ウクライナ戦争でウクライナを援助している欧米に疲労感が現れているそうです。アメリカを筆頭に援助している国も腹黒いだけに何を目的でそうしているかは怪しさ満載というところじゃないでしょうか。
そんな動きを宮崎さんが報告してくれています。色んな国や組織の思惑が停戦にも影響するのは間違いないですが、果たして停戦は成るのでしょうか。
「宮崎正弘の国際情勢解題」より 令和四年(2022)6月9日(木曜日)
通巻第7362号
「ウクライナ支援」の欧米に疲労感。「停戦交渉を急げ」論が急拡大
「ハイマース供与は停戦を遅らせ泥沼化させるだけだ」と軍専門筋も
つい半月前、ダボス会議は『ウクライナ一色』だった。5月23日にはオンラインでゼレンスキー大統領が登場し、対ロ制 裁の 強化を訴えた。また復興には5000億ドルが必要だと経済支援の拡大も抜け目なく要請した。
この会議でのハイライトはキッシンジャー元国務長官と極左・ジョージソロスとの鋭角的な対立だった。停戦をいそげと秩 序再 建を説く前者に対し、ソロスは「ロシアは信用できない。停戦など実現不可能だ」とした。
バイデン政権はウクライナへの武器供与を増大させ、M42「ハイマース」の供与を決めた。実戦配備は六月末になる。ロ シア は「火に油を注ぐ」とし、「米とウクライナの『強力な、信頼できる約束』があり、ハイマースをウクライナはロシア領内に撃ち 込まない」(ブリンケン国務長官)と米国はいうが、「約束は守られたためしがない」(ドミトリー・ペスコフ大統領府ス ポーク スマン)と反論した。
プーチンは「新しい攻撃に転じる」と西側の関与に反発した。
「ハイマース供与は死者を増やすだけで、大局には影響しないだろう」と米国のINF検査官を務めたスコット・リッター が言 う(RT、6月7日)。ハイマースは70キロの射程があり、長距離ロケット弾を装備すれば300キロを飛翔できるからロシア 領内の拠点ベルグロード攻撃に使える。米国は6月1日にハイマース供与を決めたが、長距離ロケットは供与しない方針だ。
ウクライナ軍が予想外に強く二日間で落とする筈だったキエフを防御したばかりか、ロシア軍を敗退させたのは英米が供与 した ジュリンとスティンガー・ミサイルの威力だった。
この携行ミサイルの特訓のため、米軍はウクライナ兵をドイツのNATO基地へ招き、徹底的に教え込んだうえ、およそ 150 名の米軍顧問団が現場戦線で指導していた。またロシア軍の動向情報を提供したため、ウクライナは有利だったのである。
通信網がロシアによって途絶すると、すかさずイーロン・マスクが「スペースX」のスターリンクを提供した。欧米各紙 は、こ のスターリンクを中国が打ち落とす可能性に言及している。
155ミリ榴弾砲(M777)も北部と東部戦線に投入され、威力を発揮したが、これも米軍がドイツのNATO基地でウ クラ イナ兵と特訓したのだ。つまりウクライナ軍は事実上、準NATO軍として機能していると言えるだろう。
侵攻以来、西側の論調はロシア軍の残虐ばかりを批判し、ロシアの言い分に聞く耳を持たないが、ウクライナでも大本営発 表と メディアの統制が進んでおり、トルストイの『戦争と平和』は発禁処分となった。ロシア人が平和を望むはずはないというわけ だ。
▲ウクライナ支援に疲労感が拡がる欧米
欧州の対応をみるとしゃかりきの応援団は英国。なにしろ国会議員のバッジは左半分が英国旗、右はウクライナ国旗であ る。
ジョンソン首相が強烈に支援旗を振り、自らもキエフへ乗り込んだが、演出過多。保守党内からも「パーティゲート疑惑」 で ジョンソン辞任要求が四割に達していた。英国民の感情はウクライナ支援への疲労感である。
ジョンソン罷免の不信任案は否決されたものの指導力は半ば失われている。すなわちジョンソン政権はレイムダック入りし てい る。
フランスはマクロンが嘗てのサルコジ外交をまねて、モスクワを二往復したが、プーチンから「廊下鳶」扱いされた。マク ロン は『プーチンに恥をかかせてはいけない』とも発言したためウクライナ外務省から顰蹙を買った。
ロシアの言い分はドネツクとルガンスクで、親露住民が1万4000人虐殺されたため、住民を保護する『特別軍事作戦だ』 とし ており、ロシア国民の七割近くは、このプーチンの主張を是としている。「ドンバス地区の帰属は住民投票で決めるとした『ミン スク合意』「を守らなかったのはウクライナ側だ」とロシアは主張している。
ロシア軍は6月8日までにウクライナ全土の二割を掌握したことはゼレンスキー大統領も認めた。
プーチンに「西側の陰謀」とささやき続けているのは安全保障会議書記のニコライ・パトルシェフ(上級大将)だ。パトル シェ フは『レニングラード派』であり、エリツィン大統領のときに首相を務めたプーチンと五十年の交友があり、プーチンの後釜とし てFSB長官も務めた。「ウクライナ軍はナチ」『背後に西側の陰謀』「ネオナチとネオコンが共同」などとプーチンに陰謀 論を 吹き込んだ。パトルシェフ自身も大富豪であり、政権への影響力が強いが、すでに71歳で、シロビキの長老でもある。
ドイツは社民党と緑の党の左翼連立だが、突然変異的にウクライナへ武器支援、防衛費をGDPの二倍にするとした。とこ ろ が、ドイツ兵は使い物にならず、ウクライナへ供与した武器は錆があって、使えなかったとする報告がある。
あれほど親露外交を進めたメルケル前首相は、現在、回想録を執筆中とかで、ロシアのウクライナ侵攻開始からずっと沈黙 して きた。ようやく口を開き「ロシアの侵攻は擁護できない。ウクライナと連帯する」と発言した。
米国はバイデンに一貫した戦略がなく、プーチンを「人殺し」と言ったり「台湾を軍事的に介入する」としたり、思いつき で IPEFを獅子吼し、400億ドルものウクライナ支援予算を可決した。
ところが、バイデンの支持率は逆に急降下、36%しかなく、中間選挙での民主党の惨敗が見えている。まして国内の銃乱 射、治 安悪化、猛烈インフレで、米国民の関心事はウクライナにはない。
バイデンは自由のために徹底的に戦えと鼓舞し、「プーチンを権力の座に居座らせてはいけない」と豪語していたが、だん だん と語気を緩め『プーチン氏を追放する気はない。領土の一ミリたりとも譲歩するな等とゼレンスキー大統領には言っていない」と 従来の発言をひっくりかえした。
息子のハンター・バイデンがウクライナと癒着して法外な顧問料をせしめていたほか、証拠として押収されているハンター の PCから、数々の疑惑が取り沙汰されており、また直近では『ニューヨーク・ポスト』に、ハンターが売春婦と銃を振り回してい る写真が露出し、結局、トランプのロシアゲートをでっちあげたのは、こうしたスキャンダルから目を逸らす煙幕戦術だっ た。
トランプ政権の誕生を予測していなかったオバマ、ヒラリー、バイデン等はCIA、FBIにトランプ政策の邪魔立てを画策 し、 ともかくトランプをウクライナから遠ざけようとしたのではなかったのか。
▲アゾフ連隊はどうなったのか?
マリオポルで降伏したアゾフ連隊はおよそ1700名の兵士等はロシアへ連行された。どのように扱われるか、あるいは人 質交 換でウクライナに戻れるか。
しかしアゾフ連隊が壊滅したとき、ゼレンスキー大統領は悲しみの顔をしていなかった。ずばり言うとアゾフ連隊を見放し てい た。
なぜならアゾフ連隊はウクライナ政府の統率から離れた独立愚連隊のような軍事組織で2014年に創設され、ナショナリズ ムの 強い志願兵から成立していた。ようやく国家防衛隊に組み込まれたが、統合的な組織ではなく、ゼレンスキー大統領にとっては煙 たい、あるいは邪魔な軍ではなかったか。
またアイダール大隊、右派セクター、ドンバス大隊なども、軍事作戦でロシアとの激戦を展開しているといわれるが、成果は きこ えてこない。
▲チェチェン部隊、ワグネル軍は、どこで何をしているのか
この戦争は事実上の米国vsロシアとの代理戦争で有り、「ウクライナはタンポン(緩衝器)だ」とはダンコースの発言だ。
ヘインズ米国家情報長官は、「プーチン大統領が、事実上NATOが介入していると認識し、かつウクライナ軍に負けそうだ と認 識すると、核兵器を使う恐れがある」と議会証言している。
他方、ロシアの凶暴なチェチャエン部隊の「活躍」は知られるが、傭兵のワグネル部隊の動向をつかんでいない。チェチェ ン部 隊では司令官が死亡したと報じられている。
「米国はワグネル部隊に具体的対応をしてきていない」(チボール・ナギー元アフリカ担当米国務次官補)。ワグネル部隊 は不 良少年あがりでプーチンのコック、プリコジンが胴元とされる。プーチンの暗黙の下、中東とアフリカで展開、存在が明らかなの はリビア、マリ、そしてシリアだが、クレムリンは表向き『ワグネル部隊とは無関係』としており、報酬も金で支払われてい るら しい。
イスラエルは、仲介役を果たそうとしたが、プーチンのユダヤ人不信感によって相手にされず、そればかりかベネット連立 政権 は風前の灯火、明日選挙となればリクード主体の連立が復活し、ネタニヤフが返り咲くシナリオが広く語られている。
ましてプーチンを離れたオルガルヒが次々とテルアビブへ逃げ込んでいる。
こうみてくると停戦交渉のポジションを得そうな可能性があるのは、鵺的な言動が目立つエルドアン(トルコ大統領)だろ う。 トルコは引き替えにロシアが支配するシリア北部への軍事介入への暗黙の了解を求めている。事実、シリア駐留のロシア軍六万は 引き上げつつあって、代わりにアサド体制を守備しているのはイランである。
なる程、エルドアンがカギを握っているとは思いもしませんでした。それにしても、腹黒い奴等の思惑が世界を混沌としているのはもう笑うしかないのかも。
さて、人類はどこまでこんな馬鹿げたことを続けるのでしょうか。やはり、世界が日本のシラス国を理解するまでは無理なのかも。ということは、その可能性は遠い未来でしょう。