ウクライナ戦争で食料やエネルギー危機が起きています。ところがもう一つ危機があるそうです。
何と、大量の残余武器管理だそうです。こんな発想はなかったので驚かされました。
その危機を宮崎さんが取り上げてくれています。この辺りが死の商人が活躍する下地でもあるのでしょう。
「宮崎正弘の国際情勢解題」より 令和四年(2022)6月2日(木曜日)
通巻第7355号
ウクライナ戦争がもたらした三つの危機
食料、エネルギー、そして大量の残余武器管理
欧州はロシアにエネルギー供給を依存している。「戦争」ではなく、ロシアは「特別軍事作戦」と言っている。つまりガス、原 油パイプラインは、対戦中のウクライナをいまも経由しているのである。
5月30日、EUはロシア産原油の禁輸措置で合意した。海上輸送による原油が対象で、パイプラインの輸入制限は年内。つま りドイツなどはしっかりと助かる。ガスは依然として例外だから効果は期待できないのではないか。しかしプーチンの戦争継続を かなり難しくさせるだろう。
合意にいたるまで、オルバン率いるハンガリーの猛反発に遭遇し、協議は難航した。
ミシェル欧州理事会常任議長(EU大統領)は記者会見で、「ロシア原油へ依存度が高いハンガリーが強い難色を示し、一ヶ月 を空転させた。そこでパイプライン経由での輸入を当面除外する妥協案が成立した」と交渉の過程をまとめた。
EU内では当初、合意を楽観する見方が強く、行政執行機関にあたる欧州委員会は、ハンガリーなどに制裁導入を遅らせること などを持ちかけた。しかし同国の民族主義的な政治家のオルバンは直近の選挙でも大勝した。国民的人気を背景にオルバン首相は 「制裁案はハンガリー経済への核爆弾投下だ」と正面から反対していた。「精製施設更新に「150億~180億ユーロかかる。 この資金をEUが提供するのか」と迫った。
EU合意を受けて、ニューヨーク商業取引所(NYMEX)の原油先物相場は大幅続伸した。
舞台裏ではロシアの値引きが行われており、中国が最大顧客だが、インドもロシア制裁には背を向け、ロシア原油を『特別価格 (1バーレル40ドル前後と言われている)』で購入しており、しかもルーブル払いとしている。
▲肥料代金が二倍になる!!
日本政府は5月27日の閣議で、2021年度の食料・農業・農村白書を決定した。
コロナ禍の影響ならびにロシアのウクライナ侵攻による「食料安全保障の強化への(国民の)期待が一層高まっている」と指摘し たうえで、若手農業従事者の参入や規模拡大などの「持続可能な農業構造の実現」が重要としている。
さてJAは2022年6月から10月の肥料の価格を最大94%値上げすると発表した。衝撃である。肥料が二倍となるのだ。輸 入の尿素を94%引き上げる。塩化カリウムは80%、複数の成分を組み合わせた「高度化成肥料」は55%、それぞれ値上げす る。
ロシアがウクライナに侵攻し、主要輸出国である両国からの輸出が停滞するなど、世界的に需給のバランスが崩れたためだ。
「自給」と言っても、農業は肥料漬けになっており、とくに中国依存の肥料原料の調達の先行きに不安が高まっている。
ジェネリック薬品はインドへ依存しているが、その薬品原料をインドは中国に依存している。矛盾した構造をいかに解決する か、原料の供給先の分散が叫ばれているが、具体的な進展はない。
▲ウクライナに供与したハイテク兵器はちゃんと管理されているのか
EUの域内組織の一つが「ユーロポール」(インターポールは国際警察機構)である。
長官は生え抜きの女性で、デ・ボレ。欧州では有名だが、日本では知られない。麻薬、武器密輸、ハッカー犯罪などで捜査協力 とEU域内加盟国での情報共有を目的としている。
6月1日、ボレ長官は記者会見で重大な警告を発した。
「戦争が終わったら、高度武器がほかの紛争地に横流しされる懼れがある。武器密輸のマフィアが暗躍している。現にシリアの アルカィーダ、ISにスティンガーが流れた。将来、民間機を脅迫する取引に使われるからもしれない。ウクライナにはせ参じた 所謂『外人ボランティア』は、純粋な志願者もいるが、マフィア組織と関連するメンバーが混入している」との警戒信号だった。
米国はウクライナが要請する長距離ミサイル供給を拒否した。
すでに英米がウクライナに供与したジャベリン、スティンガーは大量であり、155ミリ榴弾砲も数十基、対艦ミサイル「ハー プーン」なども初戦で効果をあげた。問題は在庫管理であり、監視体制がなきに等しいウクライナ軍、各部隊は統合されていな い。
それゆえに『戦後』の処理がユーロポールの頭痛の種になったのである。ましてウクライナのマフィアは凶暴で知られる。
残余武器なんて言葉も知りませんでしたが、それに群がる金の亡者達が蠢いているのも驚きです。
やはり、世界は腹黒い。