窓ガラスや京都などの重要文化財の神社仏閣などの屋根にも取り付けられる「透明な太陽電池」が出来ないものかと、第5618回などで何度も取り上げてきましたが、やはり、難しいのか、なかなか実用的なものは出てこないようです。
と思っていたら、三菱化学が実用化に成功したようです。少し、古い記事ですが取り上げておきます。
スマートジャパンより 2015年08月10日
“窓に貼る太陽電池”実用化へ、透明の有機薄膜太陽電池フィルムで
三菱化学は、有機薄膜太陽電池を用いた「シースルー発電フィルム」を開発・実用化し、市場開拓を開始する。 [三島一孝,ITmedia]
三菱化学が今回実用化に向けて市場開拓を開始する有機薄膜太陽電池による「シースルー発電フィルム」は、新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO)の助成事業「有機系太陽電池実用化先導技術開発」に採択され、これまで窓や建物外装などへの使用について実証実験を進めてきた。実証実験につ いてはスリーエムジャパンと共同で実施しており、これまで仙台国際センター渡り廊下の窓への設置やスリーエム仙台市科学館エントランス付近の窓などに設置 し実用化への課題解決などに取り組んでいる(図1)。
図1 三菱化学とスリーエムジャパンと協力して窓用フィルムとして実証実験を行う仙台国際センター 出典:三菱化学
太陽光発電は、パネルの設置場所が限られる都市部においては、より多くの発電量を確保するために、建物の屋根や屋上面に加え、窓や壁面などを有効活用す ることが期待されている。しかし、窓、壁面、トップライト(採光や通風のため屋根に設置される窓)部へ設置するためには、透明性(シースルー性)、色、重 量などの課題が存在した。しかし、今回開発した「シースルー発電フィルム」は、透明性(シースルー)、軽量、フレキシブルという特徴を有しており、窓への 設置が可能となる。
図2 透明性、軽量、フレキシブルという特徴を持つ有機薄膜太陽電池フィルムのイメージ 出典:NEDO
窓用フィルム分野については、この分野で約50年の実績を持つスリーエム ジャパンと製品開発及び市場開拓を協力して進めていく方針だ。また、その他の従来の太陽電池が取付けられなかったさまざまな場所への活用方法などを探っていく。
三菱化学では今後、市場の状況を見ながら、太陽電池のエネルギー変換効率、耐久性をさらに向上させ、シースルー発電フィルムの市場拡大を進めるとしている。
三菱さんやる気あるようですね。是非、成功してもらいたいですね。あらゆる場所に取り付けられる透明な太陽電池には需要はあると思います。
アメリカでも開発されているようですが、こちらは、実用化にはまだまだ遠いようです。それでも、世界の研究者がこつこつと研究しているのですから、何時かは実用化にも成功するでしょうね。
TABI LABOより
米大学が開発した太陽光パネル、キーワードは「透明」
ミシガン大学(MSU)の研究チームが、太陽エネルギーを捕捉することができる透明な太陽電池パネルの開発に成功しました。サイエンス・テクノロジー分野で大きな注目を集めた、このトピックスを「TomoNews US」が動画で紹介しています。
Richard Lunt教授率いる研究チームは、従来のパネルにない、多様な用途の可能性に自信をのぞかせています。氏曰く、キーワードは「透明」であること。
従来の太陽光パネルは、私たちも知っている通り黒く着色されたものがほとんど。これは、特定の波長の光を捉えるためのもの。ですが、Lunt教授の新パネルは、向こうが透けて見える透明なもの。
「例えば、高層ビルの窓ガラスに設置したり、スマホやタブレットなどのデバイスに使うことで、このパネルの美しさが生きます」
専門的な話になりますが、ほとんどの太陽光パネルは、小さな電磁波スペクトラムに代表されるプリズムで太陽光を分解する7色の「可視スペクトル」を捉 えるメカニズム。ですが、この透明の太陽電池の発光型集光器(TLSC)は、可視光をキャプチャーするのではなく、目に見えない不可視波長(紫外線)を取 り込む仕様だそう。
平たく言えば、太陽光が当たったパネルから紫外線と近赤外線をだけを取り出すと赤外とは別の波長で白熱(電力を生み出す)する原理。こうして集まったエネルギーを集光装置にかけて、色のない赤外線長波に変換、ようやく電力が出来あがるという流れ。
「赤外光はパネルの端に誘導され、そこで電気に変換されます。可視光スペクトラムは光を吸収も放出もしない性質。それで人間の目には透明に映るのです」
MSU公式サイトに Lunt教授は、開発のゴールを「生活や環境に馴染んだソーラーパネルの設計」に置いていることを明かしています。現在のところ、TLSCの生産効率は約 1%と、まだ試験段階レベル。ですが、最適化していくことで、この数字を「約5%にまで引き上げられる」と自信満々。最終的には約7%の規模拡大を目指し ているんだそう。
従来のように屋外の巨大な敷地にパネルを並べたり、家屋の屋根にパネルを設置しなくても、すべての窓をこの新パネルに変えるだけで、太陽光エネルギーが電力になる。そんな夢の自給自足時代の到来を感じさせる発明ですね。
コストの問題さえ克服できれば、透明な太陽電池にはあらゆる場所に設置できると言う可能性があるだけに面白いものになると思います。まずは、三菱さんに成功してもらいたいものです。
今や、逆風に晒されつつある太陽電池の名誉挽回の為にも、頑張ってもらいたいものです。