明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



九代目没後10年の演劇雑誌がある。乳母の証言まであり、ついこの間まで生きていた人という感じで実にリアルである。7代目の5男として生まれ、座元である河原崎の養子になるのだが、幼い九代目の毎日のスケジュールの過酷なこと驚くばかりである。伝え聞いた7代目が取り返しにいったというくらいである。しかしこの時代の修行が後の“劇聖”を生むことになったのであろう。私の知りえた限りで言えば九代目は揉め事の仲裁に入ったり、荒事のイメージと違って苦労人らしく思いやりのあるやさしい人物のような印象である。そういう意味でいえば、武張ったところのない、私の團十郎はこれで良かったと考えている。 どんな格好をさせるか、のヒントにならないか、と過去のモノクロ写真ばかりでなく、12代目が海老蔵から12代になった当時の雑誌を見ている。子供の頃TVに出ている12代目を観て『海老蔵ってヘンな名前?』と思ったのを覚えている。 何しろ頭部が完成している、というのは私にとって90パーセント以上出来上がっているような物で清々しい気分である。中に埋もれている初代から考えると相当な時間がかかっている。やはりこの顔は只者ではなかった。これで正月の間、作るべきものがある、というお目出度い状態となった。
HP

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