ジリオラ・チンクェッティのシングル・コレクションがこの7月に発売になったので、ジャズではありませんが、PRも兼ねて、取り上げてみます。サンレモ音楽祭で優勝しスターとなり、日本でもかなりな人気があったチンクェッティを懐かしく思いだされる方も多いと思います。僕は彼女のファンで、その一人ですが、カンツォーネらしいゆったりと歌いあげる曲から、リズミックなものまで、70曲をよくぞ揃えてくれました。
gigliola cinquetti (ジリオラ・チンクェッティ)
singles collection (king他 1963年~1978年録音)
ここまで、丁寧な作りのCD(4枚組)のセットは、そうはないかもしれません。70曲のうち、LP未収録のものが28曲、国内初CD化が31曲あります。裏を返せば、いままでベスト盤が出されてきましたが、同じような曲が収録されていたということでしょうか。さらに、解説が充実していて、歌詞、対訳、日本盤シングルディスコグラフィー、イタリア盤シングル及びアルバム・ディスコグラフィに日本盤シングルのジャケット写真がカラーで掲載されています。
このような充実したアルバムを作ることのできる、日本の音楽業界は、まだまだ元気だと感心しました。チンクェッティのファンはもちろん、カンツォーネやオールディーズ、ヴォーカルファンも買っておいて損はしない内容です。昨年は、彼女の5枚のLPをCD化したボックス・セットが出されていますが、それとダブらない曲が多いので、そちらを持っている方も今回のアルバムも購入対象となると思います。
収録曲の一部を挙げてみますが、1964年のサンレモ優勝曲で大ヒットした「夢みる想い」、日本のみシングルで発売された「ナポリは恋人」、ナポレターナのスタンダード「アネマ・エコーレ」、1966年のサンレモ優勝曲「愛は限りなく」、早いテンポの1969年の大ヒット曲「雨」、静かなパートとドラマティックに盛り上げるパートがある「夕べのしあわせ」、バラードでバックの弦が絡む感動的な曲「落葉の恋」、1970年のヒット曲「ロマンティコ・ブルース」ときりがありません。
僕は、カンツォーネの中では、カンタービレ(歌うように、表情豊かに)で、テンポのゆったりしたものが好きなのですが、チンクェッティには、そういう系統の曲が多くあって嬉しいところです。かつて、ラジオから音楽が流れていて、日本でヨーロッパの歌手が多く聴かれた時代の記念碑的な曲が多く、懐かしさとともに、いい曲の多いことに改めて感じ入りました。
【収録曲一覧と解説に掲載されたシングルジャケットの一部】