宮崎さんのシミュレーションの続きです。長いのを3回分取り上げているので相当に長いです。時間のあるときに読んでください。
それにしても、世界は完全に騙されてChinaを育て過ぎたようです。気が付くのが余りにも遅すぎた付けが習皇帝というバカのお陰でトランプさんが気付かせてくれましたがもしかしたら手遅れということもありそうです。
どちらにしても、今年中には決着を付けて欲しいものです。さて、どうなることやら。
「宮崎正弘の国際情勢解題」より 令和四年(2022) 3月8日(火曜日)弐 通巻第7250号
(承前)
西側がロシア制裁で団結し、ウクライナを熱烈支援した(その2)
中国が台湾を侵攻したら、日本は何が可能か?
ロシア軍のウクライナを目撃した台湾は「きょうのウクライナ、あすの台湾」と危機感に取り憑かれる一方、民進党政権は「台 湾とウクライナは違う」と冷静な対応を呼び掛けている。安倍晋三前首相は「台湾有事は日本有事」とオンラインで講演したが、 北京は噛みついた。「火事になって焼け死ぬぞ」。
ウクライナと台湾とでは何が異なるか。
台湾の国家安全保障政策高官は「台湾とウクライナの相違点」を(1)台湾は東アジアの第1列島線の要衝であり、地政学上の 重要性はウクライナより大きい。(2)中国に対し、台湾海峡が天然の障壁になっている。米国は「台湾関係法」により台湾海峡 の安全保障を約束している。(3)台湾は半導体などサプライチェーンのうえで欠かせない重要性をもっている。
また台湾国防部は「中国軍は管轄地域が広いため、戦力が分散している。そのうえ渡海能力、その兵站ならびに上陸や補給の能 力が不十分だ。ゆえに現時点で台湾を攻略するのは難しいだろう」と見解を述べている。
さてロシア軍のウクライナ侵攻に関して、國際世論の高まりは、プーチンへの強烈な批判となって、想定外の拡がりを見せた。
日本のメディアは、ロシアの主張をカバーしないで、もっぱら欧米の主張に連帯し、プーチンは「人が替わった」「人格がおか しくなった」「パラノイアだ」とする報道を、これまた無批判で転写、複製拡大に励む。プーチンは変わっていない。一貫して彼 はロシアナショナリズムを唱えてきたのだ。
ロシアの芸術ボイコットにも批判が拡散し、映画監督、音楽家、オーケストラ指揮者や他の分野の芸術家にはリトマス試験紙の ようにロシア支援か、プーチン批判かで分かれ、楽団の指揮をやめたロシア人がでた。
ボリショイバレー団の人気ダンサー、映画監督などはプーチンを批判して退団した。
このような動きを中国に当てはめると、中国礼賛映画、あるいは中国人主演の映画は上映禁止、ネットフリックスの配信停止な どにいたる可能性が高い。
すでにジャッキー・チェンは香港で嫌われ者、主演映画のボイコット運動が起きた。ジャッキーはハリウッドに進出した世界的 俳優である。ファン・ビンビンなどは「脱税」で、有名ピアニストは「買春」で活動の場を失った。テニス選手は最高幹部との不 倫で、やはり表舞台を去った。これらは西側の中国制裁とは無関係で起きている事変だが、連想で映画界、音楽世界に独自の世論 を作り出せることも示した。
テニス選手・膨師をめぐる国際世論は、中国に批判的で、そのままIOCのバッハ会長の親中路線批判に直結し、いまも尾を引 いている。
映画監督の張芸謀(チャン・イーモー)は、五輪演出で世界から批判が殺到して、その芸術性が疑われた。
●シミュレーション5
ハリウッドは中国資本の虜となって、中国を批判する映画の主演者らを干してきたが、リチャード・ギアらが復活するだろう。
日本ではCD販売中断、ネットフリックス配信停止などの措置が取られ、莫元の「赤いコーリャン」などは書店からも消える。親 中路線の評論家、エコノミストらの言説に疑問がつけられるだろう。
▼日本のアキレス腱は在中邦人をいかに脱出させられるかにある
コロナ災禍で航空機往来が激減し、中国人観光客はピタリと止まり、留学生、研修生の多くが来日出来なくなった。
人の往来が少なくなれば、疫病の侵入を防ぐ効果がある。
ウクライナ支援の一環で、ロシアに乗り入れている航空各社は定期便を中断、欧州から露西亜上空を通過する定期便はアンカ レッジ経由か南回りとなり、いずれも便数を減らし、またアエロフロートの乗り入れを禁止した。人的交流は必然的にストップし た。
中国にこのパターンはどの程度当てはまるだろうか?
ロシア在住の日本人は2400名(3月7日現在)、外務省は帰国勧告を出している。在中邦人は、じつにこの100倍!
24万人が日本に引き揚げるのはたいそう難儀であり、満州の悲劇の二の舞を演じないことを祈るばかりである。
●シミュレーション6
中国が台湾侵攻の気配をみせると、台湾からの引き上げは距離的に近い上、飛行機がダメなら石垣島への船の利用も出来る。
しかし中国軍の台湾侵攻となると、制裁対象は中国だから、間違いなく邦人の引き揚げという難題に直面する。
あの2005年の「反日暴動」のおりも邦人引き揚げは大問題となり、大手企業や大学のチャーター便が飛んだ。便数の多い沿岸 部を別として、中国の奥地に滞在する人々が円滑に引き揚げるには難儀を伴うだろう。
中国の従来的な方法では、かれらは「人質」である。
▼台湾義勇軍には日本から二万人以上が参加するだろう
ロシアと闘えとばかりウクライナ支援の國際義勇軍が呼びかけられた。欧米からは二万人の応募、日本からも70名が志願し た。ゼレンスキー大統領の支持率たるや未曽有の91%である。
台湾への義勇軍に関して言えば、過去の「白団」と根本中将の金門島防衛の作戦指導など日本の義勇軍の大活躍がある。米国は 秘かに海兵隊を台湾へ派遣し、台湾軍の訓練にあたっていた事実は蔡英文総統も追認した。
ウクライナのゼレンスキー大統領を護衛しているのは英国の特殊部隊らしい。すでに暗殺未遂三回。ロシアはチェチェンの過激 派を暗殺部隊として潜入させた形跡も濃厚だ。
義勇はふたつに分かれ、正規軍の偽装と、ボランティアの志願兵である。フライング・タイガーはまさしく米空軍が志願を偽装 した。日本の防衛は「専守防衛」だから防衛範囲を超えるには義勇軍に頼るしかないだろう。
ウクライナ戦争で、効果を挙げているのは「サイバー義勇軍」と言われる。
●シミュレーション7
台湾義勇軍は日本から相当の志願者が見込まれるだろう。推定で二万人ほどが台湾防衛に立ち上がると予想される。ただし予備 自衛官、警察OBなど訓練を受けた人でないと戦闘現場には不向きであり、むしろ米国の退役軍人などが相当数参加するのではな いだろうか。
▼超限戦とはプーチンのいう「ハイブリッド戦争」である
心理的な宣伝戦が不可欠だが、この点で親中派のメディアが多い日本のマスコミにアキレス腱がある。
「プーチンやめろ」、「NO WAR」のデモ、抗議集会は世界に急速に拡がり、ベルリンでは十万を超える人々が集まった。 驚くなかれ、ロシア国内ですら、150の都市でプーチンやめろ、「恥」と書いたプラカードの列が夥しかった。
ならば、同じことは中国で起きるだろうか?
中国は反政府デモ、集会は現状のような監視体制下では不可能である。ネットの言論活動もハッカー部隊の厳しいほどの監視に より、反対意見はすぐに削除され、投稿者が特定されて逮捕される。
第一に中国へ西側の制裁はウイグル問題で火を噴き、ユニクロのウイグル製品を米国は税関で留め置いた。フランスも同様な措 置をとった。このため日本企業は一斉に制裁の歩調を揃えたかに見える。
その前のトランプ政権の高関税付与、ハイテク企業の買収禁止、中国企業のNY上場制限などでは、日本は同じ手法を講じよう とはしなかった。
第二に米国の中国人スパイ摘発だが、日本の対応は遅れているというより、何もなされていない。
全国十五の大学にある妖しげな孔子学院は閉鎖されず、留学生はやりたい放題。そればかりか大学で中国批判を展開すると、留学 生が騒ぎ出すため言論が封鎖されている。早稲田大学の有馬哲夫教授の解任運動が突如起きた。
その前は麗澤大学で藤井厳喜氏が、留学生から「『シナ』と言うな」と難癖をつけられて、辞職へ追いやられたように、まだまだ 日本の雰囲気は中国にあまい。
したがって日本の反中言論は『人道』と「民主」の置かれることになるだろう。それならば学生も主婦の同調、共鳴しやすくな る。
第三はハイテクを盗取する中国人のスパイも野放しで、単純にスパイ防止法がないからである。
第四に外国人土地購入規制もザル法と言っておよいが連立政権の相手が親中派だから自民党が決断できないのである。
心理戦争は、相手の意識の領域に食い込む高等作戦である。メタバースではなくメタフィジカルの領域に入り込んでくる。
反対に中国人の意識に西側の論理を埋め込む必要があるが、中国人の本質が何かを理解していない日本人が、こうした心理戦をた たかうにはハンディがある。
むしろ在米、在欧、在日の中国人のなかで、民主主義を理解している人たちを糾合する必要がある。
台湾はこの点で、ハイブリッド戦争への応用を日頃から鍛えてきた。
●シミュレーション8
日本の若者はコンピュータに慣れ親しみ、ゲームに親しんできた。この若者の才能は、ウォー・ゲームに有効に活用出来るだろ う。
また台湾の通信網はまっさきに切断される怖れが強いから、日本は衛星中継の基地局の提供や、予備的な簡便通信基地などの器 財、施設を提供できる準備が必要となるだろう。
以下、次号。
「宮崎正弘の国際情勢解題」より 令和四年(2022) 3月9日(水曜日)
通巻第7251号
(承前)
西側がロシア制裁で団結し、ウクライナを熱烈支援した(その3)
日本の安全確保、自衛力強化とエネルギー、食糧確保が先決になる
バイデン大統領は3月8日、ロシアからの石油とガスの輸入を禁止すると発表した。
「輸入制限」や「一時停止」ではない。「禁輸」である。英国はそこまでいかず「一時停止」と発表した。
またエクソン、シェルなど欧米エネルギー企業は一斉にロシアから手を引くとしている。秀吉の三木城、鳥取城干し殺し作戦を 思い出した。
ウクライナモデルで幾つかのシミュレーションを試みてきたが、もし中台戦争が勃発した場合、日本にとっての生命線は、エネ ルギーと食糧である。もちろん国家安全保障の国防議論をベースに考察を続ける。
台湾は石油輸入国であり、死活的な問題はシーレーンの確保である。中国海軍は南シナ海で海上封鎖能力があり、これを防ぐた めに、米英仏独豪が艦船をつぎつぎと派遣している。台湾の海軍力は弱い。
日本は99%の原油とガス輸入国である。かつては豊かな石炭があったが、いま国内に炭鉱はひとつもない。石炭もすべて輸入 している。豊かな国産エネルギーは「水」、すなわち水力ダムだけ。原発は稼働しているのが一つか二つ。つまり原油、ガス、石 炭が輸入されなくなれば、電気が停まる。秋田県と新潟県に僅かにガス田と石油リグが稼働している。
原油はガソリン、航空機燃料にもなり、エンジン系統のクルマもトラックも、保冷車も動かなくなる。引っ越しも出来なくな る。火力発電が稼働しないと発電量が減り、となると電気を使うEVは動かない。
原油を中東の産油国に過度に輸入依存すると、ホルムズ海峡が封鎖されると危殆に瀕することは以前から何度も言われ供給源の 多元化が叫ばれた。
かろうじて日本は危機に備えた備蓄をしてきたが、昨今、この国家備蓄を取り崩しはじめた。ガソリン値上げに対応するためであ る。備蓄タンクは錦江湾など、数カ所に巨大なタンク群が並んでいる。
ガスはLNGタンカーでカタール、インドネシア、ブルネイなどから輸入しているが、10%がロシアからだ。ロシアのウクラ イナ侵攻で、真っ先にエクソンが「サハリン1」からの撤退を表明した。「サハリン1」はエクソンとインド石油が半分、ロシア 企業ロスネフチが20%、そして「サハリン石油天然ガス開発」(日本の通産、伊藤忠、石油資源開発、丸紅などが出資)という 出資構成で、ガスばかりか石油も生産している。
円安と原油代金暴騰によって日本の貿易収支は、なんと赤字転落。それも22年1月速報では過去弐番目の1兆1887億円の 経常赤字を記録した。貿易立国、つねに経常黒字だった日本の転落!
日本企業が大きく絡むのは「サハリン2」である。ガスパイプ欄を樺太に北から南へ敷設し、ユジノサハリンスクあたりで液化 し、タンカーに積め込んで日本へ。60%(年間1000万トン)が日本のシェアである。
株構成はロシアのガスプロムが51%、残りの22・5%を三井物産と三菱商事がもち、多国籍企業のシェルが27・5%だっ た。シェルが撤退を表明した。
欧米企業のサハリン資源からの撤退は、日本を窮地に陥れるだろう。エクソンもシェルも欧米が足並み揃えてのロシア制裁の一 環ではあるが、急に撤退といっても、株式は誰が買うのか。綺麗事のアナウンスだけで、「操業を徐々に停止して合弁から手を引 く」と撤退時期の明示はしていない。
▼パラジウムはロシアが世界生産の40%、ニッケルは2・5倍に暴騰
ロシアからの撤退若しくは縮小を表明した西側の企業は3月8日までに230社。マック、スタバ、ユニクロは事業継続を表明 している。欧州企業は関連が深いため、いきなりの撤退には踏み切れないでいる。
ハイテク企業はロシアのウクライナ侵攻による西側の制裁に加えて、ロシア自身の報復制裁、さらには海運の停滞により原材料 確保が難しくなった分野がある。
とくに排ガスの触媒に用いられるパラジウムはロシアが世界生産の40%を占める。
ガス系のネオン、クリプトンなどは半導体製造のレーザー光源で、ウクライナが世界生産の70%を占める。ウクライナの精製 工場が停止され、これに直撃を受けたのは台湾だった。
いずれもスポット価格が高騰し、代替生産が可能な南アフリカは増産不能、パラジウム在庫は日本も台湾も数ヶ月しかない。半 導体不足で自動車生産が減速し、トイレまで影響をうけたばかりだが、パラジウム不足は半導体の製造そのものを直撃することに なる。
ニッケルはステンレス仕様に強い需要があり、ウクライナ危機で國際価格は2・5倍となり、取引停止となった。ステンレス業 界、悲鳴を挙げる。
中国の場合、いうまでのなくレアアースで、日本企業はすでに中国産レアアース供給中断という痛い目にあった。一部は中国へ 工場を移転し、また供給元の多元化のため、カザフスタン開発がスタートした。
レアアース最大の埋蔵は米国だが、環境問題と汚染が甚だしい精錬プロセスがあるため、中国に依存してきた。中国政策の転換 により、米国は国内レアアース鉱山の再開発を決めたが、稼働までに数年はかかるとされる。
半導体世界一の台湾、このレアアース輸入の代替はあるのか。
▼ウクライナ難民はまもなく300万人になる
3月8日現在、ウクライナ難民は200万人を突破した。
ポーランド、ハンガリー、ルーマニア、スロバキア、モルドバが難民先の五傑。戦争が長期化すると、この難民問題が欧州政治 を深刻に悩ませることになる。援助疲れが、はやくも見えてきた。
ドイツはシリア難民を大量に引き取り、国内治安が一気に悪化した。そのシリアから過激派テロリストが、ロシアへ義勇軍で加 わっている。
英国は香港からの移民(実態は経済難民)に加えてポーランドからの労働移民を認め、以前から住み着いたインド、ナイジェリア などの旧植民地から夥しい人口流入があって、英国の気風とか伝統は稀釈された。
フランスも同じで、ベトナムからアルジェリアから、外国人流入による治安悪化は、ナショナリスト政党が躍進する結果を産ん だ。マクロン再選は危ういだろう。
ウクライナ難民はポーランドへすでに百万人以上が向かった。ここに腰掛け、最終的にはドイツへ向かう。
ルーマニアも数十万人を暖かく迎え、ホテルの宴会場などを宿舎としているが、じつは難民の半分が子供、それもミルクが必要な 赤ちゃんが相当数あって、医療支援が不足している。
モルドバへオデッサから徒歩で向かった難民の多くはユダヤ系で、ここから連日数百がイスラエルへ向かっている。航空料金は イスラエルの移民推進団体が支払い、当面の滞在宿舎や生活費もイスラエルの慈善団体がまかなっている。
さて台湾が侵攻をうけた場合、難民は何処へ向かうか?
航空機脱出組は疑いもなくアメリカである。華僑の散らばるASEAN諸国にも向かうだろうが、船しか手段がなくなった場 合、百万以上が日本に向かうことになるだろう。
まさに台湾有事は日本有事。
「宮崎正弘の国際情勢解題」より 令和四年(2022) 3月9日(水曜日)参 通巻第7252号
(承前)
西側がロシア制裁で団結し、ウクライナを熱烈支援した(その4)
ロシアに分裂の兆し、プーチンの権力基盤に「地割れ」
プーチンの計算違いは山のように目立つが、西側がこれほど強固に制裁をなすとは思っていなかった。そのうえ、西側各国が武 器供与を決断し、ポーランドは戦闘機を供与。
中立国のデンマーク、スウェーデンもウクライナへの軍事支援。日本も防弾チョッキを供与した。
これではウクライナ局地戦ではなく、事実上の第三次世界大戦の様相である。
とくにポーランドがミグ29を「無償」で、ウクライナに供与する決定に米国も驚いている。ミグ29は、ロシア製であるがゆえ に、ウクライナ空軍パイロットはミグなら操縦できるのだ。
代替に米国はポーランドにF16の中古機を供与する。制空権を完全に掌握できていない露軍にとって、脅威となるのは明白であ る。すでに戦線ではロシアの司令官クラスが複数死亡して、指揮系統に乱れがあるとも報告されている。
ニューヨークポスト紙に拠れば、米陸軍退役軍人がウクライナへ義勇兵として向かった。
一方、ロシア国内は反プーチンの抗議集会、デモを弾圧しているが、ロシア人のかなりがウクライナ侵攻を支持していない分裂状 況が読み取れる。
またエリツィン時代の新興成金は殆どが海外へ出たが、替わってロシアの新興財閥を形成したのはプーチンマフィアで、これまた ユダヤ人が多い。プーチン与党と見られてきたが、アブラモウィッツやフリードマンらがプーチンと露骨に距離を置き始めた。
議会証言でバーンズCIA長官は「プーチンはもっと過激な作戦で軍事力を投入する可能性が高い」とした。ロシア軍内の士気低 下は、プーチンに取って想定外だったのではないか。軍人がプーチンを見限る兆候である。
あまつさえ西側企業の多くが制裁路線に同調し、投資中断、撤退、規模縮小、販売の一時停止など、ロシアの市民生活に深刻な影 響が拡がっている。猛烈インフレとルーブルの暴落、この困窮は、必然的にプーチンへの不審、不満となり「大祖国戦争のナショ ナリズム」が「燃え滓」となって、権力基盤に地割れが起きている。
上層部がささくれ立ち、齟齬が発生し、さらに長期戦となるとロシア国内に厭戦気分が蔓延し、軍のクーデターを期待する流れに もなりかねないだろう。
またロシアのメディアの幾つかがプーチン批判の報道をしており、『プラウダ』は嘘放送という評価が定着してきた。
▼突然の落剥ぶりのロシアに中国は狼狽した
さて中国の対応はどうか。
おりから全人代が開催されているが、世界的に霞んでしまった。経済成長を5・5%、軍事費増大は7・1%と数字だけが踊っ て、中味の薄い大会となった。
「無限の友情」を誓い合った筈なのに国連総会で、中国はロシア支持をせず、棄権した。西側の経済制裁には反対と言ったが、 仲介の労をとるとも発言し、態度が曖昧。そのうえ中露が「鉄壁の団結」なら、中国人民解放軍を援軍として差し向けるだろう に、そっぽを向いた。
8日にはフランス、ドイツ首脳と習近平がオンライン会談を開いた。欧州の動きに呼応するとは言わなかったが、かなりの狼狽 が見て取れるだろう
というのも、ロシアのウクライナ侵攻に対して、西側がとった経済制裁の強靱さを習近平は目の当たりにしたからだ。
外国ファンドは中国債券をおよそ5800億ドル保有しているが(22年二月現在)、すでに106億ドル分を売却した。
もし中国が台湾を侵攻すれば、西側は台湾に義勇兵を送り、物資、人道的援助にくわえて武器供与の競演を演じるだろう。とりわ け対空、対艦ミサイルなどで台湾が防御態勢を強化すれば、強襲どころではなくなる。
志願兵(ボランティア)に見せかけて海兵隊やグリーンベレーが台湾軍に混入するか、地域外での特殊作戦を展開するだろう。
外野も黙ってはいまい。
世界各国で反中デモが組織され、主導権は海外へ逃れた民主活動家や、留学生、チベット、ウイグル、南モンゴルなどの留学生や 移民が中心となって大規模な抗議活動を展開するだろうが、日本のメディアとて、これまでの黙殺軽視から一転して、大きく報じ ざるをえなくなるだろう。
反中感情の強いフィリピン、インドネシア、ベトナムなどでは反中暴動が確実に起こる。チャイナタウンは焼き討ちされないよう に自警団を組織するだろうし、台湾系華僑が背後で軍資金を用意するだろう。
世界のメディアは、日本の某新聞も含めて一斉に中国批判に転じ、親中路線のテレビ局も、コメンティター総入れ替えで批判一 色になるのは、今回のウクライナ報道をみても分かる。ロシアに味方するメディアはほぼ皆無となった。
経済制裁は中国に進出した西側企業の撤退を加速化させる。中国の経済力はこれで脳死状態に近くなる可能性がある。
習近平は台湾問題での発言に注意しなければならなくなった。王毅発言を克明に辿ると、アフガニスタン以後の「戦狼外交」の トーンを静かに弱め、露骨にロシアと距離を置き始めたことが分かる。
ロシアに仲裁を名乗り出ているのはイスラエルとトルコ、これにフランスが重なるが、中国はリップサービスを除外して、仲裁 できる立場でもないことに中国外交部は気がついた。
それにしても宮崎さんの筆の早さには驚かされます。無料でこれを読まさせて頂けることに感謝しかないですね。
体調を崩されているようですが、くれぐれもお大事になさってください。何といっても、この宮崎さんのメルマガが楽しみで生きているようなものですから。