プーチンの乾坤一擲の勝負は完全に読み違えたようです。これも、自軍の志気の無さを把握できていなかったのが原因じゃないでしょうか。
今や、国の為に戦うなんて心意気は殆ど無いのかも。辛うじて攻められたウクライナに残っていてそれがプーチンの目論見を潰したように思えます。
宮崎さんがそのプーチンの読み違いを詳しく書いてくれています。さて、追い詰められたプーチンは核を使うのでしょうか。
独裁者はそこまでやるでしょうか。
「宮崎正弘の国際情勢解題」より 令和四年(2022)2月28日(月曜日)参 通巻7238号
親露のカザフスタン、ウクライナ派兵要請のプーチンに肘鉄
トカエフ大統領は「第二のナゼルバエフ」を目指し始めた
ロシアと軍事同盟を結ぶ中央アジアのカザフスタンは、プーチンが要請したウクライナ侵攻への部隊派遣を拒否した。プーチン がウクライナ東部の親ロシア派支配地域の独立を承認したときもカザフは追随承認はしなかった。
カザフスタンのトカエフ大統領は親露派政治家と見られていたが、意外にしぶとい外交方針を貫き、ロシアに反旗を翻したこと になる。
ロシアへの恩義は消えたのか?
ガソリン値上げに抗議するカザフスタン民衆が抗議の声をあげたのは1月2日だった。
アルマトイ市役所、大統領官邸などに放火したため、カザフスタン政府は軍を投入し戒厳令を敷いた。死者数百、逮捕およそ五千 人。抗議集団のなかにアフガニスタンのISが混入していたとトカエフ大統領は発言した。
カザフスタン政府は「かれらはテロリストであり、多くの外国人が含まれている」と「テロリスト」、「外国の陰謀」というイ メージを振りまき、事態の収拾をはかる。
抗議の的はナゼルバエフ前大統領(81歳)とその一族であり、「老人は去れ」と叫んだ。富を寡占し、事実上の専制政治を敷い たナゼルバエルは明確に敵という位置づけ、かれらは「ナゼル・カーン」と呼ぶ。事実上の「ナゼルバエフ院政」だったのであ る。
ロシアはCSTOに基づき平和維持軍と称する軍をアルマトイへ空輸した。輸送機は戦車も運んだ。機関銃で武装したCSTO軍 にはロシア兵のほかアルメニア、ベラルーシなどの兵隊も含まれていたという。
ロシア同様に対応が迅速だったのは中国だ。習近平はただちにトカエフ大統領にメッセージを送り「テロリストへの対応を支持す る」とした。在カザフの中国大使館は在留中国人の安否を確かめ、被害はないと発表した。「ガソリン値上げ反対」のスローガン が「中国の搾取摘発、中国は出ていけ」の反中運動に転化しかねない剣呑な空気があった。
中国は一帯一路の拠点としてカザフスタンを重視しており、これまでに数十のシルクロードプロジェクトを展開し、合計192 億ドルを投資した。さらに2023年までに245億ドルを投資するとしている。
カザフスタンは中国に原油を50億ドル、トルクメニスタンからのガス輸送パイプラインの通過代金にくわえて、少量のガスも中 国に輸出している。
▼中国にとってはシルクロード(一帯一路)プロジェクトの最大拠点
中国カザフスタンの貿易は年々歳々増加しており、2021年1月11月の速報でも中国からの輸出が125億ドル、輸入が 103億ドル。これにくわえて中国から欧州向けの鉄道輸送は必ずカザフスタンを経由する 同期の20フィートコンテナは 146万個。コンテナ列車は1万5000本が通過した
カザフスタンの首都はヌルスルタン(1997年にアスタナを改称、新都心とした。ヌルスルタンはナゼルバエフの愛称)。最大 都市はアルマトイで、緑のオアシス、木立が緑風を呼び、多くの公園は緑に囲まれて市民の憩いの場所。モスクワとも鉄道が繋 がっている。
たしかに外国人も多いが、一番目立つのは中国人で、カラオケもレストランもホテルも、中国語が飛び交う。
カザフスタン暴動はロシアから治安部隊が投入され、騒ぎは沈静化した。中国の習近平主席は、治安回復の強硬路線を支持すると した。
1月12日、トカエフ大統領は治安と情報工作のトップで元首相のカリム・マシモフを拘束した。「暴動は訓練された工作員が仕 掛けた。国家反逆罪の容疑だ」と発表した。あたかも暴動の背後に、治安の責任者がいて外国とグルになっていたと示唆したこと になる。
マシモフはソ連時代から貿易実務に長け、USSRとなった1991年に中国へ通商、貿易ミッションが派遣されたときの顧問 格。以後、通商・貿易・運輸交渉で主要な役割を果たし、北京外国語大学、武漢大学で中国語をマスターし、この時期に「ハリク 銀行」を立ち上げた。カザフスタンの運輸大臣時代には鉄道を中国から欧州へ繋ぐ路線強化で交渉の中心にいた。
カザフスタンの金融を担うハリク銀行は、カザフスタン最大の銀行で、ナゼルバエフ前大統領の娘と息子が経営している。国民 からは疑惑の目でみられていた。また中国とのSCO(上海協力機構)に署名し、テロリズム対策の責任者となって情報治安部門 を統括する一方で、中国主導の一帯一路プロジェクト推進では中心人物だったとされる。たびたびの訪中では李克強首相とも仲が 深いと言われた。
マシモフは2001年から副首相、2007年─12年、2014年─16年と二回、首相を務め、ナゼルバエフ前大統領に次 ぐナンバーツーの地位にあった。
カザフスタンの権力抗争でトカエフにとって最大の邪魔者を除いたことになる。
闇に包まれていた背景が見えてきた。
つまりナゼルバエフ前大統領の形式的な権力禅譲とはイメージだけであり、国家安全会議議長はナゼルバエフ前大統領派が牛耳っ た。トカエフ大統領は、このボスを拘束したのである。
トカエフ大統領はナゼルバエフ前大統領の傀儡と見られていた。ところが、経験豊かなベテラン政治家であり、事実上は「二頭 政治」体制だった。
トカエフは、暴動に便乗して一元化へ走った。ナゼルバエフ前大統領「院政」の終わりの始まりとなる。そのトカエフがロシアの 要請を蹴ったのである。
プーチンを決断させたのはニセ大統領(バイデン)だったようです。
「宮崎正弘の国際情勢解題」より 令和四年(2022)3月1日(火曜日) 通巻7239号 <前日発行>
プーチンの思惑は90%外れたが、例外は「バイデンは無能」
ウクライナのクーデターより、ロシア軍のクーデターがあるかも。
戦争前のプーチンの思惑は以下の計算で成り立っていた、と思われる。
ウクライナに打って出ても西側は軍事介入はしないだろう
ドイツはガスの元栓をしめると脅せば、手も足も出せないだろう。
中国、インドなどは国連でロシア擁護に廻ってくれるだろう
ウォール街、シティはSWFITからロシア排除に反対するだろう。
カザフスタンはよもや裏切らないだろう。
NATOは参加国が増えたため、かえって結束しないだろう
ロシア国内の反プーチンデモは盛り上がるまい
思惑は九割方外れた。
例外は「バイデンが無能」という実態が浮き彫りになったことだ。
ワシントンポストといえば民主党左派、バイデン礼賛のメディアである。直近の同紙の世論調査には驚かされる。
就任直後の21年5月。バイデン支持は52%、不支持が42%だった。
直近の22年2月22日。支持は僅かに37%、不支持が55%。
プーチンの予測と事態は逆に回転した。
ドイツはウクライナにスティンガーミサイルなどを供与するとした。シュルツ首相は国防予算を大増額し、13兆円とするとし た。
欧米はSWIFTからロシア排除を決めた。ロシア・ルーブルは唸りを上げて大暴落。
カザフスタンはロシアからの派兵要請を拒絶し、ドンバス地方の独立を承認せず。
ウクライナの正規軍、志願兵は強い抵抗を示し、ロシア軍の被害甚大となった
ロシア軍の進行速度が鈍り、キエフ陥落は望み薄となった
ロシア国内で反プーチンデモは数十の都市に拡がり、かつプーチン辞任を求める署名に数十万人がすでに応じた。ロシアの知識 人等著名人170名が連名で辞任要求を突きつけた。150のロシアの地方都市、自治体がプーチンに戦争やめろと要求書を出し た。
日本を含む世界各国で激しい反ロシア運動が拡大した。とくにベルリンでは十万を超える民衆が集結した。
英国BPはロシアのロフネフツ株250億ドルを売却すると発表
「友軍」で出撃基地となったベラルーシも制裁対象となり日本も応じた。ベラルーシはロシアの「共犯」と見なされ、ルカシェ ンコ反対派の国外脱出が続く。
EUは580億ドルの武器援助(ジェット戦闘機を含む)。ロシア機の上空通過禁止
スエェーデンも武器輸出解禁に踏み切ると発表した。同国はNATO未加盟である。
ロシア製フェイクニュースは簡単に見破られた
▼ウクライナ支援の「國際義勇軍」が誕生へ
かつて米軍は日本への宣戦布告前に「フライング・タイガー」を非正規、志願兵として組織し中国へ送り込んだ。実態は正規軍 パイロットだった。
スペイン内戦では多くの人々が義勇軍に志願した。ヘミングウェイも。
デンマークは志願兵のウクライナ義勇軍参加を黙認するとした。
國際義勇軍が編成される可能性がでた。
情勢はプーチンの描いた方向とは逆方向に向きを変えた。
ロシア1憶4400万国民のなかで、ウクライナ侵攻に賛成する層が、予測を遙かに下回っている実態も表面化した。
となると、ウクライナ軍にクーデターを呼びかけたが、実際の心配事はロシア軍が反プーチンのクーデターを引き起こすことでは ないか?
プーチンの賭けは裏目に出つつある。
台湾は別の考えを含めて事態の推移を注視している。中国の侵攻に備えて、いかなる準備が必要であり、通信インフラの確保、 フェイクニュースの見破り方、国内に於ける中国共産党の第五列の蠢動監視。そして防衛武器の充足と、緊急時はどの国から何を 供与されるか、そのためには日頃、いかなる外交が必要なのかを、ウクライナの情勢分析により学んでいるに違いない。
何と金の亡者達にも見放されたようです。
「宮崎正弘の国際情勢解題」より 令和四年(2022)3月1日(火曜日)弐 通巻7240号
ロシアの成金やセレブたちも一斉にプーチン批判
ロシア新興財閥の相関図、海外からも非難の声が
ロシアの富豪、セレブ、有名人等のウクライナ侵攻反対の声が高まっている。露国会(ドーマ)の共産党議院3人がプーチンの 侵略に反対の声を上げた。
ロシアの金属産業界を代表するオレグ・デリパスカは「平和は非常に重要です。交渉はできるだけ早く始めなければならない」 と発言していた。
2月24日、ウクライナ侵攻が始まると、エリツィン前大統領の娘のタチアナ・ユマシェフは、フェイスブックのプロフィール写 真を黒い広場に変更し、「戦争にノー」とキャプションを付けた。
大富豪アブラモウィッツの娘、セルゲイ・ショイグ国防相の義息、プーチンの友人セルゲイ・チェメゾフの息子なども、署名運 動に参加した。
アルファ銀行の共同創設者ミハイル・フリドマンは、ウクライナでの戦争を「悲劇」と呼び、「流血」を終わらせなければなら ないと発言した。
2月27日はネムツォフの八回忌。各地で追悼集会の名の下に反戦運動集会となった。
ロシアの新興財閥には相互に複雑な依存関係があり、また舞台裏では明確にクレムリンの権力機構と繋がっている。ただし新興 財閥の殆どがユダヤ人で、とりわけウクライナにはユダヤ人コミュニティが存在しているため、プーチンには批判的となる。
アブラモウィッツは世界的に有名なユダヤ系ロシア人で、イスラエル国籍を持つが、最近はポルトガル国籍も取得した。かれは 石油取引で辣腕を振るい、巨万の富を築いた。
ボリス・ベレゾフスキーが設立した石油企業シブネフチを基盤にファンドを設立した。
ベレゾフスキーはもともとが数学博士、エリツィン時代にメディア王となってロシアのマスコミ界の王と評されたが、プーチン 政権に替わると英国へ亡命し、訴訟費用などで、保有美術品などを売却、ロンドンで客死した。
アブラモウィッツは露西亜政界にも進出し、チュクチ自治区知事に当選した。アブラモウィッツは、ロシア最大のアルミニウム 企業「ルサール」も経営していたが、シブネフチ株式を130億ドルで「ガスプロム」に、ルサール株を20億ドルでオレグ・デ リパスカに売って海外へ亡命を図った。
プーチンがベレゾフスキーを取り調べ始め、国外逃亡したとき、アブラモヴィッチは沈黙を守った。プーチン政権とは良好な関 係を暫時維持していた。
ところが、ロシア最大手「ユコス」のミハイル・ホドルコフスキー逮捕を機に英国へ移住した。
英国ではサッカーチームの「チェルシー」を買収したため、世界的な有名人となった。
プーチンを舌鋒鋭く批判し「裸の王様」と揶揄したのはミハエル・ホドルコフスキーで、銀行業務から、国有企業民営化のおり に最大石油企業「ユコス」を創設し、CEO。エクソンモービルへの売却を進めていた。
一貫してプーチンを批判し続けたため逮捕され、獄中八年。おもにチタ刑務所に服役し、釈放されるやドイツへ亡命した。
しばらく沈黙していたが英国へ移住後は活発なプーチン批判を再開している。ホドルコフスキーの「ユコス」はプーチン派に乗っ 取られ「ロフネフツ」となった。
オレグ・デリパスカもユダヤ人。アルミでロシア最大となって、各種事業に投資し、一時はフォーブス世界富豪大十位に顔をだ したこともあった。アルミ不況に遭遇して、プーチンがルサールを国有化、そのうえデリパスカは米国の制裁対象となって在米邸 宅が家宅捜索をうけるなど失意のどん底に落ちた。
ことほど左様にエリツィン時代に資本主義化の波に乗ってM&Aでいきなりの大資本か、新興成金となったのはユダヤ人であ り、プーチンがかれらを遠ざけたために多くがロシアを去った。
ロシア経済はユダヤ人が不在となると、過去にも同じことがあったように必ず不況に陥るというジンクスがある。
さて、結末はどうなるのでしょうか。その後、習皇帝がどう動くのか。今回の結果を見て、これは駄目だと諦めるのか、それとも自分だけは何としても生き残ると画策するのでしょうか。不気味です。