深いとされている。【10月14日 AFP】
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中国・胡錦濤国家主席は9月28日、北朝鮮労働党の総書記に再び推挙された金正日総書記に「党代表者会が成功裏に開かれ、選挙で最高指導機関が誕生したことも祝う」と祝電を送り、三男ジョンウン氏が後継者の地位を確実なものにした党人事にも支持を表明しています。

襲撃計画云々はありそうな話ではありますが、真相は全くわかりません。
もし記事のとおりだとすると、中国としては、今後北朝鮮が混乱した場合のカードとして長男・正男氏を温存しておこうという思惑でもあるのでしょうか・・・・。
正男氏なら、中国の意に沿った北朝鮮版改革・開放政策も進みそうです。

それにしても、次男の正哲(ジョンチョル)氏はどうなったのでしょうか?
古今東西、王位継承にあたっては、兄の存在はトラブルを起こすことも多々あります。

北朝鮮当局は世襲批判の取締を強化しているとか。
ただ、記事にある“北朝鮮住民の間で批判の声が強まっており”と言うのも、米政府系放送局の報道ですので、どの程度実態を反映したものかはよくわかりません。

****北朝鮮住民の権力世襲批判、当局が押さえ込みに必死****
米政府系放送局のラジオ自由アジア(RFA)は8日、金正日(キム・ジョンイル)総書記の三男、正恩(ジョンウン)氏が正式に後継者に決まって以降、北朝鮮住民の間で批判の声が強まっており、当局が取締りと宣伝を強化していると伝えた。

咸鏡北道清津市の消息筋はRFAに対し、先月末に開かれた朝鮮労働党代表者会以降、同市で「子豚も親豚も食べてしまおう」との落書きが発見され、大騒ぎになったと述べた。市場には金総書記と正恩氏を非難するチラシが張られたとのうわさもあるという。
このため、当局はデマを流す者を通報すれば、身辺を保障し表彰すると触れ回っている。人民班(一定数の世帯で構成した組織)の会議では、ことし清津市だけでも熱心に通報した住民5人にカラーテレビが贈られ、8人が10万ウォン以上の賞金を受け取ったとも宣伝したという。

平安北道新義州市の消息筋も、当局が批判的な世論の拡散を防ぐため、講演会、人民班会議、「第3放送」(各家庭のスピーカーで放送される有線ラジオ放送網)など、あらゆる宣伝手段を動員していると伝えた。一部の講演会では、悪意あるデマを流した者が共和国法により厳しい審判を受けたと脅すこともあったという。

また、北朝鮮当局は韓国と米国の介入で、権力世襲を批判するデマが流布されている宣伝しているようだ。新義州市の消息筋は、米国と韓国が北朝鮮内部に不純なデマを流すため血眼になっているとの教育を受けたと話している。清津市の消息筋も、人民班会議で、韓国情報機関の国家情報院から金を受け取った者がデマを流しており、捕まえるべきだとの話が出たと伝えた。【10月8日 聯合ニュース】
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イラン  周辺国との関係強化を図るイラン外交

2010-10-14 22:22:31 | 世相

(レバノン訪問で熱烈歓迎を受けるイラン・アフマディネジャド大統領 “flickr”より By trainthj
http://www.flickr.com/photos/8863387@N07/5077805721/ )

【「外交で得点を得ようとしている国内事情」】
核開発問題で欧米による経済制裁が続いているイランのアフマディネジャド大統領の言動は、アメリカなどを敵視した従来からの極端な発言と、欧米との妥協点を模索する現実的なものが交錯する形で、どこを目指しているのかわかりづらいものがあります。

9月末には、10月中の米英仏中露独との交渉再開の方向が報じられていました。
****イラン:常任理と核交渉再開へ会合****
イランの核開発を巡る欧米との交渉に再開の兆しが見えている。イランのアフマディネジャド大統領が(9月)24日、米英仏中露独との交渉再開に向け、10月中にも会合を開くことを明らかにしたためで、欧米は成り行きを注意深く見守っている。イランが、動き出した背景には、4度目の経済制裁で打撃を受けた事情や、大統領が反対派との政争に打ち勝つため、外交で得点を得ようとしている国内事情もある。だが欧米への「譲歩」には保守派の抵抗も大きく、進展は微妙な情勢だ。【9月25日 毎日】
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「外交で得点を得ようとしている国内事情」については、“政権保守派内では、大統領とラリジャニ国会議長を中心とする反大統領派との対立が激化。13年の次期大統領選をにらんだ「イスラム革命以降、最大の政争」との声もある。経済悪化が進み、反大統領派からの攻撃材料が増える中、大統領は「国民向けに外交で得点をかせぐ狙い」(外交筋)もあるようだ。”【同上】とのことです。

一方、9月23日の国連総会演説では「米同時テロは米政府による陰謀」と発言、アメリカの神経を逆なでしています。また、10月3日には、イスラエルを「中東という野に放たれた野犬」と、更に、オバマ米大統領についても「地獄に送ってやる」と激しく批判しています。
“アフマディネジャド大統領は、イスラエルや米国が「(ナチス・ドイツによる)ホロコースト(ユダヤ人虐殺)を口実に中東諸国を収奪しようとしてきた」とした上で、「その後は、米同時テロを新たな口実に中東に押し入った」とイラク戦争などを批判した。”【10月4日 読売】

【エジプト、シリアとの関係強化】
しかし、最近のイラン外交は、着実にその影響力を周辺国に拡大しています。
****イラン:孤立化打開に積極外交 アラブ諸国に急接近*****
イランが、周辺アラブ諸国との関係改善に力を入れている。エジプトとの間で、国交断絶(80年)後初となる旅客機の直行便運航で合意したほか、アフマディネジャド大統領は今月13日、05年の就任以来初めてレバノンを訪問する。核開発問題で孤立化を深めるイランは地域での足場固めに躍起だ。

イランのバガイ副大統領は3日、エジプトを訪れ、航空協定に調印し、両国の首都を結ぶ週28便の運航で合意した。79年のイスラム革命でイランを出たパーレビ国王をエジプトが受け入れたことなどにイラン政府が反発し80年、両国は国交を断絶した。
しかし、近年は、核開発の権利主張などの際に共同歩調を取ることも多く、関係改善の機運が生まれた。今年7月には、両国出資による銀行をテヘランに開設することでも合意し、経済を軸に結びつきを強めている。(中略) 

また、以前から関係の良かった友好国シリアとも関係を一層、深化させている。アフマディネジャド大統領は今月2日、テヘランを訪問したシリアのアサド大統領を前に、「シリアの存在がなければ、地域のいかなる国もイスラエルの侵略を防げないだろう」とたたえ、アサド大統領の首に国家表彰のメダルをかけた。両大統領は先月18日にもシリア首都のダマスカスで会談しており、2週間で2度の首脳会談で蜜月を強調した。
米国はシリアをイランと並ぶ「テロ支援国家」に指定しながら、関係改善を模索。「シリアはイランとの関係を見直すべきだ」(クリントン米国務長官)との圧力もある中、イランはシリアのつなぎ留めに懸命だ。【10月5日 毎日】
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【レバノンでは熱烈歓迎】
上記記事にもあるレバノン訪問では熱烈な歓迎を受けています。
****イラン:レバノンで影響力拡大…大統領がヒズボラ拠点訪問*****
イランのアフマディネジャド大統領は13日に始めたレバノンの公式訪問で、政府幹部から一般国民に至るまで大歓迎を受けている。核開発問題でイラン包囲網強化を目指し、レバノンの親米勢力取り込みを図ってきた米国には打撃だ。大統領は14日にはイスラム教シーア派組織でイランが支援するヒズボラの拠点レバノン南部を訪問。イスラエル国境から数キロ北のビント・ジュバイルも訪ね、敵対する親米国イスラエルに対しても、中東での影響力拡大を見せ付けた。

アフマディネジャド氏は13日、レバノンのスレイマン大統領と共同会見。「敵(米国)によって押し付けられた方程式を変えた」と米国と距離を置きつつあるレバノンを称賛。影響力維持を図る米国を間接的に非難した。スレイマン氏も「脅威の際に共闘してくれる」と謝意を表明した。
親ヒズボラのシーア派国民を中心に歓迎ムードは強く「イスラエルとの戦いを支援してくれる」(50代男性)とイランを評価する。

イランは米主導の孤立化政策に直面するが、アフマディネジャド大統領は、レバノン訪問に先立つ2日、シリアのアサド大統領とテヘランで会談して友好関係を確認。核問題で米国の意向に反して核燃料と濃縮ウランの交換協定を提案したトルコとも関係強化を進めるなど、米国への対抗軸作りに取り組む。
米国は、昨年6月のレバノン総選挙の際にも「外部の介入」を批判してイランをけん制した。しかし、イスラム教スンニ派で親米と見られていたレバノンのハリリ首相は、シリアやイラン寄りの姿勢を見せ始めている。9月には、父のハリリ元首相暗殺事件へのシリアの関与を疑ったのは「間違いだった」とまで発言した。
同事件ではヒズボラ関係者の訴追がうわさされているが、アフマディネジャド大統領は13日のベイルートでの演説で「でっち上げだ」と反発した。
米国務省のクローリー次官補は13日の定例会見で、イランがヒズボラを通じ「レバノンの政府と主権を危うくしている」と批判、今後も関与を続けていく姿勢を明示した。【10月14日 毎日】
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06年のイスラエルによるレバノン攻撃の際、シーア派武装組織ヒズボラは、イランが供与したとされる対戦車砲などでイスラエルの攻撃を押し返しています。
そうした関係から野党でもあるヒズボラとイランの親密な関係は当然ですが、レバノンのハリリ首相の“父のハリリ元首相暗殺事件へのシリアの関与を疑ったのは「間違いだった」”との発言は驚きです。

【イラク政局への影響力】
シリア、レバノン、エジプト、トルコとの関係改善・強化・・・更にイラクにおいてもイランの影響力が強まりそうです。
連立交渉が膠着していたイラクは、“3月の連邦議会選挙(定数325)から約7カ月間続いているイラクの連立交渉で、マリキ首相の続投につながりそうな動きが出始めている。強硬な「反マリキ」姿勢だったイスラム教シーア派のサドル師派が反対を取り下げ、さらに、議会第1勢力でスンニ派が支持する「イラク国民運動(イラキヤ)」との交渉にも進展の可能性が出てきた。ただ、イラキヤからの支持獲得には、大統領職を同派に割り振ることが条件となりそうで、大統領職を現在握っているクルド人会派との調整が必要になる”【10月5日 毎日】という動きが出ています。

この動きのカギとなったのは、強硬な「反マリキ」姿勢だったイスラム教シーア派のサドル師の姿勢転換ですが、その背景については、“9月29日付の汎アラブ紙アッシャルクルアウサトによると、マリキ氏を後押しする隣国イランが、現在は同国を拠点とするサドル師への働きかけを強化。マリキ氏は9月下旬、サドル師派の支持を取り付けるのに成功し、協議の流れはマリキ氏続投に傾いた。”【10月3日 産経】とのことです。

マリキ首相にしても、サドル師にしてもイランの支持を背景としており、今後のイラクへのイランの関与は更に強まることが推測されます。

こうして見ると、欧米によるイラン包囲網に対抗するイラン外交も相当にしたたかです。

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アジア各国でデング熱の感染拡大

2010-10-13 21:11:14 | 世相

(フィリピン・イロイロ市のデング熱撲滅ポスター “flickr”より By caveat.doctor
http://www.flickr.com/photos/caveatdoctor/3183664714/ )

【危ない?英連邦競技大会】
日本では馴染みがない病気ですが、ここ2,3カ月、アジア各国でのデング熱流行のニュースを目にします。
****デング熱、アジアで感染拡大****
蚊が媒介する感染症で有効な治療法が無いデング熱がアジアで広がっている。英連邦競技大会(コモンウェルス・ゲームズ)が開催中のインドでは、20年ぶりに多い感染者数となっている。
デング熱は感染拡大の速度が最も速い感染症の1つ。世界保健機関(WHO)は、デング熱が「この数十年で劇的に拡大」しており、世界で25億人が感染の危険にさらされていると警告した。WHO高官によれば、感染の危険にさらされている人のうち70%がアジア地域の人びとだという。
アジア地域で感染が増加した主な原因には、気候変動により気温が上がったことや、人口増加、外国旅行の増加などが挙げられる。また、都市部の蚊の生息数が急速に増えたことにより、これまでよりも多くの人びとがウイルスに接触する機会が増えたという。
WHOの統計によると、ことしに入り8月までに報告された感染者数がアジア地域で最も多かったのは、インドネシアの8万65人。次いでタイが5万7948人、スリランカが2万7142人だった。
WHOアジア地域のヨゲシュ・チョードリー氏は、デング熱が国内でまん延するだけでなく、これまでに感染例の少なかった国にも広がっていると指摘し、「感染拡大は非常に速い。新たな地域でも確認がされている」と語った。(中略)

■ニューデリーの病院が感染者でいっぱいに
7000人の外国人選手・役員が参加する英連邦競技大会が14日まで開催中のインドでは、ニューデリーの国営病院がデング熱感染者で溢れかえっている。
インド国家生物媒介疾病管理計画のA.C.ダリワル氏は、インドでは50人が死亡、1万2000人の感染報告があり、20年ぶりの感染者数になっていると、AFPの取材に語った。インドの感染者数の実数は報告例よりもさらに多い可能性が高い。
一方タイ政府は、タイの若者の間で黒いレギンスが流行していることが、若者たちを感染の危険にさらしていると懸念する。(後略)【10月12日 AFP】
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失礼ながらインドで正確な疾病統計があるとは思われませんので、実態は相当に拡大しているのではないでしょうか。
英連邦競技大会の選手宿舎付近にも水たまりがあるとか言っていましたので、選手への感染もあったかも。

上記記事ではインド、タイ、スリランカの感染者数が報じられていますが、WHO西太平洋事務局によると、8月下旬時点で、フィリピンが感染者6万2503人(死者数465人)で最も拡大しており、次いで、マレーシアが感染者3万1529人(死者数101人)となっています。
マレーシア、シンガポールでは、すでに昨年1年間の感染者数に迫っている状況とか。
また、感染地域から日本に帰国した旅行者が国内で発症するケースも増え、国立感染症研究所によると、8月末時点で、日本での感染者は126人と、昨年の感染者数92人をすでに超えています。【9月16日 毎日より】

デング熱はネッタイシマカやヒトスジシマカを媒介とし、感染後、3日から1週間で発症。高熱が続き全身がだるくなり、血小板が減少し、消化管から出血する場合もあるとか。
有効な治療法はまだないとも報じられていますが、適切な治療を行えば致死率は数%以下だそうです。
最も重要なことは、居住区のそばに蚊が発生するような沼や水たまりがないようにする予防です。

【危ない?黒いレギンス】
“面白い”と言うと不謹慎ですが、タイでも流行の韓国ファッションがデング熱感染拡大に影響するとか。
****黒いレギンスでデング熱リスク高まる、タイ政府が警告*****
タイ政府は8日、若い女性たちの間で流行している黒いレギンスを着用するファッションが、デング熱の感染リスクを高めると警告する声明を発表した。
デング熱を媒介する蚊は暗い色を好むため、黒いレギンスに引き寄せられ、薄い素材を用いているレギンスの上から着用者の脚を刺すというのだ。このため、政府では明るい色のレギンスかジーンズなど厚めの生地で作られたボトムスを着用することを勧めている。
デング熱が流行の兆しを見せるタイでは、今年に入ってから7月までに43人がデング熱で死亡、感染者は4万5000人を超えている。犠牲者の多くは、若い世代だという。
タイでは韓流の影響で、韓国の女性たちが取り入れている黒いレギンスを着用するティーンエージャーが増えている。【8月10日 AFP】
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日本や欧米では新型インフルエンザが大きく取り上げられますが、先進国では取り上げられることも少ないマラリアとかデング熱とか旧来の病気による犠牲者も、アジア各国ではまだまだ大勢いるのが現実です。

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アメリカとイスラエル  ふたつの“誓い” 「神のもとの国」と「ユダヤ国家」

2010-10-12 20:01:06 | 国際情勢

(イスラエル・テルアビブの海岸で遊ぶアラブ系の少女たち “flickr”より 
By noga_kadman http://www.flickr.com/photos/noga_kadman/2169935294/ )

今日は「誓い」の話題。
【「one nation under God」】
ひとつはアメリカの「忠誠の誓い」。
****「神のもとの国」米忠誠の誓い 論争絶えず*****
米国のほとんどの公立学校では、毎朝子供たちが星条旗に向かい「忠誠の誓い」を朗唱する。誓いには「one nation under God」(神のもとのひとつの国)という言葉がある。このため、米国憲法の「教会と国家の分離」との整合性をめぐり、論争も続いている。
「忠誠の誓い」は1892年、キリスト教バプテスト派の牧師、フランシス・ベラミー氏によって起草され、1942年、連邦議会が正式な国の誓いとして認定したが、「神のもと」の表現はなかった。
「under God」はもともとリンカーン大統領のゲティズバーグの演説(1863年)に盛り込まれた言葉で、1954年、アイゼンハワー大統領が米国を特徴づける言葉として誓いへの挿入を指示し、上下両院の合同決議で承認された。背景には、宗教を否定した共産主義への宗教界と政界の危機感があったという。

以来、学校だけでなく、地方の政治的な集いやスポーツイベントなどで、米国民が右手を胸にあてて誓いを述べる光景は、多様な背景をもつ国民がひとつの国家という意識に統合される“象徴”といえる。
半面、国教の樹立を禁じ、信教の自由を保障した憲法修正第1条に違反するのではないか、という訴えも絶えなかった。
43年、連邦最高裁は「公立学校は子供たちに誓いを強要することはできない」との判決を下した。最近では、公立学校における誓いの奨励は違憲だとするカリフォルニア州の無神論者の訴えに対し、サンフランシスコの控訴裁判所が今年3月、「愛国心を養う儀式」として、合憲との判決を下している。
多様性を尊重しつつ、「神のもと」の結束を追求する米国。「神」が何を指すのか、反イスラム感情が広がる中、その問いかけに終わりはなさそうだ。【10月11日 産経】
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宗教がからむとなにかと複雑になります。
ある種“冷戦”の産物でもありますが、宗教保守派の力が強い現在、今更はずすこともできないでしょう。
まあ、問題にするのも一部無神論者でしょうから、さほど大きな問題になることもないのでは。

【「ユダヤ国家」】
もっと生臭いと言うか、政治的なのは、イスラエルにおける“「民主的なユダヤ国家」への忠誠宣誓義務化”の話題。
****イスラエル:「民主ユダヤ国家」忠誠宣誓義務化へ****
スラエル政府は10日、国籍取得の新規申請者に「民主的なユダヤ国家」への忠誠を宣誓するよう義務づける法改正案を閣議決定した。イスラエルには国籍を持ったイスラム教徒やキリスト教徒もおり、改正案には連立政権内でも「排他的だ」などとの反発が強い。
現・国籍法は、新規国籍取得者に「イスラエル国家」への忠誠の宣誓を義務づけ、今回、「民主的なユダヤ国家」との文言が加わる。国会承認を経て改正される見通しだ。

義務づけは主に、人口の約2割を占めるイスラム教またはキリスト教のパレスチナ(アラブ)系イスラエル人と結婚し、国籍を申請するパレスチナ人が対象。外国籍のユダヤ人は別の「帰還法」に基づき国籍を取得し、宣誓は義務づけられていない。国家のユダヤ的な性格を否定しないユダヤ系イスラエル人の中でも、改正は排他的、非民主的--との反発もある。【10月10日 毎日】
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イスラエル建国後もこの地に残ったパレスチナ人は多く、【ウィキペディア】によれば、現在のイスラエル人口のうち、17.3%をアラブ人が占めています。
イスラエルは、この非ユダヤ人の増加について、“ユダヤ国家”のアイデンティティーを脅かすものとして神経を使っています。

今回の「民主的なユダヤ国家」への忠誠宣誓は、すでにイスラエル国籍を取得しているこれらアラブ人は対象外でしょうが、これらの者と結婚して新たにイスラエル国籍を取得するパレスチナ人が対象になるようです。
“イスラエル=ユダヤ国家”という認識は、現実に多数のアラブ人が存在することを考えると、常識的には“差別的”ですが、イスラエル・ユダヤ人の発想はまた別物です。

【難民帰還を否定する「ユダヤ国家」承認】
このイスラエルの「ユダヤ国家」へのこだわりは、パレスチナ自治政府との間で行われて中東和平交渉の障害ともなっています。
****入植凍結延長で条件=「ユダヤ国家」承認、パレスチナは拒否―イスラエル****
中東和平の直接交渉がユダヤ人入植問題で暗礁に乗り上げる中、イスラエルのネタニヤフ首相は11日、国会で演説し、パレスチナ側に対し、イスラエルを「ユダヤ人国家」として承認することを条件に、占領地での入植活動の凍結延長を提案していたことを明らかにした。
ただ、パレスチナ自治政府のアブルデイネ議長府報道官は同日、「われわれはすでにイスラエルを承認しており(ユダヤ人国家かどうかは)われわれには関係ない」と述べ、提案に応じない姿勢を鮮明にした。
イスラエルを「ユダヤ人国家」と認めれば、イスラエル建国で発生したパレスチナ難民が故郷へ帰還する権利を否定することにつながるため、パレスチナには受け入れられない条件だ。【10月12日 時事】
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記事にもあるように、パレスチナ難民の帰還問題を考えると、パレスチナ側としてはとても認められない条件でしょう。
なお、アッバス議長は、進展が図れないイスラエルとの直接交渉の継続については、8日開催のアラブ連盟外相会合で協議したうえで、最終的に決断する方針を表明していましたが、アラブ連盟も最終判断を先送りしたようです。

****アラブ連盟:中東和平交渉の判断、1カ月猶予 米に配慮****
アラブ連盟(22カ国・機構)は8日、リビア北部シルトで外相級会合を開き、イスラエルによる占領地でのユダヤ人入植活動再開で決裂の危機に直面した中東和平交渉について、交渉継続の是非を1カ月後に判断すると決めた。当事者間の調整を続ける米国に配慮し、決裂回避のための「猶予期間」を設けた形だ。

アラブ連盟は会合後の声明で、イスラエルがユダヤ人入植住宅の新規建設を改めて凍結しない限り、直接交渉を打ち切ると表明したパレスチナ側の方針を支持。イスラエルを「違法な入植政策を続けて交渉を停滞させた」と非難した。一方で、1年以内の和平実現を目指すオバマ米政権の方針については支持を確認した。
連盟はアッバス・パレスチナ自治政府議長の提案を受け、1カ月後に再度集まり直接交渉の「代替案」を協議するという。
パレスチナは米国が提案したとされる「60日間の凍結」を受け入れ、この間に国境画定問題を協議する意向を示している。これに対し、イスラエルでは強硬派の右派閣僚を中心に、凍結に反対する意見が根強い。
米国が今後1カ月でイスラエルの譲歩を引き出せるかどうかが焦点となる。クローリー米国務次官補(広報担当)は8日、「交渉前進の努力を続ける」との声明を出した。【10月9日 毎日】
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イスラエル・ネタニヤフ首相としては、“入植凍結”と引き換えに“ユダヤ国家”を認めさせることで、国内保守派を抑えようということでしょうが・・・・。

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