少し古いですが、第5792回の「いよいよロボットの時代か」に関連した興味深い記事がありました。
シャープを代表とするお人好し家電業界など日本の産業界が、中・韓に何の警戒心も抱かずに、技術を惜しみなく教え、挙句の果てには、その技術を盗ま れ、世界で競争に負け、衰退へと追い込まれた教訓を、ロボット技術でも同じ轍を踏まないように心してかかれと言うことです。
何となく、まだやりそうな気がします。もういい加減目を覚まして欲しいものですが、根っからのお人好しなんでしょうね。
ダイヤモンド・オンラインより 2015年8月11日
キヤノン「完全自動化工場」で見えた日本経済の明るい未来 真壁昭夫 [信州大学教授]
IoT関連では他国が先行
技術流出への警戒も必要
伝統的に細かい調整などを得意とするわが国企業にとって、ロボットなど機械による生産システムの構築も得意であるはずだ。そう した国民の資質を使った優位性は、これからも大いに役立てるべきだ。
しかし、そうした分野の研究はわが国企業だけが行っているわけではない。あらゆるものを通信で結びつけるIoT=インターネッ ト・オブ・シングズ(モノのインターネット)などの分野では、わが国よりも、ドイツや米国、さらには中国などの諸国が進んだ研究 を行っていると言われている。
今後、大規模な生産プロセスの自動化を考えると、どうしてもIoT関連の技術が必要になるかもしれない。その場合、わが国企業 の技術が優位性を保てるか否かは定かではない。
企業としても、これからも技術先進国と伍して研究・開発を進める覚悟が必要になる。その機能を担うべきは企業経営者で、継続的 に新しい技術、新しい製品を生み出し続けることを頭に入れておかなければならない。
そうした意識改革のために、社外取締役の導入が活発化している。しかし、未だ、その意図は十分に実現の域に達していない。今 後、経営者自身も、社外の意見に虚心坦懐に耳を傾ける姿勢が求められる。
もう一つ気になる点がある。それは、今まで企業が開発した技術や製品を、気前よく海外企業に教えすぎたことだ。どうしても、わ が国企業は“お人よし”のところがある。
それは、わが国の社会が伝統的に「人を見たら泥棒と思え」との意識が低いことが原因の一つになっているからかもしれない。しか し、国際社会を見回すと、一度気前よく教えてしまうと、それがブーメラン効果となって、自分たちの首を絞めることがよくある。
それは液晶やICチップの例を見ても明らかだ。これから、われわれ日本人は、ビジネスの国際社会でもっと“悪人”になる必要が ある。
企業の“縮み志向”からようやく脱却
生産自動化で見えた変化の胎動
90年代初頭にバブルが弾け、2000年代中盤にはリーマンショックによって世界経済が不安定化した。その間、わが国は人口減 少や少子高齢化が進むなど経済環境は厳しさを増した。
そうした環境下、ハイブリッド技術などの一部例外を除くと、企業はとかく“安全第一主義”の運営になっていた。その結果、大手 企業の多くは多額の流動性を抱える状況が続いてきた。
しかし最近、そうした“縮み志向”に少しずつ変化が見られるようになってきた。その一つに、大型M&A案件の組成がある。ソフ トバンクの米国スプリントネクスト、サントリーのジムビーム買収など多額の案件が成立した。
もう一つは、最近の生産手法のイノベーション=完全自動化の潮流かもしれない。元々、わが国の産業界はロボットやオフィスオー トメーションの分野で、相対的な優位性を持っていた。
その技術をさらに進め、精密機械などの分野で、人の手を一切使わず、完全に機械による生産技術を構築しようという潮流が顕在化 している。実際に、工学系の専門家にヒアリングしても、「製造業だけではなく、食品、サービスなどの分野でもそうした流れが定着 しつつある」という。
それは単純にコストを下げるだけではなく、より安定した品質を維持することにも寄与している。作業の自動化の潮流は、少子高齢 化によって生産年齢人口が減少するわが国にとって、どうしても避けて通れない必然のプロセスと言える。
そうした“変化の胎動”が拡大すれば、経済にイノベーションの新風を送り込むことに期待できるはずだ。
海外工場が戻ってくるわけではない
だが企業活性化で雇用機会は増える
ロボットによる完全自動生産システムの潮流と聞くと、「これで海外に移転した工場が国内に戻って来る」とか、「雇用機会を機械 に奪われる」と思いがちだが、それはやや短絡的だ。
完全自動生産システムが稼働しても、経済の理屈で考えると、消費地になるべく近いところで生産を行う方が有利だ。運送コストが 節約できるし、地産地消によって為替の変動リスクなどを負う必要がないからだ。
自動生産システムのメリットは、どこで生産活動を行ったとしても、人手が少ないため人件費負担が少なくて済むこと、それに加え て均一の製品を作りだすことができる点だ。それは、企業にとって大きな武器=競争力の源泉になるはずだ。
また、企業が競争力を回復すると、当該企業の業務活動が活発化して収益状況が改善することが期待できる。そうなると、収益の改 善をてこに、さらに新製品の研究・開発が盛り上がり、新規事業への参入などの可能性が高まる。
そうした動きが経済に定着すると、必然的に雇用機会は増えることになる。分かりやすい例を挙げると、アップルはハブレス経営で 生産設備をほとんど持っていない。しかし、同社が考え出したiPodやiPhoneのヒットによって、システムや企画分野のマン パワーが必要になり、結果的に雇用機会は増えた。
そうした状況を考えると、生産自動化の動きは、わが国経済にとって最も好ましいイノベーションの一つと言える。問題は、こうし た潮流が本格化して、経済の空気まで変えることができるか否かだ。
伝統的に細かい調整などを得意とするわが国企業にとって、ロボットなど機械による生産システムの構築も得意であるはずだ。そう した国民の資質を使った優位性は、これからも大いに役立てるべきだ。
しかし、そうした分野の研究はわが国企業だけが行っているわけではない。あらゆるものを通信で結びつけるIoT=インターネッ ト・オブ・シングズ(モノのインターネット)などの分野では、わが国よりも、ドイツや米国、さらには中国などの諸国が進んだ研究 を行っていると言われている。
今後、大規模な生産プロセスの自動化を考えると、どうしてもIoT関連の技術が必要になるかもしれない。その場合、わが国企業 の技術が優位性を保てるか否かは定かではない。
企業としても、これからも技術先進国と伍して研究・開発を進める覚悟が必要になる。その機能を担うべきは企業経営者で、継続的 に新しい技術、新しい製品を生み出し続けることを頭に入れておかなければならない。
そうした意識改革のために、社外取締役の導入が活発化している。しかし、未だ、その意図は十分に実現の域に達していない。今 後、経営者自身も、社外の意見に虚心坦懐に耳を傾ける姿勢が求められる。
もう一つ気になる点がある。それは、今まで企業が開発した技術や製品を、気前よく海外企業に教えすぎたことだ。どうしても、わ が国企業は“お人よし”のところがある。
それは、わが国の社会が伝統的に「人を見たら泥棒と思え」との意識が低いことが原因の一つになっているからかもしれない。しか し、国際社会を見回すと、一度気前よく教えてしまうと、それがブーメラン効果となって、自分たちの首を絞めることがよくある。
それは液晶やICチップの例を見ても明らかだ。これから、われわれ日本人は、ビジネスの国際社会でもっと“悪人”になる必要が ある。
何度も書いていますが、日本の進むべき道は、外国人や女性の労働力に頼るのじゃなく、この日本得意のロボットを有効に使って、人口減で減った労働力を補い、一人当たりの生産性と、可処分所得の向上を目指すことです。
そうすれば、最小限の外国人と外で本当に仕事をしたい女性と大部分の家庭で子育てや家事で世帯主を支える女性という日本本来の雇用体系を確立できるはずです。それこそが、この日本を再生し、守る道のはずです。
こちらも、日本再生に有意義な考え方です。つまりは、昔の日本人の心を取り戻せと言うことでしょう。
日刊SPA!より 2015年8月15日(土)
環境を劣化させながらの経済成長はもはや持 続不可能
景観・歴史・文化・環境・生態系などの破壊に目をつぶり、ひっそりと進行している開発計画は数多い。それは本当に必要な事業 なのか? 地元住民はどれだけ情報を与えられているのか? 全国各地で進められている開発計画の現状に京都大学特任教授・谷口正次氏は警鐘鳴らす
◆「価格のつかないもの」の再認識が「持続可能な経済」への転換のカギ
資源を搾取し続け、環境を劣化させながらの経済成長、消費拡大を前提とする発展は、もはや持続不可能になったといえます。
世界はもうそのことに気づき始めていて、一部の先進的な金融機関は資源や環境に対してプラスの影響を与える企業に積極的に投 資を始めています。そんな時代に、工事による目先の“経済効果”ばかりにとらわれ、環境を破壊し、借金は後の世代に先送り……を 続けていれば、将来必ず大きなマイナスとなって返ってくるでしょう。
18世紀、江戸時代の石田梅岩が提唱した「心学」に象徴されるように、日本人はもともと先進的な理念・哲学を持っていまし た。目先の利益ばかりを考えず、何代も先の子孫のことを考える。自分だけが儲けようとせず、周りにお金を循環させる。こうした 「持続可能な経営」が自然に行われていたのです。その理念や哲学が、グローバル経済のもと薄れてしまいました。
経済成長のマイナス要因といわれる「人口減少」は、日本の強みを発揮して「持続可能な経済」に転換するチャンスでもありま す。
そのカギは、我々の祖先が残してくれた景観・歴史・文化・環境・生態系、あるいは人の繋がりといった、これまで「価格のつか ないもの」とされてきたものの価値を再認識することにあるのです。
【谷口正次氏】
’38年生まれ。京都大学経済学研究科特任教授。自然を消耗する経済から、自然を経営する経済への転換を説く。著書に『自然資本 経営のすすめ』(東洋経済新報社)など
良いですね。こういう考え方が出てきだしたと言うことは、やはり、戦後に狂ってしまった日本人の儲け主義の考え方をもう一度見直せと言う風潮も現われてきていると言うことじゃないでしょうか。
新しい技術と昔からの日本の心を取り戻すことこそ、日本がこれから目指すべき方向でしょう。安倍さんが、竹中平蔵などのアメリカかぶれのブレーンを退け、こうした方向に気が付いてくれることを願いたいものです。