安曇野ジャズファンの雑記帳

信州に暮らすジャズファンが、聴いたCDやLPの感想、ジャズ喫茶、登山、旅行などについて綴っています。

ビリー・ミッチェル THIS IS BILLY MITCHELL

2010-10-10 08:42:10 | テナー・サックス

マイケル・J・フォックス主演のコメディ映画「摩天楼(ニューヨーク)はバラ色に」(The Secret of My Success)を観ました。田舎からニューヨークに出てきた若者の出世物語です。スピード感のある映画で笑いどころが多いですが、社長室で社長夫人が歌を口ずさみながら彼に迫る場面も可笑しい。「The Song is You」、「I'm in The Mood for Love」、「I Get a Kick Out of You」、「Bewitched」という4曲の初めの部分が続けて歌われ、歌詞がちょうど場面とあっていて、思わずニヤッとしました。「The Song is You」は、その曲名がすぐに浮かばなかったので、「スタンダード・ジャズのすべて」で確認しました。ソロの中で有名曲が引用されているアルバムです。

BILLY MITCHELL (ビリー・ミッチェル)
THIS IS BILLY MITCHELL (SMASH 1962年録音)

 Thisisbillymitchell

テナー・サックスのビリー・ミッチェルですが、ディジー・ガレスピー楽団やカウント・ベイシー楽団に在籍し、リーダー作もありますが、比較的地味な名前だろうと思います。この作品は初リーダー作ながら、なかなかいい内容で、日本で早く発売されていればもっと注目されたかもしれません。

彼のテナーの自然で柔かい音がいいし、スタイルは初期のハードバップという感じで、フレーズがスムーズにつながるので、演奏に浸りきって聴いていられます。個性という点ではきわだってはいないのでしょうが、このアルバム(海外盤のCD)を聴いた後は、幸せな満足感を得ることができました。

メンバーは、ミッチェル(ts)、ボビー・ハッチャーソン(vib)、クラレンス・アンダーソン(org)、ハーマン・ライト(b)、オティス・フィンチ(ds)、デイブ・バーンズ(tp)、ビリー・ウォレス(p)。曲は、オリジナル中心で、「J & B」、「Sophisticated Lady」、「You Turned The Tables on Me」、「Passionova」、「Tamra」、「Automation」、「Just Waiting」、「Siam」の8曲。B・ハッチャーソンの名前が目を惹きます。

「J & B」は楽しい曲想で、ミッチェルは低音から高音まで自在に操る迫力のあるソロの中で、「オー・ソレ・ミオ」と「Fascinating Rhythm」(魅惑のリズム)の一節を引用していますが、決まっています。20年近く経った1980年録音の作品「DE LAWD'S BLUES」(Xanadu)の「B & B」でも同じ引用をしており、お得意フレーズなのでしょう。「Sophisticated Lady」、「You Turned The Tables on Me」などでも堂々たるプレイを行っています。ピアノのビリー・ウォレスの参加も嬉しい。

ホームページのジャズにビリー・ミッチェル(テナー・サックス)を掲載しました。時間があればご覧ください。モダンジャズやヴォーカルを聴こう ビリー・ミッチェル

【新版 スタンダード・ジャズのすべて(全音楽譜出版社)】

1と2があり401曲ずつ全部で802曲の、メロディ、歌詞、コードが載っています。メロディや歌詞を確認するために持っていますが、まれにピアノでメロディをなぞりながら、怪しい歌を唸ることがあります。奥様からは誰も家にいない時にやれと厳命されています(笑)。

  Allofthejazzstandard

【摩天楼(ニューヨーク)はバラ色に】

監督はハーバート・ロス。歌を歌いながら迫る社長夫人は、マーガレット・ウィットンが演じ、マイケルの相手役(ヒロイン)のヘレン・スレイターが綺麗です。

 Thesecretofmysuccessdvd 


ドン・スリート ALL MEMBERS

2010-10-03 08:04:44 | トランペット・トロンボーン

長野市内の自宅が築15年になり、屋根や外壁の塗り替えなどの修繕工事をすることになりました。それにあわせて、ガス給湯器やガスレンジも交換したいと奥様がいっています。建築会社の人と打ち合わせをしているのですが、相当の費用がかかりそうです。したがって、同時期に揃えた僕のオーディオ装置も更新したいなどという話はとても持ち出せません(笑)。オーディオ製品は壊れにくいことは確かですが、できればもう少し柔らかめな音を出したいと望んでいます。柔かい音も出すミュージシャンです。

DON SLEET (ドン・スリート)
ALL MEMBERS (JAZZLAND 1961年録音)

 All_members

豪華なサイドメンに惹かれて、昔、LPを買ったのですが、スリート本人にも安定した技量があり、なかなかいい作品でした。スリートは、クラシックの勉強も行い、サンディエゴ交響楽団に在籍したことがあり、音が素直にストレートに伸びています。彼は西海岸で活躍しましたが、リーダー作はこれ一枚です。

クラシックのアマチュア・オーケストラに在籍している友人は、ジャズ系トランペッターをゲストとして呼んだ時に、ヴィヴラートがかかりすぎだし、音程が不安定でジャズ系はいまひとつだと評していました。人にもよると話をしたのですが、仮にドン・スリートやジョー・ワイルダーだったら、そういう感想にはならないかもしれません。

スリート(tp)の他、ジミー・ヒース(ts)、ウィントン・ケリー(p)、ロン・カーター(b)、ジミー・コブ(ds)という豪華メンバーです。クリフ・ジョーダン作「Brooklyn Bridge」、「The Hearing」、 スリート作「Fast Company」、ジミー・ヒース作「All Members」にスタンダードの「Secret Love」、「Softly, As In A Morning Sunrise」、「But Beautiful」の全7曲。

ベースは、ポール・チェンバースではなくロン・カーターですが、弓弾きを交えながら堅実なプレイをしています。スリートは「Secret Love」で旋律を美しく歌い上げ、ソロも跳躍したり、小刻みなフレーズを吹いたりで一番印象に残ります。2管のハーモニーを生かしたテーマの「Brooklyn Bridge」や「All Members」でも、スリート、ヒース、ケリーがそれぞれ快調なソロをとっています。スリートには、クールな面も見うけられます。