明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



九代目團十郎を完成すれば展示するはずだった深川江戸資料館の『歌舞伎の世界展』は日曜で終了する。すっかり表情を作り変えてしまったので間に合うわけがない。ただ『深川と歌舞伎』だったかのコーナーは1年続くそうで、完成次第展示する予定になっている。 『舞臺之團十郎』(舞臺之團十郎』刊行會)大正12年で坪内逍遥にいわせると、九代目は写真の撮られ方が下手で、本来の姿が写っていないといい、そしてのこの一文「誠に九代目のあの爛々たる大きな目を写真に於ける今の幸四郎(七代目 松本幸四郎)のと同様にぐっと睨ませて、如實に撮影し得たと想像して見たまへ。あの大きな厚い唇、あれを今の梅幸(六代目 尾上梅幸)の土蜘蛛式、鬼女式に思ひ切って引き歪めて撮影し得たと想像して見たまへ」にすっかり煽られ、無いなら作ろう、と前作を作った。しかし時間が経って客観的になると高村光太郎の「團十郎は決して力まない。力まないで大きい。大根といわれた若年に近い頃の写真を見ると間抜けなくらいおっとりしている。」に納得し、これはまさに写真に写る九代目なのであった。つまり舞台上の九代目は写真に残されていないが、舞台以外の表情は残っている、ということであろう。荒事の團十郎と借金取りに怯えて家で小さくなっている團十郎。オンオフがはっきりした人だったようである。そこで制作中の作品は普通にしている九代目になる予定である。

アートスケープ 展評『深川の人形作家 石塚公昭の世界』


HP

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